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10.脆弱な魔女

お待たせしました。


改稿が遅くなって申し訳ありません。


 --20分後。

 シャウラは満を持してアリスベリカに指示された場所に到着した。アリスベリカの部屋の広さは、他の部屋とは比べ物にならない。それは、距離も同じだ。

 歩きながら、反省する。

 たった三部屋程度の距離だが、彼女は脆弱すぎた。

 というか、体力が無さすぎる。

 頑張って10歩程度歩いてもらったが、そこで休憩を挟み、また10歩進むの繰り返し。


 途中で俺が抱えて運びますよ? と提案したのだが、


「恥ずかしいから嫌ですわ! 」


 その一言で断られてしまった。

 何故だ? 今は女の子になっているはずなんだけどなぁ。

 漫画とかではよく、女の子がお姫様抱っこで運ばれると喜んでいたはずだけど。


「さ、さて。着きましたわね」


 アリスベリカが息を切らしながら、こちらに視線を向ける。

 着いた場所には、宝石が散らばっていた。

 赤、青、緑、黄、紫など様々な色と形の物があり、キラキラと輝いている。


「これは、宝石ですか? 」

「よく知ってますのね」


 赤く透き通る宝石を一つ握る。

 豆粒程度の大きさの物しか見てこなかった自分にとって、手のひらサイズでも恐れ多いものだ。


「平民にはあまり馴染みがないものだと思ってましたわ」

「まあ、いろいろ見てましたから」


 前世でも見てきたが、アレクさんに渡された本に書いてあったはずだ。

 貴族は宝石類が好きだから気をつけて扱えという内容だったが。


「なら、簡単に理解できるわよ。これを触媒にするだけですし」


 それでわかったら苦労しないんだけどなぁ。

 俺は呆れた顔でお嬢様を見つめる。


「見てなさい、これが"魔術"よ」


 アリスベリカは一つ宝石をつかみ、それを握りつぶす。

 すると、耳障りな激しい音を立てて砕けた宝石が光輝き、反応している。


「放て! Water shot(ウォーターショット)! 」


 砕けた宝石を、宙に拡散させる。その瞬間、欠片は水の塊に変化し、一直線に壁へと発射された。

 魔法に比べて消費が激しい代わりに威力で補う。

 勢いよく、水は壁を突き抜けていった。


 ふふん、とご満悦にお嬢様は微笑む。


「見てまして、シャウラ。これが私の研究成果、魔術と名付けた最新鋭の魔法ですわ」

「す、すごいですね」


 あ、すいません。なぜだか、開いた口が塞がらないです。


「驚くのも無理はありませんわ。これは魔法の歴史を覆す異例の事態ですもの」


 いや、そっちじゃないんですよ。英語でしたよね? 呪文、英語でしたよね?


 心の中で同じ質問を二度聞いてしまうほど、俺は驚きを隠せなかった。


「まだ呪文は少数ですが、これなら貴方でもつかえるでしょ? 」


 うん、たぶん使えるよ。

 会社員時代には取引で外国の方ともやり取りをしていたから多少なら嗜んでいる。

 それでも、


「ア、アリスベリカ様。それって、まだ公開されてない秘技ですよね? 」

「ええ、そうよ。神を否定するやり方なんて、世間が知ったら殺しに来るにきまってるもの」

「やっぱり、そうですか」

「シャウラは、神を信じていないんでしょ? なら、問題ないじゃない」

「そうなんですが……」


 いや、でももしかしたら使えないかもしれない。 

 そんな淡い気持ちを持ちながら、俺は宝石を一つ手に取る。


「|Water lanceウォーターランス


 宝石を砕き、呪文を唱える。

 あっさりと崩れた欠片は水で固定された槍へと変貌し、すんなりと手に収まった。


「やっぱり出来ちゃうんですね……」


 槍を左右に振りながら形状を確認する。

 うん、槍だね。lance(ランス)だね。

 平穏な生活を夢見ていたが、ガラガラと崩れるような音が心の中で響いていった。


「その呪文は聞いたことがありませんわ! どうやったのよ! 」

「いや、なんとなくテキトーに、です」


 思い付く言い訳が無かったので適当に濁す。


「……シャウラ」


 淡々とした声で呼ばれたので、背筋が強張る。

 これ、実験材料とかにされないよね?


「貴方、才能があるかもしれませんわ! お祖父様が雇ったのは正解ですわね! 」

「え、あっ、はい」


 勢いよく両手を捕まれ、ぐいんぐいんと上下に揺らしてくる。


「私でもわからなかった文字の羅列に一瞬で気づくなんて、ほんと凄いことなんですわよ」

「そ、そうみたいですね」

「よかったら、これからも私の世話係兼、研究の助手をしてほしいですわ! 」

「わ、私は、お嬢様のメイドですから。別に構いませんが……」

「なら、早速シャウラに手伝ってほしいんですわ! 私の目的のためにも」

「えっと、目的って、なんですか? 」


 不意に、力がこめられる。

 体力がないと笑っていたお嬢様からは考えられないほど、ぎゅっと握りしめられていた。


「そうね、話しましょうか」


 アリスベリカは口を開く。


「私は、妹であるリアナを探しているの。三年前、家事で焼けた屋敷から失踪した、親愛なる肉親を」


 不安でぐらつく俺に、お嬢様は闇を抱えたような瞳で、見つめていた。







魔法→漢字にルビ振り

魔術→英語にルビ振り


の予定です。

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