3(過程)
そうして彼女は過去の話を始めた
「私は昔聖騎士団長をしていました」
「女性で団長?それは珍しい。いや、素晴らしいな」
男が驚くと、彼女は少し眉をひそめた
「戦闘能力であまり性別は関係ありません、魔力をうまく扱えば誰でも身体能力を向上させられるのです。実際、騎士団の男女比は七対三ぐらいでした。」
なるほど、面白いことを聞いたこの世界では魔力をうまく扱えると身体能力が向上する。面白いなどのぐらいのものなのか見てみたいものだ
「話を戻します。私は、毎日国の平和を守るために戦い、魔物を討伐し、国民の困りごとを解決していました。ある日は農作物に水をやり、ある日は工芸品を修繕したりと、平穏な日々が続いていたのです」
彼女は少し懐かし気に感傷に浸るように語っている
今のところ善行ばかりだなこれなら全然封印は解くけどな
しかし、彼女の表情が陰る
「そんな平和も長くは続きませんでした....隣国との戦争が始まったのです。最初はこちらが優勢でしたが、相手の領地に近づくにつれて彼らの力が増していき。ついには拮抗状態に陥りました」
戦争ねーどの世界にも人間同士の争いってあるよね、小競り合いのような小さいものからから戦争のような大きなものまで、どこでもかわらないんだね
「ある日こちらが攻めあぐねていることを好機と考えたのでしょう、奇襲で国を狙ってきたのです。悔しいですが彼らの作戦は見事でした。その時私は拮抗している戦線にいました。そこには、五人の敵軍が戦線に現れると同時にとても大きな魔法が軍を襲いました。とてつもない爆風、熱波、轟音、光が私を襲いました。目を開けると私は全身にやけどを負い、いくつかの骨は折れ、耳も目も使い物にならないような状況になりました。そして、あたりを見渡すとあたりは焼け野原、木も生物も見えはしませんでした。そして、それまで数千いた兵士たちが一瞬でいなくなりました」
この世界には魔法があるのかそれにしても
「数千の兵士を一瞬で消す魔法か」
規模によっては核爆弾ぐらいの火力があるのではないか
「今となってはあの魔法が何なのかどのような原理なのか理解できます。しかし、当時の私には理解できず混乱いえ....パニックになりました。その後は相手の五人の兵士と戦うことになりました。私は混乱を薙ぎ払うように剣を振りました。そのため気づけなかったのです....彼らが時間稼ぎをしていることに」
彼女の言葉に先の感傷に浸るような様子はなくした唇をかむような悔しさを感じる
どんな歴戦の戦士も目の前でいきなり理解ができないことが起きれば驚くだろう、また、それが自分にとって不利なことであればなおさらだ。仕方ないと言えばそこでで終わりだ。しかし、英雄であれば悔いることをやめることはできない
「彼らを倒すのには五時間ぐらいかかったと思います。そして、国に戻るともうそこには何もありませんでした。人も建物も作物も工芸品も人間の痕跡が何もありませんでした....あったのは焼き焦げた平原でした」
五時間かそれで国1つ人間の痕跡をなくすことができるのだろうか、国の規模にもよるかもしれないが異常なんじゃないかな。それに、作物も工芸品も何もないとなると敵軍は何のために攻めたのだろう土地も焼き焦げていたら使いにくいだろう、人を全員殺すのももったいないように感じる。
「その後、私は人里離れた森に隠れ修行に専念しました。もう二度と失わないために、圧倒的な力を手に入れるために。そして三年が経った頃、奴らが再び現れたのです」
男の表情が引き締まった
「先ほどの隣国が私を討伐しようと大軍を連れ私の住処に攻めてきました。この三年の修行の成果もあって一方的に数を減らしていきました。あと手練れの五人だけでした。その五人は先に戦ったやつらに似てまるで生き返ったのかと脳裏をよぎりました。そんな奴らも簡単にあと二人までのところまでは倒せました。しかし、討伐は無理と判断したのでしょう、外部から魔力が収縮しはじめこの封印が始まりました、この魔法はとても強力で始まった瞬間とても動きにくくなったのを覚えています。まるで重力が十倍になったような感覚になりました」
大軍で住処を狙いこれが本命と思わせておきながらの外部からの本命の封印これはレベルが高い。本陣がレベルが高いからこそできる芸当だ。全体的に隣国の参謀はレベルが高いように感じるが、二回も同じようなやられ方をしている彼女は頭が悪いようにも感じるがなにか細部の部分に何かがあるようにも感じる
「その後動きが鈍くなっているときに残った二人が五角形に札を地面に張っていき今の状態となりました、その後特に何もなく五百年の時が流れました。」
「五百年!! えぐいな」
男は驚いた様子で大きな声を出した。
「そうですね、特に肉体は動かないのですが今のように精神は正常に動くのが軽い拷問になっていますよ」
軽くないだろこんな何もない暗い場所に五百年も閉じ込められて、普通の人間なら精神が崩壊しているはずだ。
「私の話は以上です。それであなたはどうしますか?」
結論は出ているがいくつか気になるところが
「二つ質問させてくれ....一つ目は君がそこまで狙われた理由だ。少し異常なように感じた。もう戦争には勝利しているのに大軍を犠牲にしてまで君が追われたのはなぜだ?二つ目はこの封印を解いたのち君はどうする?何をする?」
「一つ目の質問ですがそれは私が魔女と呼ばれる存在だからでしょう。二つ目の質問は特に決まってはいません。しかし、ここから出たいというのは普通のことでしょう」
「魔女ねぇー」
男は含みのあるような言い方で呟く
なるほどね腑に落ちたそして今決まったこの封印をどうするか
「少し利用するか」
男は小声でつぶやき彼女の封印に近づいた