秋なんだなあ
わたしにとってのヘンな時間は、周囲にとっては普通の時間。そのヘンな時間は、まだ人の活動があって、けれど、その人たちは家路を急ぐ。だから、どことなくイライラしているような、あせっているような、話しかけたらいけないような、どこかトゲを忍ばせているような。表情もなんとなく怒っているようで、わたしは、怖くてしかたがなくなる。自分が歩いたことで鳴ったカサッという枯れた葉っぱの音にさえ、弱ったココロは、おびえてしまう。
枯葉かあ
秋なんだなあ
―今年の夏は、三日も、エアコンを動かしてしまいましたわ
はっきりとした口調で、けれど、宙をおぼろ見ているような、そんな表情で、あのとき、マナモは、言っていた。いつのことだったかな。エアコンを我慢したせいで、暑さにやられたかな。一瞬、思ったけれど、前からこうだったなあと、思い直したんだった。いつのことだったかな。
そして、
―そのまま食べていた食パンを、焼いて食べるようになったら秋かしら、トースターから流れてくるあの香りは、秋の日にこそ、ふさわしいわ
とも、マナモは、言っていたなあ。いつのことだったかな。
秋なんだなあ
買いものおわり、すこし弱ったココロを抱えた家までの道のり。香ってくるのは、さんまの焼けたにおい。
秋なんだなあ
さんまの焼けたにおいでも、しっかり秋を感じられるんだよ。今度、魚嫌いのマナモに、教えてあげよう。




