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15.初戦闘

お待たせしました。

連載再開です。

「魔物との戦闘は冒険者に任せなさい。そうしないと痛い目をみるわ」


 とある仕事の合間に、そんなことをアレッタが言っていた気がする。

 王都から外れた森林地帯。

 兵士が徘徊して魔物を倒しているとはいえ、危険がないことはない。


「それにしても、魔物なんて出てこないよな」


 辺りを見渡すが、草木以外は虫すら見つけられない。

 日本にもあっただろう、ただの森林だ。


 別に、休暇中にこんなところに来て、ただ散歩しているわけではない。

 俺は意を決し、メイド服を着こなしながら、


「あの、すみません。魔物ってここら辺にいますか? 」


 森林内で警備をしている兵士のおじさんに、ゆっくりと声をかけた。


「あ? なんでこんなところにメイドがいやがるんだ」


 いや、ごもっともな意見ですが……。


「いや、ちょっと、魔物退治? 」

「はあ? 何がどうなったらメイドの嬢ちゃんが魔物を狩る流れになるんだよ」


 兵士のおじさんは、俺の容姿を一瞥しながら、


暗殺者(アサシン)っていうわけじゃないよなぁ。なら、捨てられたのか? メイドから冒険者みたいな感じか」


 と、哀れむように言われた。


「あ、あの。別に冒険者になりたいわけではないんですが……」

「そうなのか? じゃあ、なんで森に来たんだよ」

「実力証明、ですかね? 」

「お嬢ちゃん、なにも知らずに来たのか……」


 いや、危険とは聞いていましたよ……。

 それでも、なんと言いますか……外に出たかったというか……。

 シャウラの慌てぶりに老けた兵士はため息を吐いている。


「まあ、いい。俺が送ってやるから街へ戻れ。ここに来るときは、冒険者を雇うか傭兵に依頼してからにしな」

「そ、そこをなんとか」


 と、必死な瞳でお願いしてみるが……


「すまんな、仕事なんだよ」


 残念、シャウラ(男)の魅力は通じなかったようだ。

 そんなやり取りを続けているうちに、取り押さえられ、脇でかかえられながら森を進んでいく。


 その瞬間、ガサリという物音が諦めかけていたシャウラの耳に反響する。


「なにか、いる? 」

「あ、ここは街付近の比較的安全地帯だぞ。風だよ、風」

「いや、なにかいますよね……」


 魔力の流れがすん、と変化した。

 先ほどの流れていた心地の良い風から、濃い魔力の塊が辺りを包んでいく。


「ん、確かに濃度が変わったな」


 兵士のおじさんは、自身で理解した後に状況を把握した。

 何か、様子がおかしい。そう、理解して。

 そして、その予感は的中する。


「がぁぁあ!!! 」


 大型の魔物がこちらを凝視し、狙いをつけている。

 見た目はただの犬の姿をしている。だが、様子は可笑しい。

 変色した皮膚や虚ろな表情がこちらに危険を知らしてくれる。


 相手の行動を伺いながら、旋回しようとするが、飛び出して来た犬型の魔物がこちらに向かって突進してくる。

 目の前にいるそれは、元はおとなしい犬だったのだろう。

 その片鱗すら、見る影もないのだが。


「兵士さん、右です! 」

「ちっ、なんでこんなところにいやがるんだ! 」


 紙一重で、魔物の一撃をかわす。

 すかさず、俺を下ろすと兵士は腰に携える剣を構え、相手の様子を伺う。


「守りながらだと、分がわりぃな。めんどくせぇこったな」

「私のことなら大丈夫です! 自分のことなら守れますから! 」


 そう言って、懐から宝石を数個取り出す。

 今日の狩りに使おうとした触媒を今は守りに使うことにした。


「頼んだぞ、|woodウッド shieldシールド


 詠唱すると、辺りの木が自身の周囲を囲んで防壁を作り出す。

 たとえ、突進されても耐えられるくらいには頑丈だろう。

 俺も魔物の出方を静かに伺う。


 兵士の実力は知らないが、魔物の実力もまだわからないのだ。

 今、この時をもって、それがどうなのかを証明したい。


「行くぞ! クソワンころが!! 」


 兵士が剣を振るう。

 勢いがあるが、形は崩れていない。訓練してきたという証の一振りは、外された。


「こっちか! 」


 だが、その勢いをもって、反対への振り上げを成功させる。

 強烈な一撃を魔物へと叩き込む。

 それでも、魔力を帯びて固くなった皮膚には軽症らしい。


「がぁぁぁあ!! ぐらぁぁぁ!! 」


 魔物は吠え続けながら、兵士と俺を視認する。


「放て! |waterウォーター lanceランス


 隙を見て、俺も魔術を唱える。


「魔法使いだったのかよ。メイドなのに、な」


 なんだか、呆れられているようだが、今は気にしない。


「がぁぁぁぁ!! 」


 魔物はまた、こちらへ突進してくる。

 今度は兵士にではなく、俺の方向に。


「終わらせます。flame shot(フレイム ショット)


 飛び出た火球は、突進する魔物へと直撃する。

 魔術で強化された燃える業火。


 それは鎮火するまで、ひたすら燃えるという現象を繰り返し続ける。


「うわ、えげつねぇな。メイドの嬢ちゃん」

「……ええ、実力証明ですから」


 そんな一言を述べつつも、この威力に自分すらも驚いていたなんていえない。

 森林での初戦闘。

 どうやら、成功みたいです。


次回は兵士とデート?

そんなことないか(悟り)

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