にじみ出るリスペクト、虹みたい
古着屋のドアを開けると、なかからリズムのいい音楽が聞こえてきた。スクラッチが走って、独特の歌が流れ出す。
私はサイズの小さくなってしまった古着をカウンターにそっと置いた。
「買取お願いします」
「査定しますので、しばらく店内でお待ちください」
店内でハンガーにかかっている商品に手を伸ばしながら、カウンターをながめる。今店員が広げている服は、海外旅行したときに買ったものだ。半袖で出かけたものの意外と寒くて、手近な店で買った。あれは気に入っていたけれど、二の腕の辺りがパツパツしてしまって着られなくなった服。そっちはかがむと背中が出てしまう服。
「査定をお待ちの方ー」
「はい」
カウンター横の大きなスピーカーから、勢いのいい波のようなうねりをともなって、歌が聞こえる。歌詞はよくわからない。突然コール&レスポンスがはじまったとき、店員の身体がリズムに乗って揺れはじめた。
「ノってますね」
「すんません。俺この曲めっちゃ好きで。マジリスペクトなんすよ。……あ、これ査定金額っす」
電卓に表示されている文字を見て、私はうなずいた。店員は「っス」と少し楽しそうに唇をとがらせ、レジを開く。
お金を渡す店員の人差し指がちょっと上がっている。それがテレビで見たことのある、ライムスターの「HEY YO!」のポーズに似ていると気付く。
思わず微笑んでお金を受け取り、店内をあとにした。
「ありがとうございましたー」
ドアを閉めると、音のうねりとスクラッチが遠のいていく。
空に虹がかかっていた。
「にじみでるリスペクト、虹みたい」
<おわり>




