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WORLD BREAKER  作者: 白雨 蒼
魔女の軍姫と彗星の騎士
19/22

幕間

 これは夢だ。シャーロットはそれがすぐに分かった。


 何故と問われれば、答えは明白――ホウキが目の前にいるからだ。


 周りは等しく闇に包まれていた。何も見えない暗雲の世界に、彼女だけがひっそりと、だが悠然と佇んでいる。


 その手に握る刀を手に、彼女を飲み込もうとする暗黒をその白刃で薙ぎ払いながら彼女は突き進んでいた。


 暗黒はそのすべてが意志を持った魔術だ。その暗黒に触れたすべてを容赦なく襲い、その存在が塵芥と化すまで攻撃を止めない――そういう魔術だ。


 しかし、彼女にとってはそれすら苦難とはならないらしい。彼女の身を苛もうとする暗雲は、彼女の纏う白い、魔力に似た光によって打ち消され、その白刃が放つ斬撃は魔術のすべてを斬り伏せ霧散させる。


 その凛とした、そして揺るぎない姿勢を見て思った。



 この人なら、自分を止めてくれる。



 この人なら、自分を仕留(とめ)てくれる。



 やっと、この忌々しい所業をこの剣士なら――あの時はそう思った。


 でも、ホウキは自分を殺すことはなかった。彼女は言った。




「――貴女を助けてあげる」




 微笑みと共に告げられたその言葉を、彼女は迷いなく実行してくれた。王を騙し、民を騙し、歴史すら騙して、彼女は母の願いに従ってシャーロットを助けることを選択したのだから。


 それでも、シャーロットが――否、アウローラ・リム=ロードが生きていては、事実を知る人間に姿を見られただけで真実が暴かれる。


 だから隠れることになった。いや……永い眠りについて、いずれ時が過ぎたのちに目覚める。そういうことになった。


 眠りにつく間際、アウローラはホウキと約束を交わした。



 ――次に目を覚ましたその時は、この身に宿る力を誰かのために用いる、と。



 そして目覚めたのが十年と少し前。母は随分と老い、最早祖母と言っても差し替わりない年になっていた。


 前王の弟の子の子――そういう立ち位置で王位継承者となってからは死に物狂いだった。自分を助けてくれた母ディアメルの想いと、ホウキの想いに報いるために。


 自分の愚かさで命を失ってしまった、多くの民のために。


 そうして奔走し続けてここまで来た。


 そして出会ったのはホウキの息子を名乗る少年。母を死に追いやった事実を悔やみ、自分を投げ捨てようと自棄になっている少年に。


 最初は憎悪した。


 自分の憧れの存在を殺した相手として。自分の恩人を殺した相手として。



 でも違う。


 彼もまた託された人間だった。ホウキの意思を確かに継承しているのが、彼の言葉の端々に、そして行動の各所に垣間見え、また彼女と重なるのを感じて――ホウキの意思がそこにあることを、何となく理解した。


 そして、ホウキの恩に報いるにはどうすればいいかを考えた。


 考えて、剣を託して――でもできたのはそれだけな気がする。でも、それくらいしか思いつかなかった。




 ――ねえ、ホウキ。私には後、何ができると思う?








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