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19 (ヘリム)


道中ロジンやセリーナがいた森では見ることがなかった魔物が多くいた


いや、逆に前の場所で見たような魔物は存在しなかった


ここにいる魔物はすべて翼をもっていた。そして、多くの魔物は高い俊敏性を持っており先の場所より手ごわい印象をレンは受けた


道中の魔物はすべてアウルが処理した


その戦いは羽を使った早い空中戦、レンには支援することすらできなかった


そうして森を歩いていると、翼の生えた人間が多くいる集落についた


そこでは多くの人が木の上で暮らしており、木に穴をあけて生活するもの、木の上でツリーハウスのような上下に藁を敷いて生活するもの、同じ翼の生えた人間でも生活の仕方が違うことがうかがえた


:::::


「ここが新たな町ね」


レンはつぶやく


(翼の生えた人間だけね......まぁそんなもんだろうね。この世界で翼の持たないものはどうなることやら......それより道中はアウルに守られてたけど、このままだとこの世界では何もできない存在になるぞ......どうしたものかな)


「それにしても視線がすごいな、俺ってば人気もの?」


先ほどから多くの人がレンに向けて不思議そうな視線を向けている


「違う、翼をもたぬものが来ることが珍しいんだ」


「まぁーそれもそうか」


(俺が人気あるわけではないわけね、ビジュいいけどね!)


「翼をまたぬものが来るのは5年ぶりぐらいだな」


(5年前には来ているのか物好きなやつだな、ここに何かあるのか?)


「とりあえずお前は長老のところに連れて行くついて来い」


そういいアウルは集落の中央の少し飾り付けされた目立つ木に向けて歩みを進める


(長老ね......どうなる事やら)


レンは中央の木を見つめ、面倒くさそうに、けれどどこか楽しげに笑った。


:::::


「これ俺どうやって行くん?上る感じ?」


中央の木にたどり着くと木の中部あたりに穴があるのが見えた


おそらくあそこが長老の居住地なのだということが感じられた。しかし、そこは20メートル上にありとてもレンがいけるような場所ではなかった


「違う、俺お前をもっていくんだよ」


そういってアウルはレンの脇をつかみ翼を広げ飛び立つ


「長老、不審な翼をもたぬ者がいたので連れてきました」


「おぉ~よく連れてきたぁ~」


中からしゃがれた声が返ってきた


中は意外と質素で、真ん中に丸い絨毯、壁に古そうな杖や蔓と葉で編まれた輪状の装飾。奥に座っていたのは、背中の翼が真っ白な老人だった。髪もひげも真っ白だった。しかし、眼光は鋭く常人でないことがうかがえた。


「名をなんという?」


「レンです。昨日まではロジンって町にいた。寝て起きたら、なぜかここの森で目が覚めてました」


「……ロジン。海の町じゃな。風魔の流れで聞いたことがある」


「風魔?」


レンは首をかしげて言う、こっちの世界に来てから風魔などという言葉は聞いたことがなかった


「こちらの話じゃ、気にするでない」


長老は笑みを浮かべながら言った


(感触は悪くない、常識の通じる人のようだ)


「長老さん俺は今右も左もわからない、とりあえずここはどこなんだ?」


「ここは「「ヘリム」」鳥人の住まう空の台地じゃ」


「ヘリム.....ね」


(空の台地......まぁそんなところか......それにしても......)


「とはいえ、ここは気軽に来ていい場所ではない。このヘリムは、風の流れと古い術式で地上から切り離されておる。普通の人間が、歩いて来れる場所ではない」


「じゃあ俺どうやって来たんだ?」


「お主の周りにまだ残っておる……転移の痕跡じゃな。しかしかなり強引なやり方じゃな」


(やっぱ転移か。セリーナ……じゃないよな)


「話は変わるが、主加護を持っておるな?」


その言葉が落ちた瞬間、空気が変わった


先ほどまで部屋を満たしていた穏やかな空気が、ぴんと張り詰める。焚かれていた香草の匂いすら、急に重く感じた


長老の細められていた目が、わずかに見開かれる。その視線は鋭く、皮膚ではなく、もっと奥――魂の内側を覗き込むようだった


レンは、ぞわりとした感覚を覚える


理由は分からない。けれど本能的に理解した


――この人は、確信して言っている


「そんなこと……わかるのか?」


レンがそう返すと、長老はゆっくりと息を吐いた。


「わかるとも。その加護……深い。いや、強すぎる」


レンは口を開きかけて、わずかに息を整えた。ほんの一瞬、言葉を選ぶような間が生まれる。


「加護から……声が聞こえることは、あるのか?」


一瞬――

長老の表情が消えた。


そして次の瞬間、目を見開き、口元だけで笑う。


「……ほぉ」


低い声だった。


「加護が語りかける、か……」


長老はそこで言葉を切った。


先ほどまで楽しげだった声音が、わずかに沈む。部屋の奥で、風が止んだような錯覚があった。


「その加護……世界に触れておる」


レンは、その言葉の意味を理解しきれないまま、なぜか胸の奥が冷えるのを感じていた。


長老の視線が、じっとレンを射抜く。値踏みするようでもあり、確かめるようでもある。


しばしの沈黙のあと、低く言い切った。


「――エクイリブレイターの兆しじゃな」


「エクイリブレイター?なんだそれ」


「エクイリブレイターは、この世界のバランスを保つために生まれた存在じゃ」


長老は両手を広げ言った


レンはその単語が妙に体に刺さった


世界のバランス――その言葉だけが、妙に体から離れなかった。


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