表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

15.劇的前後


何ということでしょう。


何もない真っさらだった空間が、今では石油王もビックリな大豪邸に早変わり。


早速、匠の技を拝見しましょう。


シャンデリア付きの広いリビングには、最高級本革のソファ、ペルシャ柄の絨毯に豪華なステンドグラス。


リビングを一歩でれば、端が霞むほど長い廊下。掃除が大変そうですね。


それぞれの部屋にも最高級の家具家電が備え付けられいるそうです。見てください!個人用のプライベートプールまであるではありませんか。


温浴施設に忘れてはならないのは、そう。温泉卓球。


そして簡易式だった和式のトイレも、今では全自動水洗トイレが6台も! …4人で住むには余りそうですね。


豪邸の外にでれば、テニスコート、ゴルフ場、そして温水プール付きのトレーニング専用の建物まで完備。


自然も忘れてはいけない、と、森林公園すら匠の力によれば…ほら。ご覧の通り。


中でも匠の力作とも言えるのが、この見晴らしの良い展望台。


天気の良い日には4人揃ってバーベキューができるよう、コンロや炊事場も充実しています。


あ、良い匂いがしてきましたね〜。


あそこにいるのが、この大変身をなし遂げた匠です。どうやら、お肉を焼いているようですね。ちょっとインタビューをしてみましょう。





いい眺めですね。長い時間をかけてこの豪邸が完成した今、どうですか? 今のご心境は。


「そうですね。え〜。みんなにも喜んで貰えて、はい。良かったと思いますよ」


そうですよね。でも色々なリクエストがある中で、全てを叶える…というのは匠にとっても難しかったのではないですか?


「え〜。まぁ、大変といえば大変でしたけど。今となっては良かったと思いますね。はい」


そうですか。この眺めといい、外でのバーベキューといい、まさに最高!って感じですか?


「あはは、そうですね。結局、焼いてるのは僕だけで、他のみんなは食べてるだけなんですけどね…。まぁそれでも良いかなって」


人の喜ぶ笑顔が、それだけが見たい。まさに匠のなせる技、というわけですね。さすがプロ、ですね!


「あはは……あ、ちょ!それまだ生焼けですよ!」


「いただきぃ!」


「…あーもう。腹壊しても知りませんよ?僕は」


この美味しそうに焼けたお肉も、匠が作り出した最高級和牛だとか?


「えぇ、はい。エサから丹念にこだわって作ったブランドです」


そうなんですねぇ〜。どれ……ほほう、これは美味い! 柔らかな食感に鼻から抜けるような香りと豊かなコク。それに脂がしつこくないからどんどん食べれちゃいますね。 


「き、気に入って貰えて何よりです…」


ん!? これはテールですね? 塩と胡椒で…うん!これも絶品だ!


「あ、あの…」


あ、これは失礼しました。つい美味しかったので…。ご馳走様でした。


「お、お粗末さまでした…」




さて、他の面々にも訊いてみましょう。あちらでお肉を頬張っている女性はどうでしょうか。


お食事中すみません。念願の豪邸がついに完成となりましたが、今のお気持ちはいかがですか?


「え? あ、私!? ウソ!聞いてないわよ!?」


お気持ちは、いかがですか?


「いや!だって、化粧だって…あぁもう!眉毛くらい描いてくればよかったわ!!」


あの…お気持ちを是非、視聴者の皆様に…


「待って!5分!いや、3分待って!」


……


…どこかへ行ってしまいましたね。





まぁ、気を取り直して、今度はあちらの男性に聞いてみましょう。


えー、もし良ければインタビューに答えていただきたいのですが、よろしいですか?


「あ?」


早速ですが、あなたのお名前は?


「綾人」


いや〜綾人さん。待ちに待ちましたが、ついにできましたね! それでは今のお気持ちを率直にどうぞ!お願いします!


「マジで美味いから!食ってみ!? いやマジで嘘じゃないから!」


いえ、私が聞いているのは肉ではなく、この豪邸なんですが…。


「なんだそっちかよ」


では、今のお気持ちをどうぞ!


「あー。つっても俺何もしてねぇしな……あ。おい!それ俺が取っておいた肉じゃねーか!!!」


「置いておく方が、悪い」


あの…? 綾人さん?


「くぉら!このガキ! 返せ!おい待てっ!」


「もうふぁえふぁった(食べちゃった)」


「おいいいいいい!!!!」


「真哉、助けて」


「はいはい。今追加の焼きますから、そちらで待っていてください。ね?」


な…なんなんだ。


「ま、待たせたわね! それで?あたしに聞きたいことって…何かしら?」


あ、先ほどの方ですね。はい。…あの、肩からゼーゼー言ってますが大丈夫なんでしょうか?


「だ、大丈夫だから!ほら、早くしなさいよ!」


えー、ではあなたのお名前は?


「あたしは女神よ!」


…それは本名ですか? それともペンネーム的な…?


「本名なわけないでしょ! いいのよ、そういうものなのよ!で? なに!?」


そ、そうですか。えー、では。ズバリ今のお気持ちを聞かせてください。


「急いで準備してきたから、大丈夫かしら? これ全国放送なのよね!? きゃー!あたし遂に有名人!?」


いや、これから編集がありますので、まだテレビで流れると決まったわけじゃ…。


「え、そうなの?」


はい。


「…あーっと。この家のことね? ま、まぁ真哉にしては上出来ってとこかしら?」


具体的にどういったところが上出来なのでしょうか?


「それは〜。ほら、あれよ」


あれとは?


「げ、玄関が広い…とか?」


とか?


「あぅ…。あ、そうそう!靴入れが付いてる!」


く、靴入れですか…。


「な何言ってるのよ!ボロいアパートとかだとなかなか付いてなかったりするのよ!?」


いや、もっと凄いところとかあるでしょうに。


「そ、そうね。いいところ、いいところ…」


……


「……細かい収納がついてる…とか?」






はい。


以上で、匠による劇的前後のご紹介でした。それではまた来週。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ