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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第32話 私の魔法…-6

 

 私ことシルファは成果を上げる事が出来ないまま

 三日目へと突入していました。

 セレーネお姉さまの言葉のお陰で、まだ心に余裕はあるけど。

 皆に心配をかけてしまっていると考えると、心がもやもやとして落ち着かない。

 

 それにやはりと言うべきなのでしょうか?

 私の噂は学園内の生徒達に広まっている様で

 廊下を歩くだけで、私へと視線が集まっているのがわかります。

 

 いずれこうなる事は分かっていたけれど、

 でも、私の思っていたのとは何かが違います。

 例えばだけど?絵物語や少女小説の様な……

『あの子が魔法を使えなかった劣等生よオホホ~』…的な事を予想していました。

 

 でも、今私が受けている視線に感じるのは蔑みよりも、好奇心に近い眼差し?

 喩えるなら、珍しい珍獣や奇獣あるいは魔獣を見る様な?

 確かに、私の様な事例は稀なケースなのかもしれないけど。

 それが返って落ち着きません。

 いえ、蔑まれたいとかそう言う趣味はありませんよ?

 どちらにしてもチラチラと見られ注目されるのは恥ずかしい。

 

 もういっその事、教室に引き籠っていたい。でも、そうもいきません。

 だって、お腹は空いてしまうから。今もかなりぺこぺこです。

 

 特訓を兼ねた特別課題に励み過ぎた結果なのだけど。

 こう視線を集めてしまうのなら、やはりコロネ達と一緒に戻るべきでした。

「…早く学食に行きたい……」

 視線を感じる度、気持ちばかりが焦ってしまうけれど。走る訳にはいきません。

 横目で壁を見れば、生徒会が作った張り紙が目に入ってしまう。

 

『愛らしき少女諸君!常に可憐であれ!』

『廊下を走ってはいけません。生徒会より』

 

 生徒会長であるフィールさんが指さす似顔絵入りの張り紙。

 ここまで言われてしまったら、走る訳にはいきません。だけど。

 走るのはダメだけど、急ぎ足なら校則違反にはならないはず。

 ですよね?

 

 一人納得すると、周囲の視線から逃れるべく足を速めるのだけど。

 これがいけなかった。

 人は焦ると向意味な失敗を犯してしまうもの。

「あぅ…!」

 私もその例に漏れる事無く、足がもつれてしまいました。

 周囲からは短く驚く声が聞こえる、悲鳴へと至る直前の声。

 大勢の視線の中で転んでしまうなんて、最悪です。

 

 でも、そうはならなかった。

 

「え、あれ?」

 倒れかけた私を、褐色の腕ががっちりと支えていました。

「大丈夫?」

 何事?と私が驚いていると声が降って来た。

 私の背丈よりも高い位置からの声。

 顔を上げれば、深い褐色の瞳が見詰めていた。

 この瞳を私は知っています。

 

 私よりも頭二つ分ほど高い背丈

 癖のある赤毛の間から見える角は鬼人オーガの血を引く証。

「フォルテ?」

 彼女の名はフォルテ。私と同じ教室で学ぶクラスメイトの一人。

 

「はい、私ですよ。足大丈夫?」

 驚きのままこくりと頷く私に、彼女は牙の口でニコっと笑いました。

 少女なのに男前と言う表現が似合ってしまう素敵な笑顔。

 しかもこのタイミングでの登場。

 このまま恋に落ちたとしても、不思議は無い展開です。

 いえいえ、これは喩えですからね?私にはお姉さまがいますし。

 

「シルファも食堂に行くのよね?なら私の影に入るといいよ?

 ほら?私も、昔から人目を引いてしまう方だったから」

 

 でも…と遠慮する私にフォルテは

 自分もこの身長だから?と言葉を続け、自分の頭をぽんっと叩いた。

 私への気遣いも忘れない、素敵なかっこ良さ。

 でも、彼女的には乙女らしくありたいらしいです。そこも彼女の魅力の一つ。

 せっかくだし、お言葉に甘えようかな?

 

「なら~私はシルファの後ろを~」

 今度は後ろからの声。このクロワよりもゆるくほわほわとした口調は……

「…ルメア?」

 振り返ればやはり知っている顔。私とほぼ同じ視線の高さにニコニコ顔。

 彼女はルメア。彼女もまた私と同じ教室で学ぶクラスメイト。

 ふんわり波打つ髪は白と黒のマーブル。

 フォルテと同じに角があるけれど、彼女のは三日月の様に反っている。

 私よりも数段豊かな身体は、丑人タウラスの女性の特徴。

 彼女は丑人タウラス。半牛の獣魔ミノタウロス族を先祖に持つ一族の生まれ。

 

「フォルテだけなく、ルメアまで……」

 なんで?と首を傾げる私に、二人は口を揃え答えました。

「「通りすがったら寂しそうなシルファの後ろ姿があったから」」…と。

 私、そんなに寂しそうに見えたのでしょうか?

 

「ま~いいからいいから~」

「えっと、あの…?」

 何がいいから?なのと聞くよりも先、あれよあれよと言う間に。

 前と後ろをフォルテとルメアに挟まれた隊列に。前後で無く左右でもいい気が?

 

「これでシルファの防御は完璧ね?」

「だね~じゃあ食堂に行こうか~」

 頷き得心の笑みを浮かべるフォルテとルメア。

 少し恥ずかしいけ状態だけど。二人が満足しているし、これはこれでいいかな。

 

 そうか、私はこれを求めていたのかもしれない。

 名も知らぬ子達からの視線が気になってしまうのは

 名を知る誰かが側にいないから。

 二人が言っていた様に、私は寂しかったのかも?

 かもでなく、そうなんだ。だから、口から自然と言葉が出ていました。

 

「二人ともありがとう……」

 

「シルファはかわいいな~」

「ふふっ、私もシルファみたいな子になりたいな」

 あれ?恥ずかしい言葉が返って来ましたよ?それに撫でられてるし?

 ………

 ……

 …

「むぅ……」

 窓際の眺めの良い席なのに、こんな声が出てしまう。

 でも、こんな声が出てしまうのには、それなりの理由がある。


 あの後、私はフォルテ達と共に、何事も無く食堂へと辿りつく事が出来ました。

 コロネ達と合流し、フォルテ達を交えて賑やかな昼食が始まる

 …はずでした。つまり、そうはなりませんでした。

 

 理由は私の前に座る人物のせい。

 いきなり「むぅ」なんて言ってしまったのもこれが理由

 その人物はブラウンのサイドテールを揺らしながら、ニコニコとしている。

 彼女の『立場』的には、私の現状は楽しいのかも?それは考え過ぎ?

 

 私の前に座っているのは、コロネやフォルテ達でも無く、お姉さまでも無い

 新聞部の部長さんこと『ニース』先輩。

 フォルテ、ルメアと共に校内食堂へやって来た所を、彼女に捕まってしまった。

 

『シルファさん発見!丁度、話しをしたかったんだよね。こっちこっち』

 比喩でも喩えでも無く、正に捕獲。

 

 横目で少し離れた席に座るコロネ達の方を見れば、コロネは私の方を見ながら耳跳兎ミミトビウサギの様にドーナツをかじかじとしている。

 クロワは面白がって、コロネが食べ終える度にドーナツ渡してるし。三個目?

 

 美味しそう。私も甘い物が欲しい、お腹が食べ物を欲しがっています。

 そもそもお腹が空いたから、目立つのを我慢して校内食堂へ来た訳ですし?

 なのに。なぜ、こんな事に……

 せめて喉を潤そうと果実水を一口飲むのだけど。

 それを切欠に言葉が嵐の如く襲ってきました。

 

「さて、いいかな?まぁまぁそんな顔をしないでほしいな?

 もしかして私に対してあまり良い印象を持っていなかったりする?

 そうだとするなら、その印象を改めて貰えるように私は努力を惜しまないから。

 ほら、私的には…むしろ学園かな?貴女は注目の存在なんだから、ね?」

 

 相変わらずのキツツキの嘴トーク。そんな一気に話されてもどんな言葉を返せば良いのかさっぱりです。

 それに周囲の注目をどっと集めてしまっています。せっかくフォルテとルメアが護ってくれたのに。

 でも、聞く事は聞かないと。

 

「ニースさん、注目ってどう言う事なのでしょうか?」

 大勢の視線を受けた事で、私が生徒達の注目を集めている事は知っている。

 でも、ニースさんの言葉を聞くと、視線に含まれる意味が私が思う所と違う気がしてならない。

 

「いい質問!貴女は魔法を使えなかった事に劣等意識を感じているのかもしれないけど。それは違うの!

 むしろ皆が貴女に思う事は『大きな期待』シルファさん!貴女にこれから何が起こるのかって言う期待なの!」

 

 期待?私に?

 ニースさんの口から出た言葉に私は戸惑うしかありません。

 つまり、皆、私がこの先どうなるか気になっていると言う事ですか?

 しかもですよ?彼女の言葉から察するに、皆が期待しているのは私の『成功劇』

 待って!待ってください。

 確かに私は諦める気は無いけれど、だからと期待を私の肩に大量積みしないでください。

 彼女に言ってもどうにもならないし。一体どうすれば?

 鉢の彩装魚ドレスフィッシュの様に口をぱくぱくさせる私に、先輩はさらに言葉を続けます。

 

「うーん?びっくりさせっちゃったかな?

 でも、それを抜きにしても……私はシルファさんに期待しているの。

 貴女はこれから何かをする人だって、ね?」

 

 ね?と言われても困ります。何かって何をですか?

 ………

 ……

 …

「はぁ、期待かぁ……」

 溜息しながら呟いて、私は魔法の矢(マジックアロー)を放った。

 魔雫マナの塊が水母の様にふらふらと飛翔し、丸太の的に当たるとぽんっと音を立てた。

 意識の集中を出来ていないせいで、魔法の形成が不安定になっています。

 これでは特訓になりません、無駄に魔力を消費しているだけ。

 

「…こんなんじゃダメ……」

 深い呼吸を何度か繰り返すと、意識を集中する。

 今使おうとする魔法のイメージを練りながら固めて行く。

 魔法の矢(マジックアロー)魔雫マナの矢を放ち、命中させる……

 

『私はシルファさんに期待しているの』

「うにゃー!」

 私は雄たけびと共に両手を上げた。

 上げた手の先から塊にも満たない魔雫マナが二つ宙に放たれ

 ぷしゅっと空気が抜ける様な音を振り撒いて消えました。

 

 食堂でのニース先輩の言葉が頭から離れない。

 皆に協力を得ての特訓にも身が入らないし、一人になっても同じ。

 それでもと特訓を続けるのだけど、この有様です。

 

「ああ、もう!ニースさんが余計な事を言うから……」

 腕を振り降ろしながら嘆くと、自分の頬を両手で二度叩いてみる。

 痛い。痛いだけで心のもやもやが晴れてくれない。

 

 期待なんてされても困る。今の私は、私の事で一杯一杯だし。

 それでも、お姉さまのお陰で前へと進む決心を固めたばかりだった。

 なのに……

 

「頭の中がぐちゃぐちゃだよ…ふぁ?」

 ぼやいた直後、何かの気配を感じ振り向いた。

 夕日?違う、炎だ、炎の塊がこちらへと飛んでくる。

 球蹴りに使う球程の大きさの炎の塊が、私に向かい飛んでくる。

 

 何の魔法であるかなんて分析している余裕はありません。

 今わかる事は、炎系の魔法で、当たれば絶対に熱くて痛いと言う事だけ。

「わわ、危ない?」当然、私は避けるのだけど。

 驚きに息を整える暇も無く声が聞こえて来ました。

 

「貴女はもっとやれる人だと思っていたのに……」

「…ライラ?」

 頭の左右で揺れる金の縦ロール、私を見据える青緑石の瞳。

 間違いなくライラです。ライラが腕組みをし私をじっと見ています。

 しかも、なんだか怒っている様な気さえします。

 

 もしかして、私がぼやいていた所を見られてしまったのでしょうか?

 でも、だからと彼女が怒る理由には繋がらない気も。

 もっと私の知らない理由がライラを?わからない、わからないけど。

 一つだけ分かる事があります。

 

「なのに…なのに……」

 ライラの感情が昂ぶる程、彼女の纏う魔力の濃度が濃くなって行くと言う事。

 フェア先生の様に見る事は出来無いけれど、でも魔力的に感じる。

 こんなに強く感じたのは、セルティス先生が竜を召喚した時以来かもしれない。

 私がこんな事を考えている間にもライラの魔力は濃くなって行き。

 

「…なーのーにー!」

「えっ…?」

 ライラの雄叫びと共に纏っていた魔力が弾け飛びました。

 頬に僅かな衝撃を感じ、遅れてやって来るのは炎の嵐。

 拳サイズの火の玉が、蜂の群れの様に襲いかかってきました。

 

「熱い!…あれ?」

 身体に当たった瞬間、反射的に叫んでしまったけれど。

 思ったほどには熱く無いかも?具体的には熱めのお風呂のお湯くらい?

「熱く無いけど!痛い!痛いです!」

 一つ一つは小石が当たる程度の痛さなのだけど、それが続けて来るとなると。

 

「ああ、もう!わたくしが気合いを入れ直して差し上げます!」

「え?気合いって!?」

 待ってと言うよりも先に、再び炎の嵐が襲ってきました。

 あまり痛く無い事はわかっているけれど、数が多すぎます。

 ならばどうしますか?答えは逃げる…ですね。

 

「待ちなさい!」

「待ちません!」

 何が何だかわからないままに、私とライラの追い駆けっこが始まりました。

 ………

 ……

 …

「はぁはぁ……」

 日の差し込まなくなった実習場に早いリズムの呼吸が二つ。

 私とライラの呼吸だ。

 もはや、お互い魔力も体力も尽きる寸前。

 膝に手を当て立つ姿勢。これ以上続けたら魔力疲労で倒れてしまいます。

 だけど聞かないと。

 

「見ていてくれたの…?」

「何がですの?」

 私の問い掛けから間を開けてライラの言葉が返って来ました。

 うん、今のライラなら私と言葉を交わしてくれる。

 息はまだ苦しいけれど続けたい、彼女と会話を続けたい。

 そんな想いで言葉を投げてみる。

 

「私の事を気にかけてくれたんだよね?なんでかなって」

 ライラが怒ったのは私を見ていたから、なぜ見ていたのかわからない。

 お姉さま絡みの事なのか、もっと別の理由なのか。

 わからない。わからないから聞きたい、そして知りたい。

 

「それは……」

「うん」

 彼女の言葉が止まってしまった。でも会話はまだ続いている。

 だってライラの瞳はまだ私を見ているから。

 視線は何度も上がり下がりを繰り返しているけれど

 その瞳の先には私がある。だから私も彼女の言葉をじっと待つ。

 

「貴女が居なくなるのは私がこま…なんでもありませんわ」

 投げつける様に言うと、ライラは背を向けて歩き去ってしまいました。

 

 私が居なくなると困る?

 彼女が私との時間を続けたい思っている。

 そう、捉えても良いのでしょうか?

 

 だとするなら……

 

 いずれ、あの時の瞳の意味を知る事が出来るのかも?

 そんな事を思わずにはいられませんでした。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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