表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/56

契約外 ーブリジットー

パーティとはどんなものか、雰囲気を味わうために下位貴族のパーティに参加したい。

そう言えば公爵夫妻は反対はしなかった。


下位貴族のパーティは成人した令息のパートナーなら社交会デビューしていなくても参加できる。

確かに勉強になるわね、とブリジットを綺麗に着飾り送り出してくれた。


しかし、思惑ははずれた。


セドリックの必死のアプローチをそれを無下にする嫌な女。


それを演じたはずなのだが、無邪気なブリジットがそれを演じたところで周りの目は微笑ましかった。


「どうしてうまくいかなかったのかしら……」


ブリジットは落ち込んでいたがセドリックはそれでもよかった。


ブリジットに悪女になってもらって少し評判を抑えようと思っている、とアリスに言うと、ほっとしたような顔をして喜んでいた。

セドリックはアリスの味方だとアピールできただけでも成功だと思えていた。




それからもブリジット人気は上がる一方だった。


ゴスルジカ公爵夫人に届くお茶会の招待状には必ずブリジットも一緒にとの一文が書かれているのが当たり前となった。

夫人も自分がマナーを教え、社交界での振る舞いを教え育てたブリジットが評価されるのは鼻が高かった。


そうしてブリジットが公爵家に来て五ヶ月が経ちそしてあと1ヶ月でいよいよ結婚となった頃だった。


アリスがまた下位貴族のパーティに行って欲しいと言ったのだ。

なんでも下位貴族のあいだでブリジットの悪女の噂が広まりつつあるらしい。

それをパーティに参加して真実だと知らしめて欲しいと言われたのだ。


セドリックは迷った。

それなりに噂になったのならそれでいいではないかと思った。


しかしアリスは懇願した。

セドリックも恋人として出来ることはやってあげようと、またパーティに参加することにしたのだった。

ブリジットもアリス様の願いならと二つ返事で引き受けた。


しかしこれがブリジットの運命を変えることとなった。


パーティ会場に入場した瞬間、明らかに前とは違う雰囲気にブリジットは怖気付きそうになった。

必死で繕い、悪女の演技をしようとも周りの冷たい視線がブリジットを容赦なく刺すのだ。


あれだけ練習し出来ていた淑女の笑顔もとてもじゃないが繰り出せそうにない。

かろうじて扇子で顔を隠した。


セドリックが何か言っているが遠く感じた。


セドリックもブリジットに夢中になっている演技をしつつもブリジットの表情が抜け落ちたことにマズい、と思っていた。

周りの貴族たちのブリジットを見る視線は悪意に満ちて軽蔑するような眼差しを向けている。


(一体どうしてここまで……)


訳がわからぬままふとブリジットに視線を戻すともう顔色は真っ青になっていた。


「べべちゃん、休憩室の方に行こうか。」


小さくセドリックが声をかけると弾けたようにブリジットは会場から捌けた。

そしてそれを何故か数人の男たちが追っていく。


(いけない)


セドリックも慌ててその後を追う。


すると男たちに引き止められてるブリジットの側にすばやく駆け寄ると聞こえてくるのは男たちの下卑た誘いだった。

カッとなったセドリックが「僕の婚約者に何の用だ」と間に割り込むと男たちは曖昧な笑顔を浮かべ去っていった。


そのままセドリックは顔色をなくしたブリジットと共に馬車を呼び戻し公爵邸に帰った。

早い帰りに公爵家の皆は驚いていたがブリジットの顔色を見て慌てた。

そしてブリジットは部屋に入るやいなや吐いて倒れ公爵邸はちょっとした騒動となった。


「あまり公爵家に対していい感情を持っていない下位貴族がブリジットの悪評を流していたようだ。」


公爵夫妻に事情を聞かれたセドリックはそう説明した。


二度と下位貴族のパーティなど行くな!と公爵は怒り狂っていたが、ブリジットはもう思い出したくないだろうと怒りをそっと治めることにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ