11.タイムリミットは突然に
「おおおー!ついに出来たぞ夢のマイルーム!すげええ!」
「はぁ、はぁ…。我ながら頑張った気がするよ」
真哉の能力を贅沢にあしらった、ゴージャスで洒落乙な家開発が着々と進んでいた。
「つぎ!次は凛の番!」
「ま、待ってくれ…流石に休憩させてくれないか…」
「あんた達、よくもまあこんなものまで作ったわね」
「女神様のお部屋も、このように…!」
「うわ、すご! あんたこんな才能あったの?」
女神もまんざらではない様子であった。もっとツンデレ出さないとキャラ固定されないぞと思う。
「悪かったわね。普通に褒めたらいけないのかしら」
「気に入ってもらえて…何より…ガクッ」
流石にオーバーワークだったようで、真哉は力尽きたのであった。
「ほら、寝るならベッド行きなさいよ!あぁもう!」
真哉に肩を貸す女神。やはりツンが足りないと思う。
「早速ゲームだ!ひゃっふうううう!!!」
「あんたは少しは真哉くんを労ってあげなさいよ!!」
……
「…」
「どうしたの、凛ちゃん?」
「凛も、スキル。欲しい」
真哉を看病する隣で、凛が小さく呟く。スキルのことは真哉から聞いていたのだ。
「そういえばそうねぇ」
「凛も真哉みたいな、凄いスキル欲しい」
「本来は異世界での冒険に役立つ為のスキルなんだけど…まぁこの際だし別に良いわよ?」
「どうすればいい?」
「ちょっと手を貸して」
いつものように。そう、もう何十年とやってきた儀式だ。目を瞑ってもできる程、女神にとっては慣れ親しんだ行為である。
「あ、そうそう。スキルは完全にランダムだから、思ったようなのが出なくても逆恨みしないで頂戴ね?」
「…うん。しない。だから早く」
「急かすわねぇ…ま、いいわ」
今更失敗などする筈もない。なんせ何十年と…
「あんたさっきから何意味深なこと言ってんのよ。そんなフラグなんてないから、ちょっと黙ってて頂戴」
…はい。
「わが神、太陽神の名において、恩恵を授けたまへ!」
「……!」
「さ、出来たわよ」
「…もう終わり?」
あまりにもあっさり終わってしまったので、本当にスキルを使えるようになったのか、疑問に思う凛であった。
「ステータスは…ちょっと運が低めだけど、それ以外は普通ね」
「スキルは?」
「えーっ…と。『リーパー』だって。見たことないわねぇ」
「…どんな意味?」
死神。刈り手。広辞苑にはそう載ってますね。
「あんた、実はそんな頭良くないでしょ」
それはご想像にお任せします。
「…もっと可愛いのが良かった」
「だからランダムだって言ったでしょ?我慢しなさい」
「別のが良い」
「出来ないわよそんなこと!」
「…はっ! ここは猫耳パラダイスだったんだ!」
ダウンしていた筈の真哉が勢いよく起き上がり、叫ぶ。
「な訳ないでしょ!」
「なんだ…夢か…」
因みに真哉の猫耳パラダイス構想は早々に潰えていた。なぜなら、人間はスキルによって創造できなかったからである。
「さ、元気になったみたいだし。私は向こう行くわ」
「女神様!」
早々に立ち去ろうとする女神の手を取り、真哉はこう伝えた。
「ありがとうございました」
「な、何よ!…気持ち悪っ!」
女神のツンデレが見れてナレーターの私と読者は安心したのであった。
「べ、別にあんたのためじゃ…あ、これダメなやつだ」
「……?」
二人のやり取りを見ていた凛が、不自然に目をこする。
「どうしたの凛ちゃん?」
「…ううん、なんでもない」
「もしかしたら疲れが出たのかもしれませんね」
突然の転生という不可解な現象。見知らぬ人との交流。それによる心理的なストレスは、見えないところで幼い身体にプレッシャーを与えていたようである。
「疲れてなんてない。ただ…」
「そろそろお腹も空いてきた頃だし、ご飯にしない?」
起きてから三度目の食事。つまり夕食の提案をする女神。
「そうですね。では準備してきますね。僕はもう元気になったので大丈夫です」
そう言って台所へと向かう真哉と、流れでその場を離れる女神。
「ね、女神…ちょっと」
凛が女神を呼び止める。
「?」
「……いや、やっぱり何でもない」
少し考えた凛はそう呟いた。
「そう?なら良いけど。それにしても、凛ちゃんのスキル…。あまり変に使わない方が良さそうね」
「…うん」
リーパーのことは女神と凛、現状この二人しか知らない。どのような能力かは不明だが、言いようのない不安を二人は感じていた。