プロローグ
「ブリジット=バールトン。あなたを愛する事はない。」
ああ、ようやく言えた。
私が彼女に気があるなどと勘違いされては困るからな。
男が誰しも自分に落ちると思わないでもらいたい。
彼女は寝衣を身につけ何でもない顔でベッドに座っている。
「……」
彼女は黙っていた。
私がこんなことを言い出すとは思わなかったのだろうか。
契約とはいえ上手くやろうと言い出すとでも思っていた?
ありえないな。
目の前の彼女は14歳にしてこれが二度目の結婚。
こんなあどけない顔をしてとんでもない悪女なのだ。
一度目の結婚は私の友人だった。
彼女に夢中だった彼に、私を次の結婚相手として紹介させるという鬼畜っぷり。
清純そうな顔をしているのがまたタチが悪い、とはよく言ったものだ。
私もそのことを知った時には腹も立ったものだが、こちらにも利がある結婚だと割り切ることにした。
「当初話した通り2年間の契約婚だ。離婚後は十分な慰謝料も払おう。ただ、白い結婚などと主張されてはこちらも面倒だ。一晩だけ付き合ってもらうよ。」
やはり彼女は何も言わない。
「今更純潔でもないんだ、さっさと済ませてしまおう。」
今度こそ何か言おうとしたのか開こうとした彼女の口を塞ぐと、ベッドに傾れ込んだ。
初夜だというのに腹立たしい気持ちになる。
私だって悪女と知る前は契約なんて結ぶ気はなかった。
政略といえど大事にしようと思っていたんだ。
なのになぜこんな事になったのか。
それは半年ほど前に遡る。