10.無限性の中で
「……」
女神は一人考えていた。3人がそれぞれ好き勝手に暮らしているのを、少し離れた場所から眺めていた。
「…こんなのおかしいに決まってる」
数十年前。太陽神様から授かった命。そして受けた使命。私はそれ以前はただの無だった。
私が最初に転生した彼は今頃どうしているだろうか。勇者になって冒険をしているだろうか。私と同じように歳を取り寿命を迎えているのだろうか。
それとも既に…魔王を倒してしまったのだろうか…。
綾人の言葉が頭から離れない。
「あぁもう!なんなのよアイツは!」
私は女神なの。人間を導く立場なの! なのに…。
なのに、なんなのよ。意味わかんない!
これまでただ機械的に人間を呼び寄せ、異世界へと転生してきた女神。
歓喜する者、戸惑う者。中には帰らせて欲しいと願う者もいた。
その度に説得し、スキルを与え、その力を体感すれば、誰一人として受け入れない者はいなかったのだ。誰もが皆、自分以上の力を欲しているから。
ただ、アイツは違ったのだ。それが、その事実が私を混乱させる。その上、あの言葉。不思議と胸に刺さるのは何故なのだろうか。
「好き勝手に生きて何が悪いんだよ」
幾ら何でも身勝手すぎる。話にならない。碌な生活をしてきた人とは思えない。
「このまま誰も転生できなかったら私…」
スカイワールドの人たちの為。太陽神様の為。誰かの為…。
私の為…なの?
「違う! 私なんてどうだって良い」
じゃあ私は何?何故ここにいるの?
ーー魔王を倒す人間を転生する為…。
倒せなかったら?
ーーきっと、いつかは、誰かが倒す。倒してくれる。
きっとって?いつ?
ーーそれはわからない。
それまでずーっとそうしてるの?
ーー「…うん」
へぇ。そうなんだ。
「うん」
…大変だね。
「大変」
さみしいね。
「さみしい」
でも、今は綾人も、真哉も、凛だっているじゃん。
「……知らないあんな奴」
ほら、あんなに楽しそうにしてるよ?
「そうよ…人の気も知らないで」
こんなところに居てもいいの?
「誰が行くもんか!」
…そっか。
「……」
本当はどうしたいの?
「……わからない。もう私に聞かないで…話したくない!」
わかんないよ…もう……。