7(酒場)
そうして時間は過ぎていき酒場はピークを迎えていた
「エール五つ、ソーセージの盛り合わせ二つ、ポテトサラダ三つ入りました」
「エール三つ、フィッシュアンドチップス三つ、チーズ三つ入りました」
短時間に二つの注文票がセリーナからキッチンに渡された
「取り合えずエール八つ持っていて」
レンは慣れた手つきでジョッキにエールを注ぐ
調理ではいくつかの食材を切るだけでなく、出来合いの料理は盛り付けたりするようになっていた
マスターは酒場がピークなこともあり調理に手いっぱいのようだ
「ポテトサラダとチーズ三つずつ持っていて、セリーナ忙しいけど大丈夫そう?きつかったら適当に休んでね」
「誰に言っているんですか、私は元騎士団長ですよこのぐらいの忙しさ朝飯前です」
セリーナは得意げに笑みを浮かべながら商品を持っていく
運んでいる途中ではお客さんとコミュニケーションをとり笑みをこぼしていた
なんかセリーナ楽しんでそうだな、俺といた時も笑っていたとは思うけどなんかこっちのほうがいい感じな気がする
そんなこと思いながらセリーナを眺めていると一人の客がセリーナの腕を引いた
「お姉ちゃん、彼氏とかいるの?てかこの後暇?」
一人の飲んだくれのおっさんがセリーナをナンパしているようだった
セリーナも困ってそうだなここは俺が一肌脱ぎますか、ちょっとおもしろそうだし
レイはこぼれそうな笑みを抑え真剣な顔を作り男に近づく
「俺の女に手出してんじゃねぇよ」
レンは男の腕をつかみ決め顔とイケボを用意て男に言った
「なんだお前やんのか!!」
男は酒が入っていおり沸点が恐ろしく低くなっているようだった
いや、レンの決め顔とイケボが人を馬鹿にしているようだからかもしれない
「レン、私はあなたの女ではありません」
セリーナの鋭い言葉がレイを刺し、レンには酒場全体から痛いやつを見る視線が突き刺さった
「セリーナさん、ここは合わせてくださいよ」
レンは引きつった笑顔で言った
「でもあなたの彼女ではないので」
「なんだお前彼氏じゃねぇのかよ、出しゃばってんじゃねぇぞ!」
そういい男はレンに殴りかかる
「はい、そうですか」
レイは焦ったような声とひきっつた笑顔をしているが避け方には余裕があるようだった
てか今のってダブルミーニングじゃね気持ちー。でも、出しゃばるからなおっさん
レンは男のこぶしが当たらないよう男が振るうタイミングに合わせて一歩下がり相手のリーチに入らないように立ち回っていた
その結果男のこぶしは全く当たらず男は疲弊していくのが目に見えた
その動き華麗でまるでショーのようだった
そのことから酒場の観衆は盛り上がりを見せていた
「おっさん一発も入ってねーぞ大丈夫か」「それにしても、あの兄ちゃんの身のこなしは綺麗だな、衛兵かなんかなのか」
おっさんは疲れたのか息を挙げながら立ち尽くしている
「おっさんも疲れたでしょ、もう座りなよ」
「うるせぇ!」
そう言って男はまたレンに殴りかかる
「やめんか!」
声と同時におっさんの横から拳が飛んできた。そして、次の瞬間おっさんは店の外まで飛ばされ先までおっさんのいた場所にはマスターがいた
やっぱ早いなこのマスター巨漢なのに目で追うことしかできない避けようにも体は間に合わなそうだ
これが魔力による身体強化なのか?
レンはそんなことを考えながらマスターの動きを分析していた
「ホールが騒がしいと思ったら、殴り合いをしていたとはどういうことだレイ」
マスターの声と同時に酒場は少し冷え込んだ
「あのお客さんがセリーナにちょっかい出してたから注意したら殴りかかってきた感じです」
レンはまじめに事の経緯を話した
「あの決め顔とイケボの件なしかー兄ちゃん」
酒場の観衆が野次を飛ばしてきた、それと同時にレンの目は泳ぎ始めた
「決め顔とイケボどういうことだ言ってみろレン」
マスターは鬼のような目つきでレンを問い詰める
「まぁー、止めるときに面白半分で「俺の女に手出してんじゃねぇよ」決め顔とイケボを添えて言ったりしたかなー、いって」
「止めるつもりがことを大きくしてどうするんだい」
マスターのげんこつとともに叱責がレンに入った
「すみません」
それにしても相変わらず早えな、これに関しては目で追えねえぞ
でも今回もそんなに痛くなかったな。てことは、マスターそんなに怒っていないんじゃないか。
そんなこと思っているとマスターはおっさんのテーブルに向かった
「あんたら、お代払ってもう出な。あとあいつの介護ちゃんとしていけよ」
「わかってるよ、迷惑かけて悪かったな」
おっさんの仲間たちはバツの悪いように言い、お代を置いて帰っていた
「それじゃ、あんたら仕切り直してジャンジャン注文しな!」
マスター声でそれまで少し冷えていた酒場の雰囲気が盛りなおした
レンたちは元の仕事に戻っていく
「あんちゃんさっきのすごかったね、あんちゃんなら衛兵にも入れるんじゃないか」
レンがキッチンに戻る途中白いひげ携えた糸目のハゲのおじさんに言われる
「そんなことないですよ」
レンは謙遜しているが笑みはこぼれ少し上ずった声でいった
「あんまり調子に乗るんじゃないよ」
キッチンのほうからマスターの冷たい声がレイの背筋を伸ばした
「わかってますよ」
そういってレイはそそくさとキッチンに戻った
そんなこんなで時間は流れたいき閉店の時間となった
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「今日はもう店閉めるからみんな帰りな」
ラストオーダーも終わりそろそろ朝になる頃マスターが店は閉じようとし始めた
店にお客さんはもう数人となっており彼らもその言葉とともにスムーズに帰っていた
「あんたたちはもう寝な。今日はいろいろ疲れただろう階段上って左の部屋を二人で仲良く使いな。階段はキッチンの奥にあるから、あとキッチンにあまりの料理があるからそれも持っていきなさい。ロト、アンタの寝る場所はないからな」
「わかってますよ。それじゃ、お二人さんまた明日」
「おう」「またあした」
ロトはレンとセリーナに挨拶をし酒場をあとにした
レンたちがキッチンに向かうとそこにはあまりものだけではなく、レンたちのために改めて作ったような料理もあった
いいマスターだな。それにしても、この店二階あったんだ。てか、セリーナと相部屋だとテンション上がっちゃうな
「変なことすんじゃないよ」
マスターが目を光らせレンに言った
「するわけないだろ」
テンション上がるっていても手を出す気はないよ
きれいな女性と一緒の空間で寝れるだけで幸せなものですよ
確かに、あんなことやこんなことしたい気持ちはありますけどね。やるかやらないかは別なのです
そんなことを思いながら二階に上がり部屋に入った
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部屋には簡素ベットが二つあるだけの質素な部屋だった
「先はありがとうございました」
セリーナが微笑みながら言った
「別にいいよ、なんか逆に大事にしちゃった感じがして申し訳ないよ」
「確かにそうかもしれませんが、レンに助けられたことはとてもうれしかったです。それに助けられる側に回るというのは少し新鮮で楽しかったです」
セリーナは嬉しそうに感傷に浸りながら語る
その表情は酒場では見せたことのないような笑顔で健やかな気持ちにさせた
なんか、いいな。自然というか喜んでるのがよくわかる。よし、これからもセリーナを助けるぞ
「次からああいうときは俺が彼氏ってことにして丸く収めない?」
「それは嫌です。私はレンの騎士なので」
「あぁそう」
鋭い視線がレイを刺しセリーナは決意のある表情をしていた。それに、レンは少し物怖じした
なんか、すごい覚悟を感じるな
「そういえば、最近は魔物がすごく活性化していて、そろそろ冒険者に特別依頼が入るようです」
セリーナ酒場のホールで聞いた情報を共有し始めた
「特別依頼なんだそれ」
「町から冒険者協会に依頼を出すことのことで、冒険者は報酬とランクポイントが豪華のため多くの人が参加するようです」
「それってGランクでも参加できるの?」
「Gランクの冒険者にも偵察や情報収集というような役割を与えられそれによって報酬とランクポイントが得られるようです」
「なるほど」
ゲームとかでいうところのイベントみたいなものかある一定期間に開催され報酬が豪華といったところか。今はお金とランクポイントどっちも欲しいしちょうどいいだろ
「いいね!やってみようか」
レンの言葉からはわくわくがこぼれていた
「そうですか。では、明日は郊外に出て少し鍛錬をしましょう。今のままでは、運悪く死んでしまう可能性があるので」
セリーナは真面目に言ってきた
「わかった。それじゃ俺は寝るから。おやすみ」
「おやすみなさい」
セリーナの微笑みを含んだ言葉はレンを癒しレイは深い眠りについた