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6.引きこもりのお嬢様

投稿が遅れて申し訳ございません。

昨日投稿予定が間に合いませんでした。


今週からは土日の二回の投稿になりますので

気長にお待ちいただけると嬉しいです。


※内容の追加、表現の変更を行いました。

読みやすくなれば幸いです

 一段と華やかに飾られた部屋は、女の子が使っているんだなと理解させた。

 ジベルナは「こっちだよー」と私を誘導する。


 部屋は、想像を越えるほど奥へと続いていた。元の大きさと比べて、この空間だけが異様なほど拡大されている。

 そんな部屋の奥へ向かうほど、とても女性が使っているとは到底思えない場所に変貌する。本や丸められた紙が散乱しており、中には、何かの儀式でも行ったような魔法陣や呪文が描かれている。


「また散らかしちゃってる。お嬢様ったらもう」


 散らかっている本を広い集め、本棚へと戻す。シャウラもそれを手伝った。


「魔法に関して才能があるって言っても、片付けくらいはしてほしいなぁー」

「魔法ですか」

「あ、シャウラちゃん魔法知らない? 」

「詳しくはわかりません」

「じゃあ、軽く説明するぞー」


 ジベルナが軽い感じで説明をする。

 この世界にはファンタジーの定番通り魔法が存在することだけは先に述べておこう。


 ただ、この力が使えるのは女性だけ。

 それも、清らかな乙女のみが使えるらしい。その反対で男性は、武術、剣技など近接に特化した才能を得る人が多いらしい。その定義はよくわからないのでここでは割愛する。

 神文を詠唱し、神様からの力を擬似的に発現させる。それがこの世界の魔法だ。


 陽気なメイドと談笑しながら魔法について思考する。

 というか、俺って魔法使えるのかな?

 元男って女性に含まれているのか、些か不安である。


 そうこうしているうちに、乱れたベッドで眠る少女の前にたどり着く。

 青く透き通る髪をベッドに広げ、寝息をたてている。

 寝相が悪いのか、枕は床に落ちており、体勢は横になってしまっている。


「お嬢様、もう朝ですよー。起きないと腰のあたりをわしゃわしゃしますから」


 ジベルナはもうくすぐる準備は出来てますよと両手の指をぐねんぐねんと動かす。

 それに反応するように、彼女は目を覚ます。


「ん、ジベルナ、やめてちょうだい。あなたのそれは痛いから」


 どうやら、ホントに嫌らしい。ゆっくりと起き上がり、生気のない瞳で無邪気なメイドの手を払った。

 にゃはは、と笑うジベルナさんは諦めたように引っ込めた。


「あれ、あなたは誰だったかしら?」

「本日からメイドして仕えさせていく、シャウラと申します」


 俺を見つけたお嬢様がこちらに訪ねる。返事は、味気ない自己紹介だが、これしか経歴がないので許してほしい。


「そう、お祖父様が雇ったのかしら。まあいいわ、頑張ってね」


 その一言だけ述べて、彼女は眠りにつく。俗にいう二度寝である。


「あ、あの」


 揺らしてみるが、返事はない。


「あー、お嬢様寝ちゃったか。こりゃ起きないねぇ」

「起きないんですか」


 ジベルナは頷き、


「うん、アレッタも起こせないのよ。こまったこまった」

「無理矢理起こしても大丈夫ですか? 」

「死ななきゃオーケー! 」

「少し、やらせてください」


 許可を貰ったので、私はアリスベリカの鼻を手で押さえる。会社員時代、眠そうな同僚にやって無理矢理起こした技である。

 勿論、危ないから数秒だけにとどめておく。


「ん、ふぐ……んんん! 」


 再び、彼女が目を覚ます。

 少し涙目になりながら、唇を尖らせている。


「なんだか、息苦しいですわ! 」

「塞いでますから」

「な! なんでですの?」

「起きないからです」


 そう言って、毛布を剥ぎ取る。

 人間は布団に入るから眠くなるのだ。これが泣ければ多少はもつはずだ。


「私が主だってわかってらっしゃる? 」

「はい」

「こんなことしていいと思ってるの? 」

「起きていないので関係ありませんよ。これはお嬢様のためですから」


 一息ついて、びしっと言う。

 大人ならまだしも、子どもがこんなに寝てては身体に悪い。

 剥ぎ取られたからか、彼女が俺を見る目が冷たいものになる。


「あ、お嬢様起きた。すごいねー、シャウラ」


 そんなお嬢様の様子とは裏腹に、隣で拍手するジベルナ。


「ジベルナも、この子を止めなさい! 」

「はいはーい。シャウラ、こっちきてー」


 私の上司は、陽気に命令を受諾する。

 反対する理由もないのでシャウラは頷き、アリスベリカから離れた。


「まったく、なんなんですの」


 お嬢様は、ぷりぷりと怒っている。

 あれ、会社員のときは助かったわとか言われたんだけどなぁ。


「シャウラの起こし方でいいんだね。私、覚えたよー」

「あれは、絶対禁止ですわ! 命の危機でしたわよ」

「でも、また寝ますよね? 」

「……いえ、起きますわ。いろいろ話したこともありますし」


 アリスベリカは起き上がり、こちらを見てくそ微笑んだ。

 なにか、お小言を言われそうで不安だが、仕方なく俺は頷いた。



 お嬢様の着替えが終わり、改めて私は彼女と向き合っている。

 ジベルナさんは部屋の掃除に取りかかっている。


「 改めて、自己紹介するわ。私はアリスベリカ・コルネーエフ。貴方の主だからしっかり覚えなさい」

「承知しました」


 愛くるしい青色の瞳でこちらを見つめ、多少高貴なお嬢様を想像させる彼女--アリスベリカは、素っ気なく答える。

 だが、こちらをちらちらと伺っている。そして、目が合うと背けるのだ。


「……」

「な、なんですの? 」

「いえ、お気になさらずに」

「なにか、私の顔についてまして? 」

「いえ、なにもありませんよ」

「そう、ならいいですわ」


 安心したように、アリスは胸を撫で下ろした。

 いや、じろじろ見ていた理由は俺が悪いんだけどね。正直、生の金髪お嬢様を感動している。表情には出さないけどさ。

 貴族のお嬢様が発する語尾につけるあの、『ですわ』。

 あれが本当に聞ける日がくるとは思わなかった。


 ドラマなんかだと、なんだか作り物っぽくて。かといって現代の日本に『ですわ』なんてつけて過ごしてる人がいるなら、それこそ希少すぎて会えるはずがない。


「おー」


 思わず、声が漏れてしまう。

 だって、金髪でお嬢様だよ?

 それだけでなんかテンションが上がるよね。


「お嬢様! 私、頑張りますね! 」

「は、はい? 」


 何事かわからずきょとんとするアリスベリカ。

 メイドの仕事なんて、残業ばっかでつかれるデスクワークよりは新鮮味があって楽しめる。


「と、とりあえずこの辺りの掃除をジベルナと一緒にやりなさい。頼んだわよ」


 散らかっている本を指差しながらシャウラに指示を出す。

 本の片付けくらい、すぐ終わるのになぁ。


「あ、お嬢様。また強気に出てる、友達できませんよ」

「うるさいわね! そんなこと知りませんわ! 」

「シャウラちゃん、なにかあったら言ってねー」


 暴れるお嬢様を押さえつけながら手を振るメイドさん。

 私は気にせずに掃除を始める。

 これくらいなら30分もあれば終わるだろう。


 メイドとしての初仕事。

 案外、会社員よりも楽らしいと認識した俺であった。



次回はジルベルトさん視点の予定

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