×19 予兆
長い間止まっていてすいませんでした。復活しようと思います。
すーちゃんを怒らせてしまった次の日。
いつも登校途中に会うのに、会わなかった。約束しているわけじゃないけどそこで会って一緒に登校するのが当たり前みたいになった交差点にすーちゃんはいなかった。
どうやって声かけようかとか、何て言って誤ろうかとか考えていた私は拍子抜けだ。
あの日、怒って行ってしまったすーちゃんはその後一度も私と目を合わせることがなかったし、休み時間も放課後にも話しかけてこなかった。いつも二人で歩く帰り道は冬になりかけの風が冷たかった。
いつも絡んでくれる如月さんたちもなぜだか私の所へは来ようとしない。
気がつくと学校だった。
いつもよりずいぶんと早く学校に来てしまった。今日はいつもと違うことばかりで別の世界に一人で迷い込んだみたい。
授業開始までにはだいぶ時間がある。こんな時間に教室にいるのは女子がほとんど。こういうときこそ女子って真面目だなぁって思うんだよね。もちろん、真面目な男子もいるけどさ。
廊下に面した窓に映る本田くんの影を横目に教室のドアを開けた。
「...っ」
ドアを開けた瞬間、思いの外多かった女子達が一斉に私を見た。ザッとかバッとか効果音がつきそう。
「えっと、おはよう?」
状況がわからずとりあえず挨拶をしてみると女子達は何事もなかったように各々で話を始める。
そこにはすーちゃんもいた。
私はすーちゃんに謝ろうと、声をかけようと、一歩踏み出した。
「早瀬?」
背後から投げかけられた言葉に引き戻される。
「いつも早いけど今日は一段と早いんだな」
朝だというのに爽やかお声。これぞ世に言うイケメンボイスなんでしょうね。
青野は教室入り口に立って私を見下ろした。むかつくほどの身長差だけどこういうのも悪くない。そういうことを思ってしまうのは私が青野を......。すーちゃんが言ったとおり自分でもわかってないだけ?
教室に入ってきた男子が青野に話しかけ、我に帰った私はぶんぶんと頭を振りよからぬ考えを振り払った。
いけないいけない。すーちゃんと仲直りするんだった。
でも、そう考えているのにどうしても青野の方に目が行ってしまって、とてもじゃないけど教室に居られなくて。
「見下ろすなよ、バーカ」
小声で言い返して逃げるように教室を出た。
「教室に居て、すーちゃんと気まずくならないため。青野は関係ない」
ひっそりと自分だけ聞こえるように、自分言い聞かせるように、呟いて。




