4(セリーナ)
暗闇の地下空間で、男は封印されている女性と対峙していた。
「とりあえず、封印を解こうと思うんだけど、一つ条件を出していいかな?」
「条件ですか?」
女性は首をかしげながら聞いているようだった
「別に難しい条件じゃない、俺はこの世界に来て間もない。だから、君に助けてほしい」
彼女の瞳は閉じられたままだが、男の言葉に反応し微かに眉を動かしているようだった
「助けて、ですか?」
「そう。ここに来るまで、多くの魔物に遭遇した。正直なところ、このままだといつか奴らに殺される」
先に会った魔物たちはいくつかは倒せるかもしれない。しかし、いくつかの魔物は近くにいるだけで呼吸を妨げるほどのプレッシャーを与えてきた、そのような奴と接敵したとなれば間違いなく俺は死ぬ、そうならないために彼女と行動しなければならないと思った
「だから君に守ってほしい!元聖騎士団長の君には簡単なことでしょう?それに、君すごくかわいいし、性格もいいし、強いし、頭もよさそうだから一緒に行動してくれればすごく助かるなーって、だめですか?」
だめですかといったものの条件をのまないと封印を解いてもらえないからダメとは言えないでしょ
「ンー、わかりました、その条件飲みます」
どことなく彼女が照れているのを感じる
意外と男性経験ないのかモテそうなのに
「よし!じゃあ、封印の解き方を教えてくれ」
「封印の解き方は五角形の頂点にある札をすべて切ってください」
意外とシンプルなのね
男は彼女の指示に従い、次々と札を切り裂いた。最後の一枚を切ると、封印の光がふっと消え、辺りが真っ暗に包まれた
「大丈夫ですか?」
先の女性の声が今回は頭にではなく耳に聞こえた
「明かりを出しますね」
そういってあたりはいきなり明るくなり光源のようなものが上に浮いている
なるほどこれが魔法というやつか
あたりを見渡すとそこに立っていたのは、美しい赤い瞳の女性だった
「女神か」
「魔女です」
「あぁー魔女か」
やっぱり美しいな
「それでは改めてご挨拶を。私の名前は、セリーナあなたの命は私が守ります」
そういって剣を振り回し挨拶をした
騎士の挨拶みたいなものかなんかいい感じにかっこいいな
「俺の名前は 怜、レンだこれからよろしく、セリーナ」
俺はシンプルに挨拶をした特に礼儀作法も知らないからな
「それではここを出る前にレンにはできるようになってほしいことがあります」
先までの少し和やかな雰囲気から少し空気がピリつく
「なんだ」
いきなり殺されたりしないよな、なんか怖くなってきたな
「私はレンを守るために全力を尽くしますが、レンも自分で自分のことを守れるようになる必要があると考えます」
「それはそうだな」
正直俺もそのつもりだったセリーナに俺の身の安全を守らせるにしても。もし、セリーナが近くにいないときそのとき自分の身は自分で守らないといけない。だから、これからセリーナからいくつかの戦闘のスキルを教えてもらう予定だ
「まずレンは魔力が上手く扱えていないのでそれをできるようにして身体能力の向上を図りましょう」
「身体能力の向上」先の話に出ていたやつだな。どの程度の向上になるかわからないが、できるようになれば一番簡単に戦闘能力が向上すると考えられそうだ
「わかった....で、どうすればいい?」
「まず、そこで目を閉じて座ってください」
「こんな感じか」
レンはよくある座禅の姿勢をとった
「いい感じです、それでは少し体を触りますね」
そういってセリーナがレンの体を触るとレンは体の中で何かが動くような感覚に襲われた
なんだ、これ....気持ち悪さはないが、何かがが動いているのがわかる。しかし、それは物理的ではない、イメージは光が体中を動いているような感覚
「何かかが動いているように感じていますね。それがレンの魔力です。まずは、それを止めるなり自分の思い道理に動かせるようになってください」
「わかった」
「では、それを止めてみてください」
なんとなくどうすればいいかわかった。動く魔力に意識を向けて止まるようなイメージをしてみる。そして、そのようになるようにイメージを光に落とし込んでみる
先まで動いていた魔力は動きを止める
「すごいですね。こんなに早く自分の魔力をコントロールするなんてレンは才能が有りますよ」
セリーナは素直に感嘆しているようだった
「本当か!」
「はい、今までこんなに早くできるようになった人は見たことがないです」
レンは年甲斐もなく無邪気に喜んでいる
「それで次は何をすればいい」
「次はその魔力を全身に流してくださいそして血のように循環させて下さい」
「わかった」
まずは、魔力を全身に流す
先まで腹部に感じていた魔力を体全体に広がるようなイメージを魔力に落とし込む
いい感じ体全体が光ってる感じがする
次は血のように循環させる
魔力が体全体をめぐるようなイメージでやってみるか
そうして体全体を光が動く
「いい感じです。その状態で目を開けて立てますか」
「目を開けて立つ」
そうして目を開けてみると体が少し発光しているように感じた
そして、魔力の循環は今も続けられている。だが、間違いなく神経はすり減っている。体を動かすのと魔力を動かすのを同時にやるのは骨が折れる
「できた」
そして、体感で分かった。先より体は軽く、早く動け、高く飛べると
「レン、その魔力循環は常に行ってください、ちなみにその循環の速さによって魔力の消費量は変わります。早ければ多く魔力が消費され遅ければ魔力の消費は緩やかになります。また、その技術をうまく応用することで瞬時に大きな火力を出したりもできます。覚えておいてください」
「わかった、指導ありがとうセリーナ先生」
レンは少し茶化すように笑った
「別にこれくらい普通です。条件としてレンを守るというのがあるのでその一環です。」
セリーナもまんざらでもなさそうに微笑んだ
先生はノータッチまぁいいか
「それじゃ、セリーナここから出ますか」
封印の地下空間を後にした。セリーナと共に新たな冒険が始まろうとしていた