6(依頼)
そうしてレンたちは掲示板の前で依頼を眺めていた
「金貨が報酬になるのは冒険者ランクがBランク以上の依頼で、討伐系の依頼は冒険者ランクがEランク以上か。てか、Aランクの依頼は見当たらないな。まっ、俺たちの冒険者ランクはGで地道にやっていくしかないか」
依頼を眺めていると全体的に討伐系の依頼が報酬がいいようだった。そして、報酬の隣には冒険者ランクポイントというものがあったどうやらこのポイントによって冒険者ランクが決まるようだ。GランクからFランクに上がるにはGランクの冒険者ランクポイントを百集める必要があるようだ
全体的にGランクの報酬は銅貨数枚でランクポイントは十が一番多く、いくつか二十のものもあった。仕事内容は主に雑用が多く現世でアルバイトがやるようなことが仕事となっている
「一週間酒場の手伝い二人求む。衣食住付き銅貨七十枚ランクポイント三十か、一週間消費することになるがこれ結構おもしろそうだな」
元の世界でアルバイトはやったことあるが飲食業は大変と聞き避けてきた。しかし、興味はあった一週間であれば頑張れるのではないだろうか。それに、衣食住付きでちょうど二人募集。まるで、俺たちのためにあるように感じた
「セリーナこれにしないか」
「酒場の手伝いですか」
セリーナは首は少し首をかしげていた
「まず、衣食住付きで報酬もそれなりにいいと考えた。それに、酒場ということでいろいろな情報を聞けると思う。セリーナはこの町のことそれなりに知ってそうだけどそれは五百年前のことだから、最新の情報知っておくべきだと思うんだよね。そして最後に、セリーナはきれいだから居酒屋がにぎわってボーナスがもらえるんじゃないかと思ったんだよね」
「最後のはないと思いますが、最初のほうはとてもいい考えだと思いました。意外と考えているんですね」
セリーナ平然を装っているが少し耳が赤くなっているのが見て取れた
実際は考えてなくて、とっさにそれっぽい理由並べただけだけどね。それにしてもかわいいなセリーナ
「それでは向かいますか、ロトこの酒場に案内してくれ」
「俺は監視であって案内人じゃねーぞ」
先まで自問自答していたロトは勢いよく立ち上がりこちらに向かってきた
「別にいいだろ」
ロトは悪態をつきながらも道案内をしてくれるのであった
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酒場に向かう道中
「ロトはこの酒場について何か知っているか」
レンが興味本位でロトに聞いてみる
「確かここの酒場のマスターは元凄腕冒険者だったと思う。それでよく酒場で問題起こすような奴はマスターに締め出されるのをよく見るな。場合によっては俺ら兵士に客が突き出されることもあってぼちぼち顔は知ってるかな」
「なるほど、マスターは元冒険者怒らせるのダメゼッタイ了解」
「そこまでじゃないぞ、マスターは基本優しい奴だ変なことしなきゃ怒んないよ。そんなこと言っている間についたぞここが依頼の酒場だ」
そうして一行は足を止めた
木造の一階建てでそれなりに大きいように感じる。チェーン店ぐらいの大きさだろうか
「それじゃ入りますか」
レイは少し緊張した様子で扉を開けた
「こんにちは冒険者協会の依頼できました」
中は四つほどの丸テーブルの席とカウンターの席が五つほど用意されており周りにはタルやボトルが飾られている
なんかよくアニメで見るような酒場だな、ちょっと感動してきた
「ああ来たか」
そういって店の奥からがっちりした感じの女性が出てきた
なんかザ元ベテラン冒険者ですって感じの見た目だな
「とりあえずそこに座りな」
そういってカウンターの席に三人は案内された
「確か二人募集にしたがなんで三人になっているんだい、てかあんたロトじゃないか何しに来たんだい」
マスターは最初少しイライラとしているようだったがロトの顔を見ると驚いたように言った
「俺はここに働きに来たわけじゃないぜ、こいつらが身分不詳で東の大陸からきたつうからこいつらを監視しろって話になったんだよ」
「なるほどそういうことかい、それじゃこの二人が請負人ってわけね。名前はなんていうんだい」
「レンです」「セリーナです」
「レンとセリーナね、これから私のことはマスターと呼びな、短い間だがよろしく頼むよ」
「yes sir」「よろしくお願いしますマスター」
「ゴン」
レイの頭にげんこつが来た
「いった」
「マスターだ」
マスターがいかつい顔つきでレイに注意をした
「はい、マスター」
早い!マスターの手が全然見えなかったさすがは元凄腕冒険者、の割に痛くないのはマスターが加減をしてくれているのだろう
「それじゃ、仕事の説明だ。今うちの従業員は訳あって二人休んでな、一人はホールで一人はキッチンをやっていて二人はその代わりをしてもらいたい」
「ホールとキッチンというのは何ですか」
セリーナが疑問に思ったのマスターに聞いた
「すまない、少し身に覚えのない言葉だったな。キッチンというのは主に飯や酒を作る人でホールっていうのはその料理や酒を運んだり注文を聞いたりする。主に接客をする人だ」
「なるほど、わかりました。ありがとうございます」
セリーナはアルバイト的なことをしたことがないのかな、でも知らない人は知らないか
「それじゃ俺はキッチンやりますわ」
ここに来る前は毎日自炊してたし基本的なことはいけるだろ
「では私はホールをやることになりますね」
「それじゃ開店前までに少し指導するからまず、セリーナから」
そういってセリーナのホールの指導が始まった
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「ま、こんなところかな」
どうやらセリーナの指導は終わったようだ
結構苦戦しているようだった。しかし、セリーナの愛嬌によってマスターは心地よく指導しているようだった。
もう日が傾き始めている。これ俺の指導できないんじゃないか
「もう開店まで時間がないから、レンの指導をする時間はなさそうだ」
「それじゃ俺どうすればいいんだ」
「調理は私がやる、レンは食材を切るのと酒を注ぐのを主にやってくれ、切り方と酒の場所は随時聞いてくれ」
「了解マスター」
レンはやる気のある顔で言った。まるでこれから試合にでも出るような様子だ
「それじゃ、店開けるから準備しな」
そうして店が開店した
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開店して少し経った頃四人ほどのお客さんが入ってきた
セリーナが接客している、ぎこちないがまじめさがあってお客さんには好印象だろう
「エール四つとシチュー四つチキンのハーブ焼き一個入りました」
そういって注文用紙をキッチンに持ってきた
「それじゃ説明していくよとりあえずエールはその横になっている樽からこの木のジョッキに注いでいってくれ、こんな感じだ」
そういってキッチン奥の横になっている樽からエールを注ぎ始めた
「もしなくなったらこの樽は裏において裏にある樽と交換してくれ、それじゃレンもやってみてくれ」
そういってレイは三つのジョッキを渡された
ま、イージーだろ
そうしてレンはエールを三つ注いだ
「まぁいい感じだ、それじゃ次は食材の切り方だ。今回はチキンとシチューだったな、チキンのほうはこっちでやるとして、シチューには人参とジャガイモが入るこれらを一口大に切ってくれればいい」
「了解」
そういってレンは切っていく
「こんな感じか」
「いい感じだ、レンはどこかで飯を作っていたりするのか、すごい手際がいいぞ」
マスターは驚きと関心が混ざるような声で言った
「自炊ぐらいですよ」
「そうなのか、これは即戦力だな」
マスターは少し悪い顔で言った
「あとは私に任せな全部調理してやる」
そういってマスターはスムーズに調理していき数分でシチューとチキンのハーブ焼きを完成させた。その動きからは長年この店を切り盛りしていることを感じさせる
「よしできたぞ、セリーナ持っていてくれ」
「はい」
そうしてカウンターで料理の受け渡しが行われお客様に届けられた
「これから忙しくなるから準備しておくんだな」
そうして時間は過ぎていき、店はどんどんにぎわっていた