狐の嫁入り
「蓮~。遊ぼうよ」
「姉さんあとでね」
私達はごく普通の姉弟。
母上が言うには仲がとてもいいらしい。
年齢的にはいい年なんだけどね。
私はこの時間が幸せ。
「失礼します」
父上の部屋に入ると言われた。
恐れていた言葉。
「蓮は縁談の話で頭がいっぱいだ。もう、蓮の部屋に行くな。恋歌」
「父上!嫌ですわ」
すると、打たれた。
痛い。
父上はすぐに手を上げる人。
しかも、私だけに。
「もう蓮に関わるな。出てけ」
部屋を追い出されると私は空を見る。
三日月が綺麗な夜。
蓮が結婚する前に私が愛を注いであげたい。
池に映る顏を私の顏なのかな。
「これから、縁談の結論を出す。両家、里見家と武蔵家の縁談を認める」
「よろしくお願いします。里見麗華様」
『こちらこそよろしくお願いします。武蔵蓮様。そして、お姉様の武蔵恋歌様』
まるで、私をあざ笑うかのような笑顔にはらわたが煮えくり返った。
絶えきれなくなって私は、面談の部屋を飛び出す。
無礼なのは分かっています。
でも、でも!
部屋までの廊下を走っていると、雨音がする。
「通り雨…」
しょせんは私は、姉に過ぎない。
蓮を愛してしまっているのに。
その日の夜は宴でした。
宴が終わり静けさを取り戻したお城で私は部屋を出る。
蓮の部屋に行きたいの。
廊下を歩いて蓮の部屋の前まで来てしまう。
「姉さん…?」
襖を開けて蓮に近づく。
「蓮…結婚してしまうの?」
「両家のためさ…姉さん分かってくれよ」
「名前で呼んで!私は恋歌…」
蓮に押し倒された。
「恋歌…俺だって姉さんと生きていたかった」
「んっ…」
接吻をされてしまった。
いけない事なのに。
なのに、どうして?
蓮は知ら無い。
私の事さえ。
私はある人が死んだ山に来ていた。
紅葉が綺麗な場所だけど。
「!来たのね、麗華」
「恋歌、もう嘘を付くなよ」
「蓮!?なんでここに?」
「俺は姉さんの正体を知っている。本当の姉さんはこの崖の下で死んだんだ」
なんで、なんで!?
すると、風が吹いて左目が現れる。
狐の目。
「姉さんは化け狐だんだろ。俺の本当の姉さんに成りすまして」
「蓮!違うわ」
「嘘をつくな!俺はすべて知っている。麗華様から聞いたよ…俺の事を愛している狐の物語を」
私は狐だ。
蓮に一目惚れをして、本当の姉を殺した。
全ては私の者になるんだから。
「…私…蓮が好きなだけだったのに」
呪いが解けて耳がでて来る。
「ありがとう…」
私は隠し持っていた短刀で蓮を殺す。
最後には自分自身も刺殺した。
赤い血の池ができる。
「恋歌…」
「え…っ…蓮…」
二人は手を繋いで旅だった。
私の狐の嫁入り。
『麗華』
『どうしたのです?父上様』
『縁談は取り消しだ』
『嘘ですわよね?しょせんは、嫁入りごっこ…狐が化ける』
『蓮様と恋歌様が自害なさったそうだ』
『…そんな…』
『神隠しがあった山で、蓮様と恋歌様が自害とは…』
『分かりました。縁談は諦めます』
狐の嫁入りはあの世で出来る。
私は幸せ。
蓮。