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28:最近の力なき人の対処


「ひゃん」


 愛三が、風呂場で身体を洗ってもらっていたのだが、その相手が裏鬼門御三家の令嬢だった。一緒にお風呂に入って、マオと頼光とツバサは念入りに愛三の身体を洗っていく。そうして身の浄めが終わると愛三は風呂に入った。都合上女子の身体だ。湯船におっぱいが浮いて、ぷよぷよと跳ねていた。


「なんで男じゃないんですかー」


 とても残念そうにツバサが言うが、愛三としても男子の裸をかしまし娘に見せるのはちょっと勇気がいる。女子同士だったら百合で済む。


「ていうかバフって何? スキルポイントって何? ゴールドって何?」


 防水加工の完璧なスマホを風呂まで持っていって、これ楽しいですよとインストールされたゲームをやりながら、そもそもゲームというものを愛三はしたことが無かった。しなくてもいい環境にはいたし、できてどうのでもない。


「このデスティニー/ブランドオーバーは世界を救う偉大なる旅路のですね……」


 信者というか。デスブラオタクである猿飼部頼光が、ソシャゲの良さをとくとくと説明している。そもそもゲームというものを知らない愛三にはハテナでしかないが。


「これでコマンドカードを選んで戦うだけです。HPという数値があって、これを削り合うのが目的ですね」


「ほー。はー」


 画面ポチポチ。そうして仮想キャラを倒しながら、この世界の娯楽を知っていく。


「……ご主人様。……拙と一緒に希望戦士ランダムシードを見ましょう」


「希望戦士ランダムシード?」


「……希望戦士ランダムの一番世界観に入りやすい作品です。……これを見ればご主人様もランオタ間違いなしです」


「ランダムねー」


 湯船につかって、スマホをピコピコいじりながら、ついでにタブレットでアニメを見る。彼氏のいないOLがやってそうな暇つぶしだった。


「これロボットか?」


「……主役期のストライクランダムですね。……換装をすることで全局面的に対応できる万能機となっており」


 マオは結構ランオタだった。


「人の形をしているのは相手が武士道防御シバリーディフェンスを持っているからか?」


「……いえ、……とあるギミックで有視界戦闘しかできないので。……効率を求めて人体に辿り着いたと言いますか」


「なるほどねー。お。ビームが飛んだぞ。ビームで剣を作る? そんな発想ありか?」


「……アニメの世界ではありなんですよぅ」


「と、このようにこの世界には楽しいものが幾らでも転がっております由」


「とりあえず希望戦士ランダムは最初から全部見るぞ。俺の中の何か魂の原型が引かれている」


「……では全部ダウンロードしておきます。……一緒に見ましょう。……ご主人様」


「おう。しくよろ。で」


 そこで広い浴場。愛三とマオと頼光とツバサ絵で入ってのんびりしている。


「鬼に襲われていた人が殺鬼人に襲い掛かるって問題についてはどうなってる?」


「今のところはどうにも。おそらくですが誓約呪詛で殺鬼人を襲うように契約を交わして、その実行をしているのでしょう。その誓約呪詛……というのが気になるのですけど」


 ツバサとしても六波羅機関の教職をやっているだけあって、生徒の保護には動かざるを得ない。本職である公認呪術師が庵宿区に集まっているので、カーステラー派の人間が何かを企んでいるのは火を見るよりも明らかだが。だがだからといって日本の治安維持である殺鬼人を殺して、その先の未来をどう見ているのか。そこから疑念は出る。


「ちなみに一般人って鬼や化に襲われたらどうすんの?」


 呪術は使えないだろう。


「あー」


 で、全員温まるまで風呂に浸かって、それから上がる。もちろん愛三は三人から身体を拭いてもらい、白い髪にドライヤーを当てられる。丁寧に髪を乾かしてくれるのは頼光だ。マオはブラを装着してくれて、それからツバサがショーツを履かせてくれる。そうして至れり尽くせりをされている愛三だが、一応寮部屋だ。とは言ってもマオと頼光があまりに呪術師として強すぎて、特別扱いになり、寮生活とは言えないようになっている。


 寮の部屋ではあるのだが、一般的に建築された一人部屋を六つぐらい壁を破壊して繋げ、一つの広い部屋にしてしまった。


 それが出来るだけの実績をマオと頼光は上げていた。そして寝室。風呂場。着替え。リビング。ダイニング。キッチン。などなど、一軒家でもそこまで充実して無いぞというスペックの部屋を作ってしまった。それもこれも愛三に快適に生活をしてもらうためなだけに。もちろん六波羅機関側も承認しているので文句を付けられる人間はここにはいない。マオが差し出したコーヒー牛乳を飲んで、プハァ! と至福の吐息をはいて、それから議論は進む。


同類ドールです」


「ドール?」


 そういえば、愛三は後天呪詛にあまり興味を持っていない。先天呪詛『陰陽二兎インフィニット』が強すぎるのだ。


「いわゆる安倍晴明が構築したマニュアル型後天呪詛……千事略決アベノミクス。これによって祝詞を唱えて呪詛を練ることで人は魔術を使えるようになりました」


 それは知っている。実際に先天呪詛を持っていない人間でも呪術を使えるようになったのが今現在での状況だ。それでもエギオンをホロウボースに変換するのが難しくて挫折するのも事実で。


「で、同類ドールは丑の刻参りの逆をするパターンです」


「丑の刻参りっていうと。藁人形に髪を結って釘を打ち付け~みたいな?」


「ええ、それとは別に同類ドールは形代に髪を縫い付けて、自らのダメージを形代に押し付けます。そうすることで一回だけ死を回避できる。そういう風に造られています」


同類ドール……ね」


「ちょっと値は張りますが、東京では普通ですよ。金銭的に高価であることに目をつぶれば、自らの死因を形代に押し付けられるというのは画期的ですから」


 なので一般市民も特に無抵抗で死ぬわけじゃない。一回だけは死を回避する方法がある。それができるが故に、後天呪詛なのだから。


「ちなみにボクたちにも配布はされていますよ。ボクは使っていませんけど」


「さすがに頼光はな」


「……拙も……」


「私は。まぁ一応」


 円転滑脱。摩擦を無効化して無敵となるツバサだが、呪術干渉には不得手だ。その意味で防御手段を持つのは確かに理に適っている。


「さて、そうすると。俺はこのデスティニー/ブランドオーバーをプレイして超最強キャラをガチャで排出しながら、伝説のアニメ希望戦士ランダムを宇宙世紀から全て視聴しなければならないわけだな」


「そう相成ります」


 まったく良くズレているのだが、それを止める気概を誰も持ち合わせていない。


「じゃあまずは宇宙世紀を全部見通すか。アニメマラソンで」


「……解説は任せてください……ムーブスーツの知識はありますので」


『こいつ動くぞ……!』


 から始まる希望戦士ランダムを視聴する。ソシャゲのログインボーナスを理解しつつ、キャラ育成に努め、ガチャを回して新キャラを得る。それと並行してランダムを見る。


「ふむ。相手側の事情もよく分かるな」


「……ツャアにだって……譲れない復讐があるのです」


「それが故に仮面をかぶっていたと」


「……これが次のZに繋がっていき」


『男で何が悪い!』


 次作の主人公は愛三から見ても精神が不安定っぽかった。まるで呪術でも使えるような……というとムーンライズに失礼なのだろうが。


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