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悪女と思い込み ーアベルー

「マリーは支離滅裂で何を言っているのか分からなかったな。」

「ええ、そうでございましたね。」


私が離れに行くと、カトリや使用人からの聞き取りは終わっており、丁度地下牢でセバスがマリーの聞き取りをしている途中だった。


しかしマリーは興奮しているのか、何が言いたいのか分からぬことを喚いているだけだった。

そのため聞き取りは中断し、本邸の私の執務室に戻ってきたのだ。

そこでセバスからの報告を聞くことにした。


「カトリと使用人の話だけで事は足りるかと存じます。報告書も作成いたしますが、ざっくりとお話しいたしましょう。」


そういうと聞き取ったメモだろう。

パラパラとめくる。


「ブリジット様の予算を使っていたのはやはりカトリとマリーでございました。最初はマリーだけが使っていた様なのですが、ブリジット様が使ってない予算を使っているだけだから問題がないと言われカトリも使う様になったそうです。」


「なぜそうなる?」


カトリはそんな浅はかな女性だったのか?


「アベル様とマリーが恋仲だという話を信じたという事でございました。」


何の話だ?

突飛な話すぎて眉根を寄せる事しかできない。


「他のメイドには声をかけないのに、自分だけにはよく声をかけてもらえてるとマリーが言ったそうでございます。」


「カトリの娘だから何度か声をかけただけだぞ。」


「ええ、ですがマリーはそれを特別だと感じた様でございました。そうしてブリジット様とマリーが揉めた日。あの時アベル様はブリジット様を非難しましたが、マリーの話は信じ気遣いました。その事で自分は婚約者よりも大事にされていると思った様です。」


確かに私はブリジットからは話を聞かなかった。

しかしだからと言って


「どうしてそうなるんだ?」


「あの時ブリジット様は怪我をされていたそうです。」


息を呑んだ。


「マリーの手がブリジット様の顔に当たり、目が腫れ鼻血が出たそうです。

だからこそ態々2人でアベル様に謝罪に訪れたとカトリは申しておりました。ですがアベル様はブリジット様から話を聞きに行く様子すらなかった。その事でマリーはすっかり舞い上がり、ブリジット様は嫌われているが自分は大事にされている。だから自分は婚約者の予算はつかっていいのだ、部屋も使っていいのだと考え、カトリもその考えに乗った、と言う事でございました。」

まあ、都合のいい話だけ信じただけでございましょうが、と続ける。


「部屋……?」


いつの間にか口の中がカラカラだ。


「ブリジット様の部屋はカトリとマリーが使っておりました。ブリジット様が使っておられたのは寝室だけだった様でございます。」


言葉など出なかった。


「ブリジット様とマリーが揉めた時、私もカトリに聞いたのです。ブリジット様は大丈夫だったのかと。カトリはきちんと対応しましたと申しました。アベル様に詳しく聞かれなかった事で娘の失態を誤魔化すことにしたのでございましょう。私もカトリが対応したのなら、とその時は納得いたしました。」


言葉に詰まった様にセバスは黙った。

しかしすぐ口を開く。


「今回のことは私にも責任がございます。ご主人様からなんらかの処罰を受けることになるでしょう。」


私は愕然としていた。


どうして


どうして私はブリジットも怪我をしていると思わなかった?

あの簡素な寝室をみてなぜ違和感を感じなかった?



彼女が悪女だからだ。



悪女は浪費は当たり前。

悪女は理不尽に人を貶めて当たり前。



わかっている。


少しでも交流をもっていればこんなことにはなっていなかったんだ。


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