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幸せと絶望

お父様に大切なことを教わった。

1つ目、人生の観点において、選択は必須であること。

2つ目、その選択を感情で動くか、知能で動くか、それは自分が決めること。

3つ目、わたくしの名前はノア。神とともに正しいことをした者という意味。そしてその由来の通りに、自分の名に恥じない行動をすること。

4つ目、相手の意見を聞き入れ、自分が思う、正しいことをしなさい。


大事な教えを忠実に守って生きてきた。

もちろん、これからも守るつもりだ。

でも……、


(……前世ストーカー、乙女ゲームの悪役令嬢……、正しいことなんてなにひとつないわ……。)



思った以上に自分は黒かった。はぁ、とため息がでる。今までの全てを否定されたようだった。

ごろんと、ベットの上で寝返りをうつ。あのあと、王子のパーティーは終わりを迎え、各自馬車に乗って帰宅。パーティーが終わるまで頭は混乱していた。ぐるぐると同じようなことを考える。


『アリアエルと恋の魔法』……題名は本当に在り来りだと思う。この世界は乙女ゲーム。主人公のアリアエルが魔法を駆使し、メインヒーロー、アーク、その他もろもろと恋に落ちていく話だ。


そのアリアエルをいじめ倒すのがこの私。いや、いじめるってもんではない。

暗殺しかけるのだ。相当危ない、黒い。


ノア・アルベルト公爵令嬢。

アルベルト家は、王族より、大公よりは下だが、そこら辺の公爵より力が強い。王国の権力序列で言う3番目だ。


ガンっと頭が痛くなる。先程から何度か前世の私が死ぬ間際のシーンが頭に浮かんでくる。

とんっ、と、背中を誰かに押される感触と目の前のトラックのライトの反射、体中に走る衝撃。


思わず頭を振る。頭痛が少し、和らいだ。


「そうよ、そうね、落ち着くのよノア。

大丈夫……、」


ふと、パーティーでのアークの姿が目に浮かぶ。途端に喉の奥が苦しくなり、じんと心があたたまった。


(……わたくし、悪役令嬢なのに、メインヒーローに一目惚れするなんて……死に行くようなものじゃない……、)


バカじゃないのと、喉の奥から声が漏れる。ベットがギシリと悲しそうに呻いた。


「……大事な選択をする時は感情で動くか、知能で動くか、」


父の教えが頭を駆け巡る。たとえ前世の記憶が甦ったとて今の人格が変わるはずもなかった。自分にとっての最善の選択を…。


「…恋か、命か。…そうね、わたくし、死にたくはないわ。天秤にかけられるとしたら、……命をとる。」


だんだんとノアの瞳に力が宿る。自分がどうするのか、どうすべきか自分が正しいと思うことをする。


「…なら、フラグを回避しなくては。たとえ、この初恋を潰してでも!」


ダンっと床を踏み鳴らしながら立ち上がり、キリッと目の前を見つめる。ふわりと、ウェーブを打った金髪が視界の端に移り、シャンプーの香りを漂わせた。







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