飛べメロス(作:比良依墨)
メロスは激怒した。必ず、かの侵略者を除かねばならぬと決意した。
「本当に行くのか、メロス」
「私の身体を流れる正義と愛の血が、愛すべき人々の住まう地球を守れと叫んでいるのだ。それに、超次元戦闘機を乗りこなせるのは私だけだろう」
「そうか。ならば私は何も言わぬ。きっと、生きて帰って来い」
「ありがとう、友よ」
メロスは整備士のセリヌンティウスにそう言って、超次元戦闘機に乗り込み、発進していった。初夏、満点の星空へと。
地球圏を越え、太陽系を越え、銀河さえも越えて向かう先は、侵略者の根城である。メロスは、道中で襲い掛かる侵略者の戦闘機を撃墜しながら飛んでいった。
そして、ついに侵略者の母星にたどり着いた。
「気の毒だが地球のためだ!」
メロスは次々に出動する侵略者軍を攻撃し、その数を減らしていった。敵の攻撃が機体を掠り、ひやりとさせられることもあったが、メロスの操縦技術と超次元戦闘機の機動性により、直撃することはなかった。
メロスは順調に敵機を撃墜していき、これだけ叩けばもう十分だろう、などと呑気に考え始めたところで、侵略者の基地から星間弾道ミサイルが発射された。一発で地球を粉々に破壊するほどの危険なミサイルが、発射されたのだ。
メロスはすぐにミサイルを追いかけるが、ミサイルの凄まじい加速に追いつけず、もはや目視することすら叶わぬ。メロスは、多少の躊躇と、勇気ある決意を胸に、安全装置を解除した。超次元戦闘機は殺人的な加速を始め、メロスは意識を失いそうになるが、愛と誠の力で持ちこたえ、ミサイルとの距離を詰める。加速に耐え切れず、機体はみしみしと悲鳴を上げ、メロスも二度、三度、口から血を噴き出すが、止まるわけにはいかぬ。そしてついに射程圏内にまで接近し、ミサイルを破壊することに成功した。
なんとか任務を終えたメロスは、群衆の歓声に迎えられながら、地球に帰還した。
「万歳、超次元戦闘機万歳」
ひとりの少女が、ブルーシートをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。そこに佳き整備士セリヌンティウスが現れ、気を利かせて教えてやった。
「メロス、君の超次元戦闘機はボロボロじゃないか。早くそのブルーシートを被せるがいい。この可愛い娘さんは、ボロボロの超次元戦闘機を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ」
勇者は、ひどく赤面した。