2.状況整理をしましょう
説明ばっかで申し訳ない()
※貨幣の基準を変更しました。
後に説明しますが、銀貨100枚で金貨1枚として換算するので
8000枚→250枚へと変更しました。
※情景描写の追加
物語に変更はございません
6/25 加筆修正
残念ながら、俺は一度たりとも、真面目でも有能な社員でもなった覚えはない。
追われるように業務をこなし、1日を終える。
ただ、それだけの毎日。機械のような動作。
そこに楽しみは存在しない。あるのは、遅れないように経験を積む事と覚えるまでの短縮方法の模索だ。
お陰で俺は、入社数年で自分を偽り業務をこなせる優秀なメンバーとして完成していた。これが、ゲームで効率よく素材を集める方法を見つけることになるとは思っていなかったが。
友人から進められ、そのままハマってしまったゲームを永遠と繰り返す。
ループのような世界、終わりのないストーリーがあるオンラインゲームに俺は少しずつ、呑まれていった。
会社での業務をこなしていると、とうも作業ゲーが得意になるらしい。
学生時代の勉強も今となっては得意分野だ。
俺が女子として目覚めてから数日。
今いる現状に慣れ始め、落ち着きを取り戻した。
「おい、シャウラ。今日も勉強しておけ! 」
薄暗い牢獄に、アレクさんの怒号が響き渡る。
そんな叫ばなくても聞こえるのに、相変わらず声が大きい。
今日は、異世界の言語を学ぶために机にむかう。
「了解ですよ」
返事を返さないとまた怒号が聞こえてくるのでしっかりと返す。
あの人、スキンヘッドで顔は強面なのにそこらへんは律儀なのだ。睨み付ける視線がそれを引き立てているというのに。
現状を説明すると、自分は奴隷の身分らしい。少女、奴隷、無知、この3つの単語が並ぶだけで嫌な予感しかしない。
当然、逃げることも隠れることも出来ないので、渡された本を読みながら絶賛猛勉強中なのだ。
今の俺は、奴隷としての価値が決まっており、約銀貨250枚。これは通常の奴隷より安いらしい。
「ただでさえ、最近ようやく目覚めたばかりの欠陥持ちなんだから少しは頭でも磨いとけ」
「欠陥持ちって呼ばないでほしいです。侮辱ですからね? 」
「なに言ってんだよ。最近まで上の空で、返事にも反応しねぇくせに、目覚めたら記憶喪失だなんて欠陥だよ、欠陥」
まあ、記憶喪失は自分でつけた設定なので言い返せないが、仕方ない。目覚めたばかりの自分は、それはもう慌てていたし、いろいろありすぎて理解が追い付かずにまた上の空になっていた。
考えても見てほしい、つい最近まで会社員をやっていた青年がいきなり目が覚めたら女の子になっていたとかあり得ないだろう。
「欠陥といわれても、私は元気ですよ? ほら、完璧です」
「自分で完璧とかいってるうちはダメに決まってるだろうが」
「む、そうですか」
「少しはお前を買った貴族に媚売れるように勉強しておけ! 」
いや、文字は読めるんだよ? 計算も答えが書けないだけで解くこともできる。
異世界の言葉は、なぜか日本語として聞き取ることができる。
文字は漢字でもローマ字でもないというのに。
「料理や家事は、あまり出来ないですね……」
「お前、何処の辺境出身だよ。女なら母親から学ぶだろうが」
「それも……思い出せないんです! はい! 」
「ちっ、本当に手間のかかるやつだな」
とりあえず記憶喪失として誤魔化したが、女の子ってこんなに学んでいるもんなのか?
この世界だと、女性は魔法を学び、武器で戦う男性をサポートする。
そのために、料理や家事全般は子どものときから学ぶらしい。
料理なんて、簡単なものと酒のつまみくらいしか作れない。
家事だって、ほとんど家を空けてる俺にはたまにしかやらないもんだった。
俺は、ほっとため息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
「まったく、世の中には物好きもいるもんだぜ。お前が目覚める前から予約していた貴族がいるんだ。何されるか知らねぇが、精々可愛がられてこい」
「ええ、頑張ります」
というか、頑張らないと生き残れないしな。
出来ないなら勉強すればいい、これ、社会人の鉄則。
「けっ、可愛いげのねぇガキだぜ」
こちらを見ながら作業をしていたアレクさんは苦々しい表情で顔をひきつらせた。
気にせず異世界の文字表を眺めている俺は、その反応をスルーする。
ここまで俺が頑張っているのは、生き残りたいという気持ちもあるが、残念なことに檻の外側に『購入済み』という貼り紙が貼られていたからだ。
購入者は、ジルベルト・コルネーエフ。高年齢の男性だが、宰相を勤めたこともある実力派の貴族。今は引退して、静かに余生を過ごしているらしい。
だが、宰相まで努めていた人物でもあるし、お金も人脈もあるはずだ。それなのに、奴隷を雇うという理由がわからない。奴隷という身分には人権が無いのと等しいのだ。失敗すれば殺されてしまう場合だってあるし、嫌なことを強要されることもある。勿論、そういう貴族にはそれなりの措置が取られるらしいが、見つかる以前にやられたくはない。
前世では、仕事とゲームだけで生きてきた男だ。
仕事中は、一人称を私で通していたのでなんとか誤魔化せてはいるが、28年間男として生きてきた身としては女子の言動、行動なんてさっぱりわからない。というか、わかるやつまじ尊敬するわ。
気になったので、長くなった自分の髪に触れてみる。
前世とは違ってサラサラと流れるように透くことができるのでさわり心地は良い。
まあ、元は天然パーマだったしね。
目覚めたときに、特に驚いたのは自分の容姿だ。始めてみたときは純粋に焦った。
飲み水に映るのは可憐な少女。
銀色の髪を肩まで伸ばし、少し濁った赤色の瞳。
まるでアニメや漫画に出てくるのような空想の人物のようで、最初は俺だとは思えなかったのだ。
歳はまだ10歳。
三年近くを寝て過ごしていたらしいが、そんなの知らん。気づいたらここにいたわけですしね。
そして、女性なら誰しも存在する果実のような膨らみ。マシュマロのような柔らかいさ、それであって張りのある形。
まだ小さいながらもほどよい弾力であった。
一応、自分のものなので触ってみたが、興奮はしない。なんだか悲しいものである。
そんなこともあって、今は女子を演じている会社員男性、今日も元気にやっていきますよ!
まずは、異世界知識を蓄えて独立を目標に!
「よし、頑張ります」
女子になったからなのか、心の中ではテンションが常に高い。表面は冷静だけど。
「はやくやれ」
アレクは仏頂面でこちらを睨み付けている。
やれやれ、構ってほしいのか。
「アレクさん、少しは笑顔も大切ですよ?」
「お前に言われたくないわ」
「ほら、笑ってみてください」
「奴隷商人が商品に笑顔振り撒いてどうするんだよ。お前らに営業しているわけじゃねーんだぞ」
「あ、確かに」
シャウラは、ぽんと相づちをうちながら納得する。会社員だったせいで上でも下でも媚び売ってたから忘れてたわ。
「寝すぎてボケてんじゃねーぞ。そんなんだと、貴族のとこいってやらかすぞ」
「心配してるんですか?」
「してる分けねーだろうが! お前がやらかすと俺の売上が落ちるるんだよ! 」
この人、ツンデレである。
今日もアレクさんを弄りつつ、この世界について学んでいく。
予定では来週の土曜日でしたが、早く書き上げることができたので明日も投稿します。
再来週から土日投稿にします。