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別視点1.奴隷商人(アレク視点)

奴隷商人であるアレクさん視点でお送りします。

シャウラが目覚めるまでの話ですのでがっつり本編です☆


6/13 加筆修正しました。

 俺のところに依頼が来たのは、三年前の話だ。


「なんだ、こいつは」

「可愛いだろ? これでまだ7歳と若い。買い取るには価値があるだはずだ」

「それはわかってる。俺は何処で拾ってきたかと聞いているんだ」


 とある日の午後、いつも通り奴隷の管理をしていると盗賊らしき男から声を掛けられ、奴隷を売りたいと迫られた。

 客かと思えば、小銭稼ぎの子悪党。

 いつもならこんな小物、相手にしない。だが、この仕事をしている以上、見過ごせないものがそこにはいたからだ。


「こいつは、たまたま拾ったんだよ。ボロボロの布を纏いながら死んだ魚見たいな目でうろついていたからな。後ろから一撃加えるだけで気を失ってな、今の状態ってわけさ」


 連れているのは、銀髪の少女。まだ幼く、無邪気に遊んでいるのが似合う年頃の子どもだ。

 違和感があるとすれば、その身体には多数の切り傷があったことだろうか。痛々しさが伝わってきた。

 そんな少女を品定めしていると勘違いしてくれたのか、盗賊は上機嫌に語る。


「勿論、犯してなんていねぇぜ。こんなガキは趣味じゃねーからな、でも、貴族ならそういうやつもいるだろ。なら売れるんじゃねーかと思って持ってきたわけさ」


 なるほど、そういうことか。

 奴隷という単語から、そういうものだと勘違いしてしまうバカは何処にでもいるものだ。

 聞こえないような大きさで舌打ちをしながら、少女へ近づく。


 この国で奴隷になるものは基本的に3つ。

 親の借金として取り立てられた者たち。犯罪を犯して人権を剥奪された者たち。災害や盗賊に襲われたりして 何かを失った人たち。

 これ以外にも例外はいるが、それは稀にしかない。

 連れ込まれた少女はその理由の三番目、目の前の盗賊に襲われたのだろう。

 全く、下らない話だ。彼女らも人族のはずなのに。


「いいだろう、ほら、代金だ」


 こんなゲスにこれ以上連れ回されるのは可哀想だ。相場よりは少ない金額だが、どうせ吹っ掛けられるのだから少量でいい。

 適当な布に入れた銀貨を渡す。すぐさま嬉しそうに枚数を数える盗賊は、すぐ懸念な表情を浮かべ、


「はぁ? 少なすぎだろ、銀貨30枚じゃ足りねぇーよ」

「買い取りは基本的に裏でやるもんだ。それを今買い取ってやるんだから仕方ないだろ」

「しかたねぇな。後、20枚よこせ。それで納得するからよ」

「ちっ、仕方ねぇな」


 案の定、値段の釣り上げをされた。俺は鞄の中にあらかじめ詰めていた銀貨の袋を盗賊へ投げ渡す。中身をしっかり数えて20枚あることを確認し、汚い笑みを浮かべている。


「おっ、ちゃんと20枚あるじゃねーか」

「ほら、さっさと失せろ」

「へいへい、流石は話がわかる王都御用達の奴隷商人さんだ。また売りに来るよ」


 盗賊は銀貨の袋を振り回しながら去っていく。どうせ、明日には酒や女で消えていくのだろう、惨めなもんだ。

 奴隷の相場は、買い取りの場合銀貨120枚。売値は金貨3枚は下らない。

 王都では銅貨100枚で1銀貨。100銀貨で1金貨と決められている。学のないバカには、値段を下げようがバレないので取引は容易だった。

 アレクは、目の前で眠っている少女を見つめながらため息を吐く。

 彼女は使い物にならない。目が覚めてもトラウマをかかえ、すがる相手もいない場所に絶望する。そうなれば当然、値段は下がしこちらの商売に影響がでる。

 当然、俺には利益は入らない。それでも……


「……仕方ねぇか」


 諦めたように少女を抱え、自分の店へと連れていく。

 この少女ーーシャウラを拾った日から苦悩の日々がはじまるとも知らずに。

 俺はその日、こいつを移送してすぐ眠った。

 


 少女が初めて目を覚ました時、虚ろな瞳はくっきりと俺を映していた。何を話しても上の空、こちらからの質問は虚空へと消えてしまう。

 やはり、心は死んでいるか


「おい、シャウラ。飯の時間だ」


 一応、奴隷商人を請け負ってる以上、商品はしっかり扱わないといけない。

 ましては買い取ったやつだ。途中で抜け出すことも出来ない。


「ちっ、面倒なもんを買っちまったなこりゃ」


 基本的に、壊れた奴隷は使い物にならない。そんな彼女らの行き着く先は、死か性奴隷へと落ちていくか。


「まだ7歳だぞ。そんなところに落とすわけにはいかねぇか」


 そんなことを呟きながら、彼女に手錠を取り付ける。

 精神が少しでも戻ったときに現実を直視して自傷を行わないとも限らない。

 申し訳ない気持ちはあるが、これも仕事だと割りきる。


「おー、お義父さんやってますねー」

「なんだ、リーナか」


 後ろから声をかけられ、振り向くと俺のところにいる奴隷がそこにいた。


「また新しい子を拾ってきたのですか?」

「そういうお前は、また脱走したのか」


 リーナは、あんなの簡単に抜けられるから、なんて腰に手を当てて自慢してくる。

 今度、俺特製の罠でも仕掛けてやろう。


「それより、お義父さん。その子も私が面倒みればいいの?」

「いや、これは俺が見る。というか、俺をお義父さん呼ばわりはやめろ」

「えーいいじゃん。私のお義父さんはアレクさんだよ?」


 こいつは、拾われてきたときから俺のことをお義父さんなんて呼ぶ。

 俺はお前を売る側で、悪党なんだぞ。そう伝えているはずだが、返答は変わらない。

 ガキっていうのはほんと厄介だ。


「その子、眠ってるの?」

「ああ、深い眠りについてるよ」

「お義父さん、なんとかならないの?」

「なるとすれば、時間くらいだ。いつか目が覚めて現実を受け入れる。それまでは夢でも見させてやれ」

「そっか」


 リーナは納得したように頷き、その場に座り込む。


「なんだよ」

「お腹減ったから私にも作って」

「虫でも食わせるぞ、ごら」

「それは、嫌ですなぁ」


 クククと笑う彼女を見て、呆れてくる。

 ほんと、どうしてこうなったんだ。

 奴隷と仲良くしたって良いことなんてない。親父から託された職だが、俺には合わねぇよ。


 まあ、リーナみたいに歩み寄ってくるやつは少ないし、今は別にいい。

 俺は今日の業務をこなすだけだ。


 リーナを抱えて、部屋を出る。

 まあ、本当に目覚めたときにでも選択させてやろう。勿論、お金は払ってもらうがな。


 シャウラが目覚めるまでの三年前、身体的衰えが少なかったのは、彼のおかげであることを彼女はまだ知らない。


アレクの勘違い物語だっけ?(錯覚)


次回も別視点です

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