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×20 1日の終わり

どこに行くあてもなく図書室へ向かった私は結局チャイムの音と一緒に教室に入るはめになった。


「ついてないな」


1限が終わり皆が教室移動をする中を1人でとぼとぼと歩いた。

今日はついてない日だから気をつけなきゃ。


放課後。私の思いを神様が聞いてくれたのか、あらゆることに細心の注意をはらったからなのか1日なにも起こらなかった。

ただ誰とも話さなかっただけ、ただすーちゃんと一緒にいなかっただけ。

それだけ。

無視されるということはなかった。私が話しかけると、次の教室だったり課題だったり、みんな答えてくれた。いつもと違うと感じたのは私の思い違いなんじゃないかとさえ思った。たぶん他の人には何も変わっていないように見えるだろう。


「うーん、困った困った」


心なしか独り言が増えた気もする。


「どーしたものかな」


あたりまえだけど、今までこんなことなかったし。なんですーちゃんが怒ってるのかわからないし。というかあの会話にすーちゃんが怒る要素なんてなかったと思うし。言い訳とも言えることを頭の中で繰り返す。

すーちゃんが怒ったとき......私が青野のことを嫌いって言ったとき?すーちゃんは青野のことが好きだから私なんかに青野のこと悪く言われるのが嫌だった?

あのすーちゃんがそんなわけないとは思うけど、他に何も思いつかない。

そう考えると急に腹立たしく思えてきた。

すーちゃんは私が青野に何されてきたかわかってるくせにちょっと青野のこと悪く言っただけであんなに怒るなんて。嫌いなこと知ってるはずなのに。


「......恋は盲目」


すーちゃんに対してそう思った。

よく聞くけれども身近に感じることはなかった言葉がかつての親友にぴったりな気がした。と同時にこうも思う、私はああいうふうになりたくない、と。


「お昼寝ですか、早瀬さん」


上から降ってきた敬語にそういえば放課後だったことを思い出し謝ろうと顔を上げ立ち上がった。


「すいま...っ」

「だまされてやんの」


目の前には今まで私を悩ませていた本人がいた。

先生かと思い顔を上げたことが馬鹿馬鹿しくなって再び座り机に突っ伏した。


「おいおい無視かよ?せっかく起こしてあげたのに」


「......」


「まぁいいや、もうすぐ本当に先生くるから。寝てると本当に説教くらうぞー。」


「寝てないっ!」


顔を上げて叫んだときには、青野は私に背を向けて教室を出るところだった。

あいつ、私が攻撃しかけるの見越して逃げやがった。

青野はドアの前でくるりと振り返りニヤリと笑った。


「独り言とうたた寝には気をつけなよ、元遅刻常習犯さん」


「何をっ!」


ガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。

しかし青野はとっくにひらりとドアの向こうに消えていた。


ガターン


1人残された教室に

椅子が倒れる音が響いた。




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