可愛い過ぎる私の婚約者 婚約者と怪談
彼女とワタミタ王妃の会話は、弾んでいた。
二人とも砕けた雰囲気になってきている。
「ねぇねぇ、こっちの学校の怪談って、何があるの?」
ワタミタ王妃が、身を乗り出している。
「うーん、こちらでは、あまり聞きませんね。」
彼女が、私のほうを見るが、″かいだん″て?
階段?会談?怪談?
「あっちでは、学校の七不思議とか、色々あったのに。」
「そうですね、走る二宮金次郎とか。」
二宮金次郎は、たぶん人の名前だよね?
その人は、走ってはいけないのかい?
「向こうでは、学校には、怖い噂がありまして、学校の怪談、七不思議とかいわれていたのです。」
首を傾げている私に彼女が説明してくれる。
″かいだん″は、怪談なのか。
じゃあ、二宮金次郎は、何故か動けないから、走れないのだね。
「そうそう、誰もいないのに音楽室からピアノの音とか、肖像画のベートーベンが指揮棒を振っているとか。」
ピアノは、楽器だ。
ベートーベン?肖像画だから、人?
「私の学校は、シューベルトでしたわ。」
話の流れから、シューベルトも人だろう。
異世界は、人の名前も色々あるようだ。
学校によって、怪談の内容が微妙に違うみたいだし。
ああ、異世界の学校は、沢山あると言っていたね。
「そういえば、二宮金次郎像って、置いてない学校もあるそうよ。」
二宮金次郎は、像だったのか。それは、走るわけない。それが、走るから怪奇なのか。
「えー、二宮金次郎像を知っていると年が!て、ことですか?」
「そうそう、オバサンって、バレちゃうの。」
だ・れ・が、オバサン?
私の可愛い彼女は、まだピチピチの女の子だ!
思わず、ワタミタ王妃を睨み付けそうになった。
ワタミタ王妃は、そんな私を見て、楽しいと笑みを浮かべている。
いい性格をしていらっしゃる。
「新設校とか、改修やなんやで撤去した学校に無いみたい。昔からの学校には、ほとんど残っているらしいわよ。」
「そうなのですか。けど、聞くと寂しいですね、七不思議の一つが無くなるのですから。」
「すぐ代わりのが、出来るから。」
「そうですねー。階段の踊り場に鏡なんてないのに、七不思議になっていたりしましたし。」
二人は、異世界の学校の話で盛り上がっている。
私は、口を挟んだ。
「シャル、学園にもおかしな噂は、あるよ。」
「えっ!」
彼女の顔がギクリとした。
うん、確か幽霊とかお化けとか、嫌いだったよね?
平気で話ているから、大丈夫になったのだと思っていたけど。
異世界の話だったから、平気だったのか。
「シャルかよく行く池、あそこに濡れた服の子がいたら、昔そこで溺れた子だとか、剣の鍛練場に鎧を着た首なし騎士が歩いているとか。」
あれ、顔色が悪くなってきているよ。
う・わ・さ、だよ。
「レオン様。」
私の服の端をギュッと握る彼女。可愛いな。
うん、池は、落ちるといけないから、近づかないでおこうね。
落とそうとしている奴らが、わんさかいるから。
鍛練場もダメだよ。下手くそな奴が、剣を飛ばしたりしてるから。
「あら、こちらにもあるんじゃない。」
ワタミタ王妃、そんな目で見ないでください。
あなたにバレてるのは、分かっているのですから。
ドサッ
音のした方を見たら、途中から参加した義母弟が、椅子から落ちていた。
そういえば、義母弟もこの手の話、苦手だったんだ。
鍛練場は、お前は、行かなくてはいけないからね。
自分の身くらいは、自分で守れないと。
「お米、こちらの世界にないよね。」
ワタミタ王妃、さりげなく話題を替えましたね。
「探しているのですが、見つからないのです。」
それよりもお米って?
「時々、お握り、食べたくなるわよね。」
お米は、食べ物?
お握りは、食べ物だよね?
探しているのなら、言ってくれないと。
従兄弟に聞いてみよう。あちらの方が情報量が多い。
「はい、オカカとか鮭とか。」
「私は、梅お握りを食べたいわ。」
オカカ?さけ?うめ?
さけは、酒?
お米は、酒のつまみ?
酒は、私と二人の時しか許さないからね。
あ!また、話の内容が変わっている。
楽しく話してるから、口を出さない、けど。
うん、楽しく話しているね。
貴婦人のお喋りは、長いのは知っている・・・。
私が側にいること、忘れていない?
私は、隣にスワル彼女の腰に手を回し、側に引き寄せた。
夜、トイレに行った。
なんか騒がしい。
「おい、いるか?」
「はい、います。」
義母弟の声だ。従者と何をしているのだろう。
「おい?」
「いますって!」
もしかして、一人でトイレに行けなくなってしまったのかい?(護衛は勝手についてくるけどね。)
私は、用を済ませて、手を洗う。
手拭きがないね。
サッと白い手拭きが差し出された。
側には、小さな女の子が立っていた。
「ありがとう。掃除は君かい?」
女の子は、コクンと頷く。
珍しい色彩の子だね。黒髪を顎のラインで切り揃えて。
「名前は?」
「花子。」
トイレの個室から、悲鳴が上がった。
ハナコ、聞いた覚えのある名前だ。
「ハナコちゃん、ありがとう。気を付けてお帰り。」
女の子は、嬉しそうにコクンとまた頷いた。
私は、トイレを出て、何処で聞いた名だろうと考えていると、義母弟がトイレから飛び出し走り去っていった。
「でた~!」と叫びながら。
廊下は、走るなと言ってあるのに。
あの子に王宮は、学校じゃないと教えたほうがいいのだろうか。
義母弟は、乙女ゲームのことが聞きたくて、お茶会に来ました。女性のお喋りに入っていけず、目的は、果たせませんでした。