表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/27

第16話 不思議な道具屋さん-2

 

 暗く細い小路に靴音が響く。コツコツと靴の踵が硬い石畳を叩く音が響く。

 響いているのは私の靴音だけのはず。

 なのに、時折多く響いた様な気がしてしまう。

 気な事はわかっているが、それでも足を止めて振り向いてしまう。

 当然、誰も居ない。視線の先にあるのは薄い暗闇だけ。

 

「誰か居ますか?居るなら返事してくださーい」

 その暗闇に向け呼び掛け問い掛けてみる。

「……居ませんね?」

 返事は無い。

 暗闇の向こうから、壁の向こうから、誰かが飛び出してくる事もない。

 念のためと魔法の光球を飛ばしてみるが、やはり何も無い。

「ふぅ…おいで……」

 胸に手を当て呼吸を整えると、飛ばした光球を手元に戻した。

 おいでと言う必要は無いが、何か言わないと落ちつかない。

 

 

 私ことシルファがこの不可思議な小路を歩き始めて、少々の時間が経過している。

 前から後ろへ壁と壁に挟まれ細く見える空からは、夕日の色が消えて夜の色が見え始めている。

 空の色が変わるほどの時間歩き続けでも、道の終わりはまだ見えてこない。

 この道はどこまで続くのかな?

 ここまで分かれ道も曲がり角も無いほぼ直線の一本道。少々飽きて来た。

 

「戻るなら今のうち…だよね?」

 今なら灯り無しでも、壁伝いに進めば迷子になる事無く引き返せるはず。

 道を照らしている光の魔法も無限に使える訳ではない。

 魔力疲労が少ないと言うだけで、長時間使い続ければ疲労は溜まりお腹も空く。

 そう、お腹も空く。

 

「揚げパン食べたい……」

 私はぼそりと小声で呟いた。自分でもわかる疲れ混じりの声。

 お腹はまだ鳴ってないけれど、食べ損ねた揚げパンの事を思い出してしまった。

 砂糖の甘さとふわふわの食感そして揚げ油の香り。食べるなら揚げ立てがいい。

 手に持つには熱いだろうけど、歩き続けて冷えた身を温めてくれるはず。

 あ、想像したらますますお腹が空いて来た。

 

「うん、戻ろう!」

 揚げパンへの欲求は私の意思を変えるに十分の誘惑だ。

 くるりと半回転し踵を返すと進んで来た道の方へ、この小路の入口の方へ向く。

 表通りの灯りは全く見えない、背伸びし首を伸ばしても点ほどにも見えない。

 結構歩いてきたんだな。時間は無駄になってしまうけれど、とにかく戻る!

 それで商店街の方へ出て何か食べよう、ついでに温かい飲み物も。

 

 リーン、ゴーン……

 決意し足を踏み出した瞬間、遠くから鐘の音が響き聞こえて来た。

 重く響く音、都市の隅々にまで響く音。

 この学園都市に暮らす者なら誰もが聞き慣れている音。

 ルミナス魔法学園の時計塔の鐘の音だ。

 懐中時計を取り出し時間を確認すると針は五時を示している。

 

「今日はもう出直し…かな?」

 商店街に行って、また衣装を捜すとなると寮の門限までに戻れるか怪しい。

 そうでなくてもお姉さまに心配をかけてしまうかもしれない。

 お姉さまに心配をかける事だけはしたくない、でもどうしよう……


 私がうだうだ悩んでいる間に鐘は二回三回と鳴り響き

 そして、五回目の鐘が鳴り終わった。 

 

 ポッ

「…あ、あれ?何か光った?」

 鐘が鳴り終えた直後、遠くで何かが光った様に見えた。

 もしかして私と同じに、この小路に入り込んだ人がいるのかな?

 私と同じ学園の生徒なら一緒に進むのもありかもしれない。

 目を凝らし遠くを見てみるが、暗い星よりも暗く良く見えない。

 気のせいだったのかな? 

 

 ポッ

 あ、光った。光ったと言うより灯ったのかもしれない。

 今度はしっかりこの目で光る瞬間を確認した。

 でも、さっきの光より大きい気がする。

「もしかして…こっちに近付いてる?」

 

 ポッ

 また灯った。先よりもさらに大きい、それに良く見ると数が増えている。

 最初に見えた光の位置も変わっていない、私に近い位置で新しい光が灯った。

 また灯った。私の方へと近付きながら数が増えている。

 しかも、速度が速くなっている。これは人の歩く速度では無い。

 ただの光なのかもしれないけど、正体不明の物が近付いて来るのは怖いもので。

 

「私…逃げた方がいい?」

 答えてくれる者は居ないけれど、つい声に出てしまった。

 でも逃げるってどこへ?何があるかわからない闇の中へ?それはありえない。

 だから私がとった行動は……

 

「防御姿勢第一!」

 叫ぶと同時に私は頭を抱えその場に屈んだ。

 足が竦んで動けなかったとも言える。怖い物は怖いのだから仕方無い。

 伏せた視界に見える床が明るくなった、もう光はすぐそこまで近付い来ている。

 女神様、どうか生きてお姉さまに会えますように……

 

「うー…あれ?」

 

 何も起こらない。

 痛いも痒いも無く私の身体はいたって無事、元気に生きてます。

 つまり、お姉さまに会えます!

 あれ?そうなると、あの光は一体…何?

 

 恐る恐るに顔を上げて直ぐに納得した。壁に光の玉が張り付いている。

 道の彼方からここまで、ここから進む先の彼方まで、等間隔に光の玉が並び設置されている。

 街燈だ。この学園都市の夜道を照らす魔力の灯り。学生達の安心安全の要。

 

「はぁ…もう!驚いて損した!」

 口から大きな溜息と愚痴が出てしまうが仕方が無い、本当に怖かったのだから。

 どうせ点灯するのなら、もっと早くに点灯して欲しかった。

 多分、五時の鐘を合図に魔法が発動する様に術式を組んであったのだろう。

 でも納得いかない。

 

「…いいか、明るくなったし先に進んでみよう……」

 戻ると決めていたけど撤回、このまま戻るのはなんだか悔しい。

 こうなったら意地でも先に何があるのか見てやる!

 立ち上がると私は再び歩き始めた、勿論戻る方向では無く進む方向へ。

「でも、この明るさが最初からあれば良かったのになぁ」

 もはや光球を使わなくても十分に明るい、小路の先に誰か居たり何かあれば分かる位にはなった。

 最初からこの街燈が道を照らしていれば、あんなに怯える事も無かったはず。

 それを考えるとますます悔しい。けど、その一方で発見もある。

 

 壁だ。

 光を得た事で平坦と思っていた壁が、実は表情豊かである事が分かった。

 古び破けた歌劇の張り紙、魔法薬の販売を宣伝する張り紙。

 それらがいくつも並び張られていた。

 

「あ?この張り紙、私が生まれる前のだ……」

 歌劇の開演予定日を見ると、四十年程前の日付になっていた。

 この張り紙だけではない、良く良く見れば他の張り紙もかなり古い物ばかりだ。

 新しい物でも三十年前、歴史的な資料価値はありそうだけど。

 なんでこんなに古い物張り紙ばかりなのだろう?謎だ。

 この学園都市は広いし、開発につれて使われなくなった道なのかな?謎だ。

 

「…先に進めば答えもわかるかな?」

 わからなければ学園の図書館で調べてもいいし、セルティス先生に聞いてみるのもいいかもしれない。

 とりあえずは先に進んでみよう、この先にきっと何かがある。

 

 再び小路に靴音が響き始める、コツコツと靴の踵が石畳を叩く音。

 大丈夫、聞こえるのは私の音だけ。だから私は小路をどんどん進む。

 街燈の列と古びた張り紙の列は途切れる事無く続いている。

 周囲に何があるかわかるってありがたい。

 危険があれば直ぐにわかるし、気になる物を見つける事も出来る。

 

「竜の姫と人魚の姫の歌劇…気になる、後で原作が無いか探してみようかな?」

 途中何度か気になる張り紙を見つけて立ち止まる事もあったが。

 ようやく終点らしき場所へ辿りつく事が出来た。

 

「あ、ここって……」

 具体的に言うと、急に視界が開けた。

 壁が途切れ四方を建物の壁に囲まれた中庭の様な場所へと出た。

 見上げる夜空は切り取った様に四角く、街中なのに星達の煌めきは強い。

 なんだか絵本の一場面に迷い込んだ様な気さえしてしまう。

 そう感じてしまうのは、そこに佇む『それ』の存在があるから。

 

 歩いて来た小路は私を『それ』と出会わせるためにあったのかもしれない。 

 そうだ、きっと私はここに来るため歩いて来たんだ……

 

 うろこの屋根をかぶり、四角い眼鏡を掛けた様に見える窓

 曲がり伸びた煙突からは、白い綿雲の様な煙が夜空へと登って行く。

 木の扉にかかった札は『それ』が何であるかを教えてくれる。 


『それ』とは店、星達の輝きを受けその『店』はあった……

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ