クラゲリウム
その日 黒点がはじけて
硝子体の中に 海月が生まれた
まぶたを閉じれば 太陽の光を糧に
海月は触手をなびかせながら
硝子体の中を悠然と漂っている
どうせ勝手に住まうのなら
せめてその触手で彼の人を形取ってくれれば
少しは慰められただろうか
その日 世界がはじけて
硝子体の中に 無数の海月が生まれた
視線を巡らせば あとを追うように
海月の群れが
硝子体の中をゆらゆらと泳いでいる
まぶたの裏にやきつけるなら
せめてサンドアートのように彼の人を描いてくれれば
少しは怖くなくなるだろうか
やがて彼らに「なまえ」がつけられた
いつか たくさんの涙が
彼らを海の彼方まで運んでくれる事を
願っている