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目覚めたら7歳児でしたが、過酷な境遇なので改善したいと思います  作者: 瑞多美音
第1章

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16 生活向上の兆し

 

 最初は訝しげにしていたみんなもわたしが1足を作り上げる頃には興味津々になり、はいてみせると驚いてくれた。


 「メリッサ!それはサンダルなのかい?」 

 「うん、わらじっていうんだよ!」

 「わらじ?……食べられもしない草を集めだした時は何事かと思ったが、自分で作るとはすごいのぉ」

 「すげぇな!メリッサ!」

 「自分で作れるものなのねぇ……」


 そこまで感動されると思ってなかったから嬉しい。出来上がるのに少し時間がかかってしまったけど、わらじ作りに自由時間を割いた甲斐があるよ。



 「わ、私にも作れるでしょうかっ?」

 「もちろん!」


 最初は戸惑うかもしれないけど、根気よく続ければできるはずだ。 


 「儂にも教えておくれ」

 「どれ、私もやってみようかね」

 「俺もやるぜ!」

 「うん!」


 早速、布団のしたから余っていたい草もどきを取り出し……


 「えっとね、まずはこの草をよりあわせてひも状にします!」

 「は、はい」

 「このひもの太さはどれぐらいかの?」


 太さ?……なんとなく感覚でとはいいずらいぞ……


 「えーっとね……両手に2、3本くらい持つかんじかな?それで、さゆうの草をこうやって、こうさしてよっていくんだけど」


 説明がうまくできないので、みんなに見えるようにゆっくりとより合わせる。


 「は、はい」

 「ふむ」

 「ほう……」

 「ちっ、両手じゃ俺はできねぇな」

 「あ、そっか……」


 グウェンさんには厳しいかぁ……


 「ふふ、わたしと同じ見学組ね」

 「マチルダ。なんか嬉しそうだな?……まぁ、いい。続けてくれ」

 「……うん。で、はしがほどけていかないようにおさえつつ、手をこすり合わせるかんじね!長くなってきたら草をつぎたしていくの。あ、わたしはこのはしを口でくわえたり、足でおさえたりしてほどけないようにしてるよ!」


 そうやって、みんなに教えてみたものの……作れそうなのはマイケルじいちゃんとフランカお姉ちゃんだけだった。

 おばばさまはひもを作るところまではできたんだけど、足の指にかけて編むという姿勢がとれず、グウェンさんはひも作りで離脱。

 マチルダさんは体力温存のため見学、ハワードは興味無しだった。


 「ちっ……俺も作りたかったぜ」

 「まぁ、年には勝てないねぇ……ひも作りは任せておくれ」

 「ふたりの分も作るからね!」

 「わ、私も覚えて作りますね!」

 「……おう」

 「ありがたいね」


 い草もどきはたくさんはえているから……編みかたを考えれば敷物や布団がわりに使えるかも?長雨がくる前に作れるといいけど……

 部屋に見回りが滅多に来ないからできることだ。サボり魔が多くて助かるよ……まぁ、死にかけグループじゃないともう少し見回りが多いんだけど。


 「それにしても、その草は布団の下に敷くためにとってきてたんじゃなかったんだねぇ……」

 「ええ、てっきり私もそう思ってたわ」

 「じ、実はわ、わたしもです」

 「えぇ……」


 あのとき、フランカお姉ちゃんは不思議そうにしても見守っていてくれたのに。

 でも、ちびっこが草を集めだしたらそう思っても仕方ないか。前回はそれを食べるためだったらなおさらか……


 「しかも、敷いたほうが気持ち寝やすいしのぉ」

 「だな」


 結局、採取して部屋で一夜干しして使うって感じに……で、使わない分は布団のしたへ敷くことが決定した。床の冷たさや硬さがわずかでも軽減されるから一石二鳥ということで。


 



 ◇ ◇ ◇




 いつからかフランカお姉ちゃんはわたしよりも上手にわらじを作ってはみんなに渡すようになっていて、わたしがおばばさまの分を作る間にふたり分作り上げてしまう腕前になっていた。


 「フランカお姉ちゃん、すごいね」

 「そ、そうですか?」

 「うん、はやいもん」


 それなのに自分の物は後回しにしているのね。

 本当ならわたしが作って渡したいところだけど……多分、フランカお姉ちゃんが自分の物を作り上げるほうが早そうだ。


 「メリッサ、儂のはどうかの?」

 「ふむ……おぉ!チクチクしない!すごい!」

 「そうかの」


 マイケルじいちゃんはスピードはそんなに早くないんだけど、出来上がりが丁寧でチクチクしない……くっ、わたしの手が小さいばかりに本領が発揮できないとは誤算だったなぁ。


 そうこうしているあいだに日々が過ぎ去り長雨の季節が迫ってきた……


 最近ではわらじがみんなに行き渡ったので、他のものを作り始めている。

 自由時間にはみんなでい草もどきや丈夫な草を編む日々を送ったことによって、敷物や防寒具として肩から身につける肩簑、みんなの分の腰簑、腰簑に装着できる採取用の草バッグなどがどんどん量産された。

 みんなはあっという間にわたしより手際がよくなっていき、若干あせった。


 敷物は布団の下に敷いていた草から発想を得たグウェンさんとおばばさま作である。出来上がりはござに近いだろうか。

 おばばさまとグウェンさんはふたりで協力して作ることで自らの弱点を克服したらしい。出来上がったときのグウェンさんのどや顔が印象的だった。


 「メ、メリッサちゃん、こんなの作ってみたんだけど……」

  

 フランカお姉ちゃんが見せてくれたのは腰簑を応用して作ったと思われるエプロンのような形の服だ。しかも、わたしのサイズみたい。

 

 「おぉ!すごい!服みたい!」

 「そ、そうですか!マ、マチルダさんのアイディアなんです」

 「私も作りたかったけれど、なかなかそうもいかないでしょ?でも、アイディアなら出せるもの。フランカちゃんに協力してもらったの」

 「すごいじゃないか。これがあれば服の代わりになるよ。メリッサ、着てみたらどうだい?」

 「うん!」

 

 さっそく、試着……

 

 「おおー!服みたいっ……でも、長いかも?」

 「ちょ、ちょっと大きかったみたいです」

 「ええ、ハワードサイズだったかしら……」


 確かに……自分の小ささにビックリしたよ。

 ちょうどいいかと思って着てみたらぎりぎりマキシ丈……数歩に1回は踏む長さだったんだ。これで水汲みしたら、確実にひっくり返すやつ……


 試しにハワードに着せてみると……


 「ぴったりだね」

 「ええ……」

 「……」


 まるでハワードのために作られたかのようなサイズ感であった。ちぇー。ハワードはわらじを履かされようが服を着させられようが無反応である……


 「こ、今度こそメリッサちゃんのサイズでつ、作りますから!」

 「……うん」

  

 たぶん、フランカお姉ちゃんが考えるよりふた回りくらい小さくていいと思うな……


 後日、わたし用の服を受け取ったのだが、ほんのすこし大きかった……なんかオロオロしているけど、これはわたしが大きくなることを見越して作ったんだよね?そうだよね?と信じて素直に喜ぶことにした。わーい。


 他にも草をより合わせて作った紐をぐるぐると巻いて作った座布団、掛布団ならぬ草布団などを独自に作り出している。


 素人作の防寒具でもあるとないとでは大違いだったし、座布団など地べたと比べるとうんと楽だった。生活レベルが一段上がったようで気分がいい。


 そして、わたしもみんなに触発されてなにか新たなものを作りたくなった……時代の先端をいかなくては!わたしはこの部屋のわらじのパイオニアなのに!


 結局、思い付いたのは前世で藁できた雪用のブーツみたいな靴。

 でも試行錯誤しても編みかたがわからなくて渋々あきらめた……カーブ部分が難しいんだよぉ。

 その代わりとして作ったのはすね当てである。

 板状に編んだ草をすね当てのようにぐるりと巻きつけ、よったひもで結ぶだけの簡単なものだったけど、これのおかげで草むらでの擦り傷が激減した!防御力アップである。

 調子にのって同じものを腕当てとしてつけたら、腕が使いづらくなったので却下。もっと柔らかい素材でないと動きに支障がでてしまうのだ。残念。

 でも、すね当ては防寒具としてもかなり優秀な気がする。 

 前世でも太い血管のある場所をあたためると……とかあったじゃない?つけていると、足先の冷えが違うんだよね。

 

 うん、昔話の絵本とかに出てきそうな格好をしている自覚はあるのだ。

 まあ、服はボロボロであちこちポロリしちゃいそうなくらいだし、作ったものたちが意外と機能的にも優れているので問題ない。

 でも、さすがに下着は雑草で作れなかったよ……バナナの葉みたいに大きな葉があればふんどしもどきが作れそうなのになぁ。え?いま?ノーパン生活ですがなにか?

 え?ぼろ布で作れ?……衛生的に不安なので却下です!

 食べ物は毒草でもばくばく食べるくせに変なとこでこだわってるって自分でも思うんだけど、ばっちいふんどしよりノーパンがマシだって、思っちゃうんだもん。

 

 草を集めるのが大変だったけど、思っていた以上にいろいろなものが用意できてよかった……最後の方は周辺のい草もどきや使えそうな草を刈り尽くす勢いだったしね。


 

 余談だが……試しに魔石の受け渡しに完成した腰簑やわらじを取り上げられる覚悟でつけたまま行ってみたのだが……見張りたちはチラリとこちらを見たけどなにも言われなかった!

 でも、大人の奴隷のたちにはかわいそうな子を見る目で見られてしまった……内心ドキドキしつつも、フランカお姉ちゃんについて回るボーッとした子の演技をしたり、虚空をみつめてヘラっと笑ったりした成果……だといいな。


 ちなみに見張りには防寒具たちはただの草の塊にしか見えないようで、部屋の草布団たちや座布団には見向きもせず、受け渡しにフランカお姉ちゃんが腰簑をつけていってもスルーされ取り上げられることはなかった。

 あとはどこまでスルーしてくれるかが問題だ。見張りの目が節穴なのはこっちには都合がいいんだけどね。

 思うんだけどさぁ……見張りって仕事してる?ってくらいほとんどの帝国人はやる気がなさそうなんだよね。

 でも、時々鋭い目とオーラをまとったひとが数人いるんだよなぉ。

 大体そういうひとの胸辺りに勲章らしきものがいくつもあるので多分、お偉いさんかやり手のひとだと思う。

 つまり、そこらへんで普段偉そうにしている奴らは帝国では下っ端兵士ってことか。そして、その下っ端に命令されているわたしたち……ちっ。


 勲章(仮)があるひとたちに目をつけられたら面倒そうなので、なるべく気配を消したり視界に入らないように気を付けている……

 ただ、はじめて遭遇した時には腰簑状態だったからなぁ……スルーされたとはいえどう思われているかは微妙なところだな。


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