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悪役令嬢は100回目のバッドエンディングを望む  作者: 本橋異優
―ゲーム本編前・事前準備―
28/87

幕間-とある空間-

神々の会話


これはとある日、とある真っ白な空間での会話の一部である。


真っ白な空間にふわふわと漂う影がいくつか。

一人は項垂れ、一人は泣いて、一人は壊れたように乾いた笑いを起こして、一人は机に突っ伏していたり様々である。


その内の机に突っ伏してい中性の顔立ちをしている子供が、ハンモックに横になっている同じくらいの子供に話しかける


「なぁ…他の世界の神…異世界の神よ…。どうしたらアメリアは諦めてくれるかな?ていうか厭きてきてるの伝わってくるからもう少し頑張って協力して」


異世界の神は眠たげに、机に突っ伏している子供に視線だけを向ける。


「んー?ジンくん、だから言ったじゃない。あれは僕が創った登場人物で、“誰からも愛されない”“慕われない”“裏切られる”“嫌われ恨まれる”っていう最大の負を詰め込んで生み出したキャラクターだって」

「なんでそんな可哀想なキャラクターにしたんだよ!この鬼畜!」


異世界の神は呑気に鬼じゃなくて神だよーと的はずれに答えている。

ダンっと机を激しく叩いくジンと呼ばれた子供は半泣きで訴える。


「それでも僕たちが愛するアメリアに何しても生きてもらいたいんだよ!」

「それはわがままってやつで、君たちが身勝手にあの子の魂に約束を刻んだんでしょ?僕の管轄外ってやつじゃん。やる気はなかったけど、頑張ってやっても軌道修正が強いから勝てなかったって言ったじゃん?そんなに言うなら暇すぎてあの子を、ずーっと見てきた君たちに聞くんだけど…」


ふわふわと自暴自棄になったり感情様々な状態の子供達は、異世界の神の言葉にぴくりと動きを止めて耳を澄ませている。


「あの子はチート持ちで力を使えば簡単に生き残れるのに、なんで必ず死ぬと思う?」


乾いた笑いを起こしていた子供が、はいっと空中で正座しながら片手を上げる。


「それはアメリアが純粋で優しいから!」


異世界の神は頷いて笑顔を浮かべて手で丸を作るが、直ぐにバツに作り変える。

一瞬正解したと思った手を上げて答えた子供は、しゅんとしてしまった。


「正解だけどはっずれー!一桁の時にあの子は君たちに反抗していたはず。その時が一番あの子が生き残れる可能性があった筈なんだよねー。それなのにアメリアとライラは必ず死んだ。自害することも出来ない、物語の強制力…物語のエンディングの為にね。それから数回の周回で改心しちゃって、今のあの子が出来てくるんだけど。君たちがアメリアを愛し始めたのはその出来た筈だった時より後だった。最初の頃に君たちがあの子を愛してあげられてたら、こんなになってないよねぇ?」


ハンモックを横にゆらゆら揺らしながら、可笑しそうに異世界の神は笑う。

項垂れている子供たちは首を捻りながら空中をふわふわと漂っている。


「今のあの子だからこそ、純粋に君たちの約束を守ろうとしてくれている。頑なに。初めて優しく厳しくしてくれた君たちに、自分の感謝の気持ちを返すには、それが一番いいと思っているから。君たちはそんな風には考えてなかっただろうけどね、アメリアにとってはそうだった。それが君たちにとって一番つらい事だと分かっていても、“最初”に行われた約束をあの子は…あの子()()は守ろうとしているんだよ。というか性格が変わって一番苦労してるのは、アメリア本人なんだからね?わかってる?」


ジンはごりごりと机に頭を擦りつけて唸っている。


「うぐぅ判ってるよぉ…でもさぁ…確かに約束を守らないといけないって言ったけどさぁ…約束破っても良いって言ったもん。もういいよって言ったもん。最初のアメリア愛せなかったもん…」


異世界の神は呆れた様子でジンを見つめ、周りに浮かぶ子供たちも頷いている事に更に溜息を吐いた。

そして指を一本立てて悪戯に笑う。


「もんって可愛くないんだけど。んーじゃあねー、今のあの子が一番嫌がる事は何だと思う?」


さらりと毒を吐かれるが特に誰もそれを気にする様子はない。長々と生きてきた神々だ。多少の事は全く気にならない。

神々は考える。


「邪魔をされる事?」「僕たちに介入される事じゃない?」

「介入も邪魔もまとめてしまえば一緒じゃない??」

「うーーーーーん」


考えても出てこない様子に、異世界の神は可哀想な子を見る瞳を向ける。


「君たちって同じ神様だけど頭悪いよね」

「うるさいやい!」


神々の声が重なって返ってくるが、異世界の神はハンモックから飛び上がりくるりくるりと指を体を回しながら言葉を告げていく。


「あの子はさぁ…元々の設定も含めて“愛された”事と“優しくされた”事が物語の中では“一度もない”んだよ。あったとしても気付かなかった。それをされる事を魂が、心が至極嫌がるんだよね~」


くすくすと笑っている異世界の神に、ジンは未だ擦りつけていた頭をあげて見上げる。


「は?僕たちやライラは少なくともアメリアの事、愛しているよ?優しくだってしてる」


そうだねと異世界の神は回っている体を止めて頷く。


「君たちと僕がいくら愛したって、神とあの子の間には“約束”っていう壁が存在しているの忘れてない?あの子なら「神様は人間を等しく愛してるんですものね」とかいいそうじゃん?それに君たちに愛されている事は十分にわかっているからこそ、頑なに守ろうとしてるんじゃないの?」


神々はそれぞれ頭を抱えた。

自分たちが刻んだ約束が壁となっているなんて思ってもなかった。

そしてアメリアならば確かに言いそう…と。


「んでー…」


異世界の神は体を伸ばしふわりとその場で足を組む。


「ライラは『ゲーム盤』の“設定”をもつ登場人物だ。アメリアの盾と剣という設定の、ね。そういう風に設定付けられているってあの子は無意識の内に気づいているし、その内完全に気づくんじゃないかな?まぁ隠れ攻略対象のロイドもアメリアを愛している設定だから、そこら辺は弄ってもキャラが濃くなるだけだけど…」


ただ、と異世界の神は付け加える。


「その他の登場人物である攻略対象達があの子を“愛する”事はまず“ない”んだよ。だから今回最初から本気出して介入してるんでしょ?」


うんうんと神々はそれぞれ頷いて答える。

子供の姿の神々だ。その仕草はとても可愛らしい。

異世界の神はにっこりと笑って一度手を叩く。


「ここまで分かったんなら、続きだよ!アメリアはそんな彼らから愛されたり、優しくされたら一体どんな行動に出るのかな?」

「今までみたいに軌道修正するんじゃないか?あいつらにも介入して多少頭が回るようにしたり、アメリア対してちゃんと考えるようにしたりとか…簡単な事だけだけど…てんで駄目だし…」

「そうだよ?だけど愛されていると、優しくされてると気づいたら彼女はどうするんだろうね?愛されない筈の優しくされない筈の、彼女の鋼鉄の精神と魂に、徐々に小さくない亀裂を入れていく事が出来るんじゃない?」


ぐずぐずと泣いている子供が小さく手を上げる。


「でもさーそれって僕らの心優しいアメリアが可哀想じゃん!今だって辛そうなのに!それにアメリアは願っちゃうじゃん?あの子の願いは強いじゃん?」


そして悲鳴に近い声で泣き始めた。


「僕たちにも等しい力を発揮しちゃう!!」

「うるさい。あぁなったのは紛れもない君たちの責任だから、そこに関して僕は知らないよ。辛そうだっていうなら諦めなよ!あの子にそんな力をつけさせたの無意識だろうけど君たちだし。生まれたばかりのあの子に、アスター・ド・グロリア・スターチスを僕が干渉して動かして、物語では決して触れあうことがなかった二人を会わせた事で、小さな亀裂はもう既に入っているし、周回中揺れ動かなかった心は今回は何度も揺さぶられているのも事実でしょ。今のあの子は愛されたり、優しくされると危機感を強くするし、拒否反応を無意識で起こしているから…それが狙い目かなぁと思うんだよね~」

「なるほど。諦めるとかはない!そっか…アメリアが傷付いても、心を鬼にしろってことだね!だから久々に手伝ってくれたんだ!」

「こんな簡単な事に気づけないなんて、本当に僕が創ったアメリアが可哀想…。なんでこんなポンコツな神達に愛されてしまったの…」

「アスターをアメリアのようにちょこちょこと僕らも戻していたけど、今回の手紙だって…通用しなかったじゃん」


ジンは机に顎を乗せて唇を尖らせぶーたれている。

神々の為に一応言っておくが、手紙はアスター本人の気持ちでアスター自身が書いたものである。彼らが操り、書かせたり、彼らが書いたものでは一切ないとここで伝えておく。


異世界の神は組んでいた足を持ちあげその踵をジンの頭に振り落としながら告げる。

ごっと鈍い音がジンの顎と頭から聞こえる。


「だーかーらー使い方!つめが甘いんだよ!それでもジンくん神なの!?僕の世界の神達とえらい違うんだけど!?ポンコツ過ぎる…神が愛ゆえに愚かになっても、誰も救われないんだからもっと頭ひねりなよ!アスターはどっちかっていうとアメリアサイドでしょうが!母親に応援されてしまったんだから、想いが強くなって当り前でしょ!僕の創った世界を勝手に覗いて勝手に介入して、改変しようとしてたのは君たちなんだから、少しは頭使って!なんでこの空間にアメリア飛ばされたのか本当にわかんない…」

「いった!!…え?それは気になって僕がちょちょいって!」

「ジンくんのそういう所ホント嫌い…ポンコツのくせに…そんな所は神様なのホントやだ」


神々は異世界の神の言葉でやっと察することが出来たようだ。

ジンから何故自分が創った筈の彼女の魂が、本来の…自分がいる空間に飛ばされてこなかったのか、やっと理解出来た異世界の神は、顔を両手で押さえてさめざめと呟く。


「もうやだこのポンコツ達…僕もう帰りたい…。僕が怒らないで取り返さないのが何でか考えてほしい…。生かしてあげたいのも分かるけど、正直後一回なんだから、元のアメリアに戻して何も考えず死なせてあげればいいのに、本当に僕の創ったアメリアが可哀想…。こんな奴らに僕の創った世界を貸し渡さなきゃならないなんて…何も考えなくていい僕の創ったアメリアに戻してあげたい…」


神々はそんな異世界の神を放置してアメリアが生きている『ゲーム盤』に介入を開始している。

攻略対象達に優しさと愛を更に追加していた。


ふと異世界の神は気づく。


「おや?これはこれは…流石は強制力にも勝る行動力のアメリア。僕の愛しいアメリア。君は忘れているのかな?君の生きる世界は僕が創った“乙女ゲーム”の世界。登場人物たちは()とか()()()とかそういう設定を()()強く受けている。いくら拒否をしても君に()()()()その“設定”は生きているんだよ。元々の君に与えた“負”の設定の方が強いだけで…ね?君がどんなに心を痛めながら頑張って引っ繰り返しても、君が言うように人間は“生きている”んだよ♪」


誰にも聞こえていないただの独り言を再びハンモックに戻ってから呟く。

異世界の神、『ゲーム盤』の創造神はにんまりと悪戯に笑う。


「数ある内の1つ、小さな命のアメリア。君は何を“思い”何を“感じて”、最後には誰を“愛する”んだろうねぇ。僕だけの管理する世界じゃなくなって、ジンくん達も本気出しているから…今まで(シナリオ)通りにはいかないんだよ?だけど、『ゲーム盤』の登場人物であり心の優しい君は物語本編の為に、登場人物たちの幸せな未来の為に自分で死ぬことは出来ないし、選ばない。ポンコツジン君たちに勝って、本編の“役割”を全うして、ヒロインのユリの為に、関わってきた人達の為にエンディング迎えられるといいねぇ。僕は今見ているだけだから頑張ってね」


神々がアドバイスを受けて余計に強い介入を起こし、アメリアの鋼鉄の精神と魂を次々と揺さぶっていくが…神と同じ願いの力を持つアメリアと神々の力。両者が力がぶつかり合えば予測できない未来が、多く生まれてしまうのは必然と言えば必然なのかもしれない。

最初に彼女を連れ出し、自分たちの空間に連れてくるという介入してしまった事によって、意思を持ってしまったアメリアは、この空間で出会ったジン達が自分たち人間を見守っているのだと思っている。創造神は違うのだが、神というのは沢山いて別の世界の神だろうと変わらないんだろうと。

巨大な存在を理解するには人には難しいと、アメリアは考えるのをやめてしまった周回後半辺り。


本当は違う世界で何も感じず、思わず、設定どおり繰り返すだけのゲームの登場人物だった筈のアメリアは、知らぬ間にこの世界の神々のせいで苦労をさせられているなど知ることは出来ない。



そんな神々が考えている事など露知らず、約束の為に、今日も今日とて神々に愛されている彼女は精を出す。


「さぁ!今日も元気にフラグ建築しますよー!」


神々が何をしでかしていたかというお話でしたが、如何でしたでしょうか。

乙女ゲーム(ゲーム盤)の世界を実は暇つぶしにみていた筈の(ジン)達が、元々そういう設定だったのにあまりの彼女の魂の醜さに怒りを覚えて、本来ならED後、異世界の神(創造神)のいる空間に飛ばされる筈のアメリアを、勝手に連れだしたのが原因でした。


いくら強制力にも勝るアメリアが、自ら死を選べないのにはこのような訳がありました。

それに対してアメリアが何を考えているのかは、また本編で。


勝手に覗いて、勝手に怒って、勝手に手を出して、更には助けて欲しいと言われ、手伝ったら手伝ったで本来持ち合わせていない行動力というか軌道修正の力を得てしまっているアメリアに、異世界の神(創造神)も嘆くのでした。


今年も宜しくお願い致します。

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