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夢の中の少女
何もない暗く黒い空間にその少女はいた。
少女はその空間に映えるほどの銀色の髪をしていて、肌の方は髪の方には少し負けるがこの暗闇でも見える程度に白い。
その少女は自分の膝を抱えて泣いているのが分かる。
「...わい...す...て...」
少女は何か言っているが聞こえない。
「こわ...た...けて...」
どうやら怯えて泣いているらしい。
俺は少女の方に歩いていく、しかし歩いても歩いても全く距離が縮まらなかった。
そこで俺の意識は途絶えた。
目を覚ますとよく知った天井があった。
「やっぱり今回もダメなのか...」
俺がこの夢を見るのは今日が初めてではない、週に五回の時もあれば、月に二回ぐらいのときもある。
そして、毎回毎回近づこうとするが全く距離が縮まらない。
でも、今回は一つだけ収穫があった。
あの少女の声が聞こえたことだ。
今までは声を一度も聞いたことがなかった。
まぁ、何回も見たって言っても所詮夢だからと言って深く考えるのをやめてもう一度寝ることにした。
しかしこの夢がこれから起きる事件の鍵となることをこの時の俺はまだ知らなかった。