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13.料理します!(嘘)

間に合った!!!


でも、料理できてねぇ!!!



7/8修正


いろいろ修正しました。

ほんと、確認ミスですいません()

 どうやら、頼まれたら断れないことが性分であることは、死んでも治らないらしい。

 ここ数日で、よく理解したよ。

 ガールは勢いよく、俺の右腕を引っ張りながら廊下を進んでいく。

 一応は女性なんだから、優しく扱ってほしいな。中身は男だけどさ。


「ちょっと、ガールさん。はやいですよ」

「おサボりメイドなんだから、ちっとは早く走れ! 」


 この男、本当に女性の扱いが雑すぎやしないか。

 外から見れば、ハンサムな顔と上品な声が周囲を魅力するだろうというのに。


「私はまだ、小さいんですから無理です! 」

「お前、何歳だよ。子どもは学院とかに通ってんだろ」

「が、学院ですか? 」


 え、なにそれ聞いてねぇぞ。慌てて問いただす俺に呆れられたようにガールは答える。


「嘘だろ、お嬢様と同じで引きこもってたのか? 」

「いえ、違いますが……」

「なら、知ってるだろ。おまえくらいの歳になると学院に通って、魔法や剣技を学ぶんだよ。もちろん、平民も貴族もな」


 そうだったのか。なんか、日本の教育機関と同じみたいだ。


 納得した俺は、素直に頷いておく。

 どうせなら行ってみたいが、身分的には奴隷、お嬢様も引きこもっているので望みなし。

 はぁ、神様。どうせなら、平凡に転生させてくれ。


「なんだ、俺様が連れていってやろうか? 勿論、対価は貰うけどな」

「ガールには頼りたくないです」


 俺は、ぶいっとそっぽを向く。

 というか、対価ってなんだよ。

 取引でさえ等価交換が普通だぞ。ワイロ、ダメ、絶対。


「なんでうちのメイドは人の親切を受け取らねぇんだ」

「対価をねだるからでしょ」

「そんなもんか」


 ガールは清々しい顔で納得している。なんともまあ、ムカつくイケメンである。

 男である俺には、彼の価値は一生理解できそうにない。


「さてと、ついたぜ。俺様の聖地、調理場」


 屋敷の一階中央にある、大広間の先にある小部屋。

 この男が使ってるとは思えないほど綺麗に整頓された調理場がそこにはあった。

 もともと小さいお屋敷だ。従者の数も少ないし、部屋数も少ない。そんな中でも広く作られているこの場所を、ガールは一人で占領しているらしい。


「今日の夕飯と明日の仕込みをしなくちゃいけねぇからな。アレッタなんかに任せたくないんだよ」

「アレッタさんの料理も美味しかったですよ? 」


 彼が作っていないのなら、俺が食べたのはアレッタさんが作ったはずだ。それでも不味くはなく、栄養食品ばかり口にしていた俺からしたら美味であったのだが。

どうやら、ガールは不満らしい。


「俺様は認めてねえ。あんな口の悪いドS女の料理がうまいわけないだろうが! 」

「なんですか、その理論」

「料理は心だ! 純粋な心を持っていれば、美味しい料理は完成するからな」

「ガールは欲望に忠実なだけですよね」

「そんなことねぇよ。よし、つくってるから見とけ」


 ガールは立て掛けてある包丁を握り、手にした食材を投げ込んだ。宙に放られた果実や野菜をそのまま勢いに任せて両断する。

 荒々しく、行われる調理は、見ている分には退屈しない。


 細かく刻まれた野菜、果物が、重力に従ってまな板の上へ落下する。


「簡単なものだが、煮込んで味を出すからな。スープにはピッタリだぜ」

「これでダシをとるんですか? 」

「だし……? まあ、味がつくからな。お前も覚えとけ、サボりメイド」

「いい加減、シャウラと呼んでくれませんか? 」

「使えると判断したら呼んでやるよ」


 ガールに使えるなんて認められたらパシられるに決まってるじゃないですか。

 彼の会話をスルーし、俺は調理を見守っていた。

 口調からは創造できないほど、丁寧な手さばき。

 入れるときは、荒々しいほどに豪快な手つき。

 あっという間に、スープは完成した。


「とりあえず、見せるためだから簡単なものを作ってみたからな。飲んでみろ」

「……いただきます」


 ゆっくりとスープを口へと運ぶ。

 後味が残らないほどスッキリとした味わいが口のなかに広がった。それは、素直に一級品と感じさせる品物だと理解した。

 うん、美味しい。

 素直に旨いと感じさせるのは悔しいが、これが彼の料理なのだろう。高級レストランなどにでてくる豪華なフルコースに近いイメージを想像させる。

 いや、食べたことはないけどね。


「ん、美味しいですね。これ」

「だろ、これが料理だからな」

「そうなんですね」


 こんなに美味しいのなら、俺も食べておくんだったな。

 月に一度ある飲み会くらいでしか、暖かい食事を取っていなかったのが悔やまれる。アレッタさん、この人、ホントに優秀でした。


「ジベルナさんとか、こういうの好きそうですね」

「あ、ああ。気に入ってたな。まあ、当たり前だよな」


 自信満々に言う彼は、少しカッコよかった。

 俺も男じゃなければ惚れてたな。男じゃなければな。


 「これだけの一品を作れるんですから、引っ張りだこなのでは? 」

「そんなことねぇよ。俺様にはやることがあるからな」

「やることって? 」


ガールは、ニヤっと笑って、


「若いガキに料理を配ってやるのさ。お腹が空いてる同僚や友人にさ」

「へぇ、いいじゃないですか」

「そのお礼に良いことさせてもらえるしよ」

「へ? 」

「若い子はいいよな。俺様の料理はしっかり誉めてくれるし、可愛い、尊い! 」

 

 え、この人、ロリコンなの?

 そう認識すると、冷や汗が背中を上から下へと流れていく。


「ち、ちなみに、さっきの対価って……」

「勿論、俺様への御奉仕に決まってんだろ。サボりメイドはちょうどタイプだから、楽しみにしてるからな」

「ははは、そうですか」


 迫力に押されて、乾いた返事を返す。

 よし、前言撤回だ。

 なんで、こんな残念なイケメンが料理人やってるんですか。というか、ジルベルトさん。なんでこんな人雇ってるんですか……。


「お前も、何か頼みたいことがあったら言いな。もちろん、対価は貰うけどな」


 はっはっは、と笑う彼に、素直に呆れる。

 お巡りさん、こちらですよ。

 現代にいたなら迷わず通報案件だぞ。


「え、遠慮しておきます」

「そんなこと言うなって。あ、この事、アレッタには内緒な。これで、何人新人が辞めたかわかんねぇからな」


 それ貴方のせいなのでは?

 絶対にセクハラしていることが原因だと思うのだが。

 はぁ、とりあえず黙祷しておく。

 ニヤリと笑うガールはまだ気づいていない。

 後ろに、危険なオーラを纏う彼女の姿に。


「まあ、困ったら言え! 俺様が聞いてやるよ! 」


ガールはガッツポーズを取りながら、歯をキラッと光らせた気がした。


「へぇ、なら聞いてもらおうかしら。私の可愛いシャウラに手をだそうとしている変態に自害してもらいたいわ」

「は? 何言って……うわ! アレッタ、待て、落ち着けって」


 そんなポーズをとるイケメンの腕を、アレッタは何者も離さない蛇の口のようにがっしりと掴んでいる。そのまま勢いよく、人間に曲げることが不可能な方向へ向けようと力をかけている。


 メキメキメキメキ。


 軋むような音が聞こえる。


 あれは、うん。痛いだろうなぁ。

 プロレスで似たような技を見たことがあるような気がする。


「お、おい! サボりメイド。このドSメイドに言ってやれ! 私はなにもされてませんって」

「はい、この人に辱しめられました」


 養護なんて、ないです。


「覚悟は出来てるのよね? 」

「まて、アレッタ。好きだ、だから助けてくれ」


 突然のガールの告白、その返答は……。


「私も好きよ。だから助けない」


 無慈悲なものだった。


「痛い! 痛い! 痛い! まって、曲がらないから、そっちは俺様でも無理だから! 」

「さあ、もっと泣きわめきなさい」


 アレッタさんもスイッチが入ったらしく、残念なイケメンの断末魔が調理場に響き続ける。


 ゲームキャラならいいポジションにいそうな赤髪のイケメン。

 料理も作れて、人当たりもいい。


 だが、ロリコンだ。


 それだけで、彼が残念に見えて仕方がなかった。




次回は来週土曜日


今度は間に合わせます

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