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13.異世界物語ついに始まる!


奇妙な共同生活が始まってから1週間ほどが経過した頃。


「あああ!もう!何なのよ一体!」


更年期が近い女が吠える。


「どうかされましたか?」


「どうしたもこうしたも!ずーとダラダラダラダラして、何かやることないの!?」


来る日も来る日も、それぞれがそれぞれの日々を送る毎日。


要するに、暇なのである。まるで遊び尽くし終わった夏休みのように。


「うっせーなおい!ゲームでもしてればいいじゃねーかよ!」


「やったわよ!面白い要素なんてカケラもなかったわよ!」


「そういえば、僕たちがここに来るまでは、女神様は何をしていたのですか?」


真哉が尋ねる。


「寝てるかぼーっとしてた」


「今とあまり変わってないじゃないですか…」


「違うのよ!私が一人でいる分にはいいのよ!あんた達がダラダラしてるのが気に食わないの!」


女の我の強さは健在であった。


「要するに構って欲しいんだろ?素直にそう言えよ!」


「あーそうよ!誰か私に構えよ!」


「面倒くさ!コイツ面倒くさっ!」


「それでは、こういうのはどうでしょう?」


真哉が挙手し、提案する。


「その名も異世界版・人生ゲームです!」


「人生…ゲーム?」


「ええ。人生を疑似体験できるボードゲームがあるのですが、それの異世界版です。僕がいま考案して作りました」


「結局ゲームじゃない!」


「大丈夫ですよ。これは実力というよりも運で決まるゲームですから。それに小学生でも楽しめますよ」


「そうなの?…ならやってみる」


「他の皆さんはどうします?」


「ちょっと面白そうだな!やろうぜやろうぜー」


「…凛もやる」


こうして異世界版・人生ゲームが始まったのである。行こうと思えばすぐに異世界へ行けるのに。だ。



……



「先ずは皆さんの分身である乗り物を選んでください。お好きな色をどうぞ。あ、お金の管理は僕がやりますので…」


真哉の進行で一通りのルールの説明がされる。


「では順番はじゃんけんで決めましょう。さいしょは…」


「やった!私の勝ちー!」


「はっ!直ぐに追い抜いてやんぜ!」


女神、真哉、凛、綾人の順番となったようであった。


「えっと、このルーレットを回せばいいのね?」


女神が最初のルーレットを回す。さぁ、真哉が作ったという人生のマスにはどんなドラマが待っているのだろうか。大体予想はつくのだが…。


「3ね!1、2、3…っと」


「では、止まったマスに書いてあることを読んでみてください」


「えーっと…。冒険者ギルドに登録する。登録料として300G払う代わりに、登録証を貰う…げ!いきなりお金!?嫌よ払いたくない!」


「それはできませんよ。書いてある通りにしないと進まないので…ゲームなんですから、ね?」


「早くしろよ。後ろがつっかえてんだよ」


「あんたにだけは言われたくないわよ! わかったわよ…ほら、払うから登録証ちょうだい」


女神は初級冒険者へとジョブチェンジしたのであった。


「うぅ…何か複雑な気分ね」


「じゃあ次は僕の番ですね。5が出ました」


「確かに、運がかなり左右するゲームなのね」


「えっと、僕が止まったマスは…商人の父からおこずかいで10000G貰う」


「何それズルくない!?」


「いえ、これも運ですから…ボードを叩くのは止めてください女神様!」


「つぎ、凛の番。…6でた」


「おお凛さんは幸先が良いですね」


「…獣人に転生するも、奴隷にされる。奴隷の証を貰い、いっかい休む」


「……」


全員が真哉を見る。


「お前なんてもん作ってんだよ!欲望まる出しじゃねーか!」


「ひくわー。マジひくわー」


「いやいや!これも運ですから!ね!? 本当ですってば!」


序盤からこのゲームに不信感を抱く3人であった。


「やっと俺の番だぜ! よっしゃー!2!」


「1、2…えっと、綾人くんは普通に冒険者ですね。はい、登録証」


「冒険とかしたくねえええ!」


「うるさいわね!ゲームだっつってんでしょ!」


こうして4人による奇妙奇天烈な異世界物語が始まったのであった。


……



ゲームも中盤に差し掛かった頃。


「お、分岐か~」


男と凛は同時に分岐マスに止まっていた。


「なになに? 右ルートは修羅コースで、過酷な運命が待ち構えているがその分見返りが大きい。左ルートはスローライフコースで、まったり異世界ライフを送りたい方におすすめ…」


「もちろん修羅コースでしょ!大金持ちも夢じゃないわ!」


「いや普通に考えて左一択だろ」


「凛は右。このままだとどうせ飢え死にする。挽回するには右しかない」


そう。凛はことごとく不遇マスに止まっていたのである。今では奴隷になった挙句、嫌われ者の侯爵家に拾われるも無残に捨てられ、ホームレス生活をしながら路地裏で裏家業に手を染める14歳なのである。


一方、男は強運によりチートスキルを獲得し、ドラゴン討伐や他国との戦争に貢献し、国王から報奨金として勲章と莫大なお金を受け取っていたのである。


「これが実際に起こり得るのかと思うと末恐ろしいわね…」


「な?どうせ異世界って運みたいなもんなんだって」


「何言ってんのよ!私なんて大事に育ててくれたおばあちゃんが死んじゃったのよ!?おばあちゃん!」


「お前くらいの年齢のばあちゃんなら、もうとっくに100超えてるだろ。大往生じゃねーか」


「うっさいわね!」


「凛は何も悪いこと、してない」


「きっとこれから大逆転しますよ!ね!」


「そういうあんたなんて人生イージーモードじゃない!」


真哉はというと、成金の商人の家庭に生まれ、学校では類まれなる才能を発揮し、特待生として商人ギルドへと入職。いまでは着々と重役へと登りつめていたのである。


「おい、次はお前の番だぞ」


「私だって…!私だって人生楽したいわよ!」


女神が渾身の祈りで降ったルーレットは、赤いマスに止まったのである。


「結婚マス…?」


「どうやら出た目によって結婚相手が決まるようですね」


堅実で社会的地位の高い真哉か、裕福だが一切働こうとしないダメ男の綾人。そして波乱万丈な人生を送る、不遇な凛。


「目指すは真哉くんね!私はヒモになる!なってやる!」


そう言いながら、かつてないほどの祈りを捧げながらルーレットを回す女。運命の歯車は回り始めた。


「5か6……5か6……5か6……神様!お願い!!」


1~2が出れば綾人。3~4が出れば凛。そして5~6が出れば真哉と成婚である。


出たのは……


「6」


「……やった!やったああ!やったのね私!」


歓喜に震える女神。だが元・女神である。彼女のやらかし能力は伊達ではない。


「まってください!よく見たらルーレットの針は1と6の間で止まっています!」


「え!?うそ!」


「どっちなんだ?これは? いっとくがコイツと結婚なんざ死んでもしたくねーぞ!」


「絶対6よ!働かないでゲームばっかしてるニートなんて絶対に嫌!」


「これは…どっちもって可能性もある」


「重婚ってことですか…?確かに、日本ではないので法律違反ではないかもしれませんが…」


「だああもう!どっちでもいいから早く決めろよ!」


「どっちでも良いなら、凛を拾って欲しい」


凛の切実な願いがとても痛ましい。


「ううう…何でこんなゲームに私が振り回されないといけないのよ…!」


「も、もう一度振り直してみましょう!」


「そうするわ…もう何でもいいわよ」


第二投目。運命の出目は…


「5」


「よっしゃああ!!今度こそ完璧な勝利よ!見てみなさい!これが私の実力なのよ!」


「い、いや待ってください!今度は4と5の間に…」


「もうええわ!」


盛り上がる4人でなのであった。


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