第二壁 異世界の人々と悪漢の消える希望
真守「・・・あ・・・」
真守は一歩踏み出しかけて後ろの自らが建てた壁の建造物を見返した。
真守「その前に」
真守が左手を左に指し示すように振るうと、初めに立てたものより長めの
屋根と壁の家屋がすぐに建てられた。
アイシャ「・・・・・・・・壁の魔法使い様、それは?」
真守「この道は長そうだし、次に雨に濡れる人たちがいたらここで足を止めて
ゆっくりできるかなあって。」
アイシャ「それは!素晴らしいですね!・・・きっとこれからこの道を来る皆さんが助かると思いま・・・
真守「う~ん?あと10個ぐらい建てた方がいいかなあ?少なくないかな?」
アイシャ「え!?・・・う~ん・・・そう、ですねえ・・・たくさんあれば
いいとは思うのですけど・・・景色が著しく変わりすぎるのも驚く方々もいらっしゃるかもですが・・・」
真守「う・・そうかも・・・って!これホントに建てちゃって大丈夫ですかね!?この国の法律的に?違法建築になったりとかしないですよね!?」
((((;゜Д゜))))ガクブル
アイシャ「あ!・・・・どうなのでしょうね(汗・・・・怒られたら片付ければいいかとおもいますが・・」
(>_<) ムムム
この世界にも国があることを知った。二人はその国の中心街へと続く道を
朗らかな気分で歩いていた。
アイシャ(~♪~♪~♪)
真守(すっかり涙も消えていい気分になってるなあ これだけでも大きな一歩だよね)
アイシャは真守より前に出て、優しく頼もしい「壁の魔法使い」と旅するのに心をはずませ、ややスキップ気味の足取りで進む。
真守はこの世界でまず一人を少しでも助けられたことで意欲が上がった。
アイシャ「!」
真守「どうしたの?」
アイシャが立ち止まった先はさっきまでの大雨により泥でぬかるんでしまっていた。
真守「うわ、これじゃ歩きにくいし、転んで泥も撥ねるかも」
アイシャ「私は・・・別に構いません!・・・ノームですし、多少の泥くらいは・・・それに壁の魔法使い様と会うまで、私、走ってなんとか逃げてきて・・・はわ!?」
真守「逃げてきて?・・・」
アイシャ「・・・あぁ・・・」
申し訳なさそうにうつむくアイシャ
まず自分を守ろうと道にあった壁の雨宿りに助けを求めた先に、寂しさ悲しみに苛まれていた相手がいた。それでも雨風から守ってくれた相手の事情を
先に耳を傾けることを無意識に優先して
自らのことを後回しにしたが、目の前のぬかるみと靴とひざ下についている泥で思い出し、それまであった事実がつい口からこぼれだしたのだった。
アイシャ「いえ、なんでもないです!」
真守「大丈夫、聞かせてくれないかな?」
アイシャ「・・・」
アイシャの住むノーム村 アイシャが父のように慕うノームの老人が病に伏し
治すには国の中心街で売られる特別な薬が必要なのだという。
ノーム村と街には徒歩のみではなく馬車が定期的に行き来しており
いつもならば問題なく馬車に乗って安全に街についていたはずだった。
アイシャ「その馬車を、この頃よく出る盗賊が襲ったと知らせがありました。
しかし私はすぐにでもおじさんに薬を届けてあげたくて、盗賊たちが見向きもしない大通りとはべつの険しい道を慎重につたってきました。
街までは遠くない距離まで来た時、ここからなら盗賊はいないと考えて途中で大通りに入ろうとしたとき・・・」
大通りへの合流地に盗賊たちが馬を停めて休憩していたのだという。
アイシャはすぐ森の木の中に隠れて盗賊たちが合流地から出発するまでの長い時間を見つからないことを祈ってやり過ごした。
盗賊たちが場所を変えてから大通りに入ると激しい雨風に見舞われ、
村で待つおじさまを案じる気持ちと荒れた天気に慌てて走りだし
真守の壁の即席停留所を目にして駆け寄ったのであった。
アイシャ「恐ろしくて心細かった・・・でもそれは私だけじゃなく、
壁の魔法使い様も同じで、私のことよりもお話を聞いてあげるべきだと思って
・・しばらく話さずにいました・・・」
真守「そうだったんだ・・・・」
アイシャ「おじさまのことはずっと案じていましたが、壁の魔法使い様が
来てくださるとおっしゃったので嬉しくなってちょっと舞い上がって
おじさまのことを忘れたみたいな顔でしたよね・・・何をしてるんでしょう私
早く病をなおしてあげなくちゃいけないのに」
真守「いや、アイシャさんはいい人ですよ 笑ってていいです!」
アイシャ「!?」
真守「おじさんを助けたくて危険でも、怖くてもここまで来たんだから
笑っていた方がいい。きっとおじさんは助かる。笑顔でいるほうが大切だと思う。暗くなりながらどうしよう?とか彷徨いながらよりも
元気を保ち続ければ目標を見逃さず狙い続けられて
・・・・・・・・成せるっていうか?・・・その、」
アイシャ「・・・・」
真守「とにかく、アイシャさんはボクがノーム村まで必ず守ります!
こんな泥の道は!」
アイシャ(・・・・守る・・・私を・・・)
アイシャの前に仇なすぬかるみの地面に真守のつま先から壁が水平のコンベアーのように這い出て長く伸び、泥の上を敷き進んでいく。街へ続く方向の消失点の先まで道が舗装された。
アイシャ「わああ!!すっかり歩きやすくなりましたあ!
さすがは壁の魔法使い様ですね!壁の大きさまで自由自在に作れて!」
真守「魔法かどうかはわからないけど、その、壁の魔法使いっていうのは
長くて恥ずかしいかな・・・・かべ・・でいいかな」
アイシャ「え?それでは失礼ではないでしょうか?せめて・・・
ええと、アイカベ様とマモル様、どちらがお名前でしょうか?」
真守「うん・・・名前はマモルなんだけど・・・ボクの生まれた国では
真に守りしものという言う字を当てる、けどこの壁に気付く前は・・・・
自分ばかり逃げ隠れして、他のものを守れてなんかいなくて、名前負けしまくりなんだよね・・・」
アイシャはまばたきを2回 きょとんとする。
真守「だから・・・・かべ、でいいよ・・・ボクが強くなって自分が納得できたとき・・・・マモルと呼んでくれればいいから・・ね?」
アイシャ「・・・・そのような誇り高い文字をお名前に記されながら・・・・
なんて謙虚なお方なのでしょう!・・・では・・カベ様!」
カベ「様はちょっと・・・・」
アイシャ「ではカベさん!・・・ええと・・・この綺麗な道を歩かせていただきます!」
カベ「もちろん」
2人は再び歩きだす。
(ぐうううううう)
カベ「そういえば食べ物を探してたんだった。あの巨大カマキリの生態をまじかに見て自分がご飯にもなりかけたから・・・食欲失せて空腹も忘れてたよ・・」
アイシャ「ああ・・・そうでしたね!・・かわいそう!どうしましょう
何か食べる物が周りにあれば・・・何をなさっているのですか?」
真守「・・・この草食べられそうかなって・・(もぐもぐ)」
道端の草をしゃがんで吟味する。
アイシャ「はわわわ!・・・牧場の動物さんみたいですよ!><
およしになってくださいませー!!せめて木の実とかを!><」
真守「木の実・・・高い木ばかりだし 木の実があっても採れなそう
あ!」
大通りの左側の草原の高い木の頂上近くの枝に、洋梨に似た果実が自生している。
真守「やっぱり採れないかあ・・・」
アイシャ「長い木の棒なんか探してみますね!あきらめないで!」
真守「棒って言っても10メートルはあるしなあ・・・そんな棒・・・持てる
ものじゃないし・・・」
アイシャ「めー・・・とる?・・・カベさんの国の、物の縮尺の単位でしょうか?」
真守「あー、そうそう! だよね 他の世界じゃいろいろボクのとことは重さも温度も角度の言い方も違うんだろうなあ 覚えないと困るよね・・」
アイシャ「心配ありません、私が一から教えさせていただきます!」
(๑•̀ㅂ•́)و
アイシャ「なにかワクワクしてきました!わたしがカベさんを助けられそうなこと、じつはたくさんありそうで!」(◕ฺ ω◕ฺ )むふう
真守「ハハ、ありがとう!」
小鳥が2人の前の木の上の枝に留まる。
真守「空が飛べたらなあ」 アイシャ「飛べるんですか!?」
真守「さすがにないわ」 アイシャ「そうですか・・・」
真守「・・・・待てよ?」 アイシャ「・・・・?」
壁をペガサスマンティスからの防衛に出した初回の使用のように
目の前の地上1・5mくらいの空中を底辺に、長径2mの壁を出してみる。
少し壁を見つめて考えて 目線を横に動かすと
壁が目の動きに合わせるように左右に空中を動いた。横方向には動くが上下に揺れは全くない。左右の動きを3往復させると上下にも動かせるか念じる。
↑↓にも動かせる。これも左右のぶれや、前後へ勢いで傾く様子もない。
念動力のようだが重さを持つ物体を体力と引き換えに重力に逆らいながら
持ち上げる物理運動とは異なるようだ。
動かした方向以外のベクトルの力が存在していない。慣性がまるでないのだ。
まるで関数のグラフで点が直線の座標をまっすぐ動くように、3Dの造形物を編集ソフトの画面においてコマンドで動かすように
抵抗なくひっかかりのない素直な動き
見た目は煉瓦の重そうな壁なのに重さをまるで感じない。
その気になれば懐中電灯のライトを高速で振り回すように急な高速運動もできそうな気がする。
アイシャ「はわ!こんな重たそうな壁がかろやかに、自由に飛んでいます!
壁を作れるだけじゃなく、自在に浮かせることもできるんですね!
すごいすごい!」
真守は位置の移動の試用を一通り終えると別のことを念じる。
壁が傾いて水平に寝かされた。その壁を足元にゆっくり、高度を下げて
引き寄せ、地面から10㎝ほどに浮かせた。
アイシャ「もしかして?」
真守「うん!」
真守は横のアイシャに目配せをすると 右足から浮遊する壁の上に乗った。
壁が高さを上げていく。大きな木の、高く生っている洋梨に似た果実のところまで真守を乗せて上昇する。
アイシャ「ふわあ・・・・」
真守「よし、採った」
果実を二つもいでアイシャのところまで壁を下降させる。
真守「はいこれ!どうぞ!」
アイシャ「・・・・!ありがとうございます!カベさん!」^^
真守「ちょっと待って、パク、・・・・おいしい!いけるよコレ!食べられる実でよかったあ!」
アイシャ「あー、大丈夫ですよ!その実はよく食べられるモノですし
毒や見たことないものなら引き止めますから!」
真守「あ、そもそもだいじょぶなやつなんだ・・・なんだ・・」ガクッ
ちょっとかっこをつけて毒見した意味はなかったようだ。
大木の木陰に腰掛けて二人は果実を食べ終えた。
真守「ふう・・・やっとおいしいものを食べれた」
アイシャ「街にいけばもっといろいろな料理やお菓子がありますよ!
まだまだ楽しみは序の口です!」
真守「そろそろ行こうか」
アイシャ「はい!」
真守「ゆっくりいきたいところだけど、おじさんの薬を届けなきゃだし
ペースを上げてみようかな 閃いた!」
アイシャ「?」
真守は水平の壁に乗る。
真守「乗ってみて」
アイシャ「え?・・・はい・・・こうでしょうか」
二人が乗ると壁は再び離陸して1mほどの高さになる。壁は二人を乗せても重さに耐えかねて下がる様子もなく大通りの方向に空中をゆっくり進んでいく。
大通りに入ると街の方向へ真守は壁を方向転換させた。
真守「じゃあ!行こうか!」
アイシャ「まさか!」
二人の乗った壁が少しづつ、スピードを上げて地面と平行に直進していく。
歩く速さから徐々に、早歩き→駆け足→人の全力疾走→大地を駆ける馬ぐらい
さらに加速する!
真守「どう!?速すぎてこわかったら行ってね!」
アイシャ「ええ!このぐらいなら平気です!ふわあ!」
アイシャがよろけて真守の左脇に寄り掛かった。寄り掛かって真守の袖を思わず握る。
少し恥ずかしみを感じた真守 アイシャは自覚もなく真守の体に身を寄せて
両手で袖を握って姿勢を安定させていた。
真守「あ・・・じゃあこのくらいで・・・一気に街までひとっ飛びしよう!」
大通りの上を風を切って、いかなる障害もなく空を飛んでいく壁
アイシャ「この速さなら街はきっとすぐです!すごいすごーい!
やっぱりカベさんは壁の魔法使い様です!!!昔話に出てくる空飛ぶ絨毯みたい!!!」
空を行き続けて20分ほどたった。木や草原の続いていた景色に、まず人間が建てたと見て間違いない家が現れた、家の数が少しづつ増えていっている。
壁を進ませていくにつれてその規模は小さな町にみえるようになり
さらに規模が広がっていく。
真守「これはみんな人が建てた家?そうか・・・やっと他の人間と会えるんだ・・・人が住んでいるとこまで来れたんだ」
アイシャ「はい!・・・もうすぐ中央の街へ入る門が見えてくるはずです!
それと」
アイシャが意味ありげに言葉を止めると、道を複数の人々が歩いていて
よく見るとその中には、ある人は頭髪から2本の角が覗いていたり、
ある人は手首と肩と顔が緑色の皮膚で全身がそうに思われ
またある人は頭頂にネコのような耳を生やし、毛に覆われた尻尾を揺らして歩く女性
真守が知る人間の形態の定義とは異なる特徴が足されている人々がいる。
それでも肌色で角も翼も尻尾もない既知の姿の人間の割合が多いが
アイシャ「この国はですね!いろいろな種族の方たちが住まう他民族の社会なのです!獣人族さんやドワーフさんやエルフさん他にもたくさん!私もノームでこの国の民です!皆さん仲良くして平和に暮らせています。
そういえば、カベさんは・・・ヒト族?・・・ですよね?」
真守「え?・・・そりゃあボクは・・・ちゃんとヒトに見えてるのかな?
そういえばまだ鏡も見てなかったし、ヒトなんだボク・・・
サルとかじゃなくてよかった・・・・」
アイシャ「・・・(•ω•)?失礼ですが、もしかしてカベさんは御自分の種族がわからないのですか?」
真守「え?ああ!ああ!ボクはね、気が付いたらこの国の辺境にいたみたいで
一度死んで・・・じゃなくて死んだと思ったくらい気絶してて
その前は間違いなくヒトだったけどボクを運んできたのはとても不思議な力みたいで、もしヒト・・ぞく?以外の種族に変えられてることもあるのかなあっと思って・・・」
アイシャ「・・・カベさんは、例えば私と同じ種族になったら不安ですか?」
真守「あ・・・違うよ?ヒト以外が不安とかダメなんじゃなくて
ヒトに生まれてきて、やりたいことがあったんだ。それはヒトだったからこそ見つけられたものだと思うんだ。犬とかネコに生まれてきたらそれはそれなりの幸せがあったかもしれないし、ヒトに生まれたけどいいことばかりじゃなかったし、ボクの場合・・・悪いことがかなり多いかもしれない
だけどね、ボクはヒトでよかったと思うことに出会えた。
それを一度は奪われかけたけど、取り戻すチャンスをもらえた。だからやる。
やりとげれば、ヒトとして、勝てたと思える。ヒトに生まれたことはハズレなんかじゃない、当たりだったんだって。
例えこの世界ではヒト族以外に変えられても、最後にはヒトに戻って元の人生を取り戻す。それだけ
他の種族や民族の人が劣ってるなんて絶対思わないよ ノームの人もエルフやドワーフもボクの国でも知られてた。(創作でだけど)
みんなヒト族なんかよりすごい種族だって思われてて、憧れるヒトがたくさんいる。」
アイシャ「ええ?Σ( °ω° )はわわ!エルフさんやドワーフさんたちはもちろんですが
私たちノームの民までも?憧れてもらえるなんて・・・そんな・・・目立ったことはしてませんよお(n*´ω`*n 恥ずかしくて・・・・もったいなきことですう・・えへへ・・・」
真守「そして、ヒトにはヒトのいいところがある・・・と思う。
他のそういう種族の人たち比べたらヒト族なんてって卑屈になる人もいるけど、ヒト族だからこその優れた部分があって、人生がうまく行ったヒト族はそれをすでに手に入れてるんだと思う。」
アイシャ「・・・そうなのですね!ヒト族に生まれたこととしての誇りがあるということ。他の種族の方々を敬って自分の種族にもきちんと誇りがある
それは大切なことです!」
真守「うん!・・・あ・・いや・・・ちょっとだけ違うかもしれない。
一つの種族に生まれたっていろんな人生があると思うんだ。その中でたまたまボクの人生が捨てがたいものだっただけで。もしこれまでの思い出とボクの性格自体を持ち越せるなら、別にヒト族でなくてもいいわけだし
あのカマキリでもいいかな」
アイシャ「はわ!?ペガサスを食べるカマキリですか!?・・・
そうですね・・・カベさんの好みならいいと思うのです・・・
でも、あの子たちは美しいペガサスを食べるので嫌う人々もいますし
もし中身がカベさんでもカマキリでは話すことも難しい・・かなあと
大丈夫でしょうか?討伐されてしまうかも・・・」
真守「そこはあれだよ、身振り手振りでね?鎌で形を表現して伝えれば」
アイシャ「えええ!」
真守「ごめん!冗談だよwさすがに昆虫はね?嫌いじゃないけど
アレは怖かったし、自然界では有利だろうけど誰かと話すなら困るし
人間の頭のままで昆虫の体じゃ動かすのに苦労しそうだしね」
アイシャ「はわ、ふう・・・よかった・・・でも・・・
心がカベさんのままで
あの時と同じように雨から守って頂けていたなら・・・・カマキリさんでも
・・・・いいと思ったかもです」><
真守「ヒト族以外に生まれたならまずノームと思った。」
アイシャ「え?・・・それは・・・お世辞でも、ご冗談でもありがとうござ・・」
真守「本当だよ?だって、会ったばかりだけど、アイシャさんは素敵な人だと思ったから、心が綺麗だし」
真守は同じく声も外見も女の子として可憐だと言おうとしたが恥ずかしいのでそう続けるのは止めた。
アイシャ「(๑°ㅁ°๑)!!」
真守「アイシャさんみたいな人がいるなら、アイシャさんのそのノーム村だっていいところなんだし、特徴もヒト族とそんな変わらないみたいだし
元の生き方に戻ってもノームでいいかなって思い始めた。少なくともボクの中では・・・もうノームって種族が好きかも・・・ボクの国でもいいイメージしかないし、今日改めて感じた!アイシャさんのおかげだよ!」
アイシャ「∑(ʘдʘ)!!Σ(ʘωʘノ)ノ(๑ʘㅁʘ๑)!!ฅ(º ロ º ฅ)( °-° )( •ω•)
(∗˃̶ ᵕ ˂̶∗)(❃•̤ॢᗜ•̤ॢ)(ू•̤ᗜ•̤❁)(❁´ ︶ `❁)(´∩∩`)
その・・・・そんなに褒められて・・・光栄です・・・
ノーム村の者としてこれまでより一層の努力を・・・むふ・・・」
真守の掛け値なしの心からの言葉に感激と羞恥にうつむいて
何を言っているのか聞き取りにくいアイシャだった。
真守「あれ?あの人たちは?」
そうこうしているうち まだ少し遠くではあるが視認できるほどに
30mほどの高さの壁、真守の作り出す壁とは違う本物の石材でできた壁
それを連ねて建てられた城壁とその周囲に広い水路とそれに掛かる橋
橋の先にはゲートがある。そのゲートをヒト族やその他の亜人種の市民たちが
出入りしている。それは城壁の内部への門 とうとう着くのだ 中心街に。
そして橋を渡り終えて大人数と馬たちでまとまった集団が真守たちの方向に向かってくるのが見える。全員が騎乗して銀を基調として青い縦線のある鎧と兜に身を包んで馬の平常時の歩行で大通りをゆく。
アイシャ「あの方々はこの国の防衛兵団です。街の治安を保ち
この国に災いが降りかからないように外よりやってくる恐ろしいもの?を迎えうち、私たち国民を守ってくださいます。」
真守「この国の軍隊の人たちか・・・じゃあもうこの壁は降りた方がいいかな?怪しまれて何か言われるかもしれないし」
アイシャ「それならば心配いらないです!」真守「どうして?」
アイシャ「あれを!」真守「!」
アイシャが指さした城壁の上空に、空を駆けるペガサスたちが14頭ほど同じ空域内で旋回していた。
真守「うわ!あれは?ペガサス?今日は見るのは二度目だなあ。なぜあんなところを」
よく見ると全頭誰かが騎乗している。こちらの通路上ではちあいそうな防衛兵団の一部隊と同じ鎧を着ている。城壁の空いた天井を警備しているのだろうか
アイシャ「空の騎兵さんたちです。街の空を見張っています。」
真守「空からの敵も警戒しているんだろうけどそれならなおさらボクたちは
ますいんじゃ・・・低いけど空を飛んでて、未確認飛行物体ていうか
所属不明機ていうか 空軍ならそれを捕まえるんじゃ・・・」
アイシャ「あそこも、ほら!」
アイシャが言った先に今度は、空から人が下りてくる。
何か空を飛ぶ生物に騎乗していたのではなく空を飛ぶ翼が背中に生えている亜人の市民がゲートの前に降下し、地に足をつけて歩いてゲートを抜けていく。
真守「空を自分で飛べる人たちもいるんだ!」
アイシャ「はい!ああいった種族の方々や道具を使って空をいく人たちも多く訪れるので、この国では珍しがられることではなくなっています。飛んで悪いことをしない限りは呼び止められることもないかと思うのです。ただし飛べるのはここの外周地までで、城壁を越えて中に入ったり、城壁内でみだりに飛行することは認められていません。」
真守「なら、門の前で下りないといけないんだね わかったよ」
中心街のゲートへ向かって他の通行人の邪魔にならないように街の大通りの左側を低空飛行する真守とアイシャの乗る壁と、逆に大通りの中央を並列を組んで郊外のほうへ進む防衛騎士団がすれ違う。真守は兵士たちの兜の横顔を見つめるが彼らがこちらを見返してくる様子はなく、壁で飛ぶ二人を特に意識している者はいないようだ。アイシャは胸に右手を当て少しお辞儀するように頭を下げて、防衛騎士団たちに敬意を込めた挨拶をした。
真守「ほんとうに怒られないみたい」
アイシャ「でしょ?この国は多少の珍しいことには慣れっこで寛容なのです!」
真守「寛容な国なのかな よかった。貴族とか平民とかにわかれて格差社会で
奴隷制度とかあって、国民には食べ物もろくにない国じゃなくて・・・」
アイシャ「はわわ!そのようなひどい国ならば来ません!><安心なさってくださいませ!!どうしてそんな心配が・・・?もしやカベさんのお国ではそうなっておられるわけでは・・・?」(´;ω;`)
真守「ちがうちがう!ボクのいた国は一応身分の階級はないし、満足に食べることだってできるし、寛容っていうか、よくも悪くも他の人に無関心っていうか
でもボクの国から海を少し越えた他の国には今もそういうところがある。悲しいけどね・・・」
アイシャ「・・・なんだか同じですね・・・お互い生まれた国はいいところでも周りはあまりいいとはいいがたい国があって・・・・」
真守「・・・そうなんだ・・・」
アイシャ「私は望みます・・・自分の国だけではなくこの世界の全ての国の人々が幸せな日々を送れるように」
真守「・・・」
二人の壁と部隊はすれ違いを終えて入れ違いに離れていく。
騎士「隊長、今の二人、引き止めて何者か問い詰めずによいのですか?」
女性の騎士団長「・・・ん?・・あの板で飛んでた者たちか?・・・
そうだな・・・・・・・・・・・まあ今はいいだろう!☆」
騎士「本当にですか?近日発生している辺境の盗賊襲撃事件との関係を疑えるかもしれません」
女性の騎士団長「そうかあ?何か怪しかったか彼らは?」
騎士「壁に乗って飛んでいたのが、まだ見ぬ飛行方法です 未知の魔法を使う外部の者たちかもしれないと考えます」
女性の騎士団長「空の飛び方なんて、いろいろなものを見てきただろ どれだって不思議だったし、新しい飛び方にしちゃあ 大通りを正直に通り他の者を避けながらやたら低く飛んでた 随分つつましいじゃないか
それに乗っていた女の子のほうは私たちに挨拶をしてくれていたぞ?
あれは・・・この国のいち国民の何気ないしぐさだ
よその怪しい者ではないな」
騎士「偽装も考えられます。この国の習慣を前もって調べ、国民を装い
怪しまれず潜入する可能性は?」
女性の騎士団長「ふむ☆どそれもないな
監視部が草原の通りに、壁を未知の魔法らしき術で即座に建造する何者かを見つけたが、娘と居合わせて雨でぬかるんだ地面を踏まないように道を舗装したり、そこらの果実を二人で分け合って楽し気に話していたと。会話内容には潜入や破壊行為の企みを思わせる暗号さえ見当たらないと。ただの若者同士の何気ない無垢な慣れ合いだったとね」
騎士「そうですか・・・ならばあの者たちは捕らえずともよいと」
女性の騎士団長「一応その不思議な術で出した壁は調査しておくがな
それよりも今問題は、なぜ盗賊など現れたのかだ 国境付近まで監視部を張り巡らせているのに、誰もその犯行の始まりも最中も見ていないという 発見したのはその場所以外の管轄の隊員が、慌てる御者と散りじりになった馬たちに気付いて駆けつけたら馬車が壊されていたことだけ おかしくないか?」
騎士「それは確かに!・・・辺境ほど国民が少なく、人知れずなんらかの災いに巻き込まれぬように、この国では監視部隊を辺境ほど多数配置しています。
ですがどの者も事件発生に気付かず、しかもただの定期の馬車を襲う意味が不明です!盗賊団を潤すほどの金品などあるはずもなく、どういうことなのでしょうか?」
女性の騎士団長「だろう?非っ・・じょーうに臭い☆ ぷんぷんだ
何かやばいぞ 災厄の付け火でなければいいが・・・
これは忙しくなりそうだな…ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"
もうッ!!!(ꐦ°᷄д°᷅)(ヤダヤダ・・・)」
騎士「隊長・・・?」
そのころ真守とアイシャは中心街のゲートの前に到着した。
浮遊する壁を着地させて二人は道に降りた。
真守「ここからは壁はしまうと」
見て念じると青い光の線が壁の片方の短辺からもう片方の短辺に移動するにつれて、壁が短くなっていく。スキャナーの読み取りのように光の線が進んだ後の部分から壁が消えていくのだ。
残りわずかな棒のようになった面積を光の線が進み尽くすと存在したことが嘘のように完全に壁は姿を消した。
アイシャ「到着です!やっとおじさまのお薬が買えます!・・・・
あの・・・改めてお礼を言います。本当にありがとうございます!!」
真守「まだ早いよ、お礼を言ってくれるなら、おじさまに薬を届けてからだよ」
アイシャ「いえ・・・途中であっても何度もお礼させてください。
カベさんにはすでに多くをお世話になっています!だから」
真守「う、うん。そっか・・・とにかく中に行こうよ」
アイシャ「はい!」
ゲートの両脇には見張りの騎士が一人ずつ立っている。その間を抜けて
出入りする人々に紛れて二人は中心街へ踏み入れた。
城壁の外よりもたくさんの人たちがいる。食料品 飲食 衣服 靴 家具、玩具、宝石、酒場、宿屋 鍛冶屋 通りの両脇に各種の店舗が連なっている。
真守(中世ヨーロッパに近いかな だけど 綺麗に整備されてる 衛生のこだわりがあって 雰囲気も濁った感じがしない 日本の都市よりもそこは優れてるように見える。生き生きしてる。街自体が千葉県にある友達が多い人たちが逝くテーマパークの売店みたいで、見てるだけで楽しいっていうか
来てよかったかも!ワクワクしてきた!)
アイシャ「えーと ここからこの道に左に曲がってそこから斜め右に・・
うー・・・・」><
アイシャはシテイマップであろう印刷物を見て薬屋への道順を確かめるが
忙しくマップと実際の街並みに交互に眼を往復させて苦闘の睨めっこに勤しんでいる。
真守「見せてもらってもいい?」
アイシャ「ふえ?(*'ω'*)・・・はい・・・」
真守「今ボクらはここで・・・あそこで右を曲がって・・・」
真守の指し示す方向に行くと街の病院らしき建物とそのとなりに薬屋と見える小屋 その前に出ることができた。
アイシャ「すごーい!カベさんはこの街が初めてなのに地図が正しく読めるのですね!・・・・わたくしなどもう5回来ているのに><・・うう・・」
真守「・・・はは・・いや、ボクのいた国の街がとても入り組んでてね
地図を見ただけじゃわかりにくくて、ずっと住んで慣れて覚えないと行けない
ところで・・・この街の地図が分かりやすくて親切で形だけはわかっただけだよ この文字は初めて見るもので全く読めないし」
アイシャ「カベさん・・・そうですか・・・いきなり知らないこの国に運ばれてきたのですよね・・・この国の文字の読み書きは・・でも!それほど難しい文字でもないですしすぐにできますよ!」
真守「いや、見たところとても難しそうだよ・・・僕にとっては古の呪文みたいに見えてくる文章だね・・・頭が痛くなってくる・・・勉強しなくちゃならないのかな・・・とても覚えられる気がしない・・・壁を呼び出せるなんて不思議ななことができるようになったけど・・・いきなりハードル高そうで前途多難は変わらないのかな・・・」
アイシャ「・・・・」
アイシャは少し不憫な顔をする。しかし何かを思いついて優しく微笑えんだ。
アイシャ「わかりました!!」
真守「・・・何が?」
アイシャ「わかりました私!!私がカベさんを助けられそうなことを一つ!」
真守「?」
アイシャ「私がカベさんにこの国の読み書きを教えます!・・・
ごきげんようからありがとうまでの挨拶の綴りや、ことわざや格言まで 難しい言葉もあります、でも覚えていけば少しずつ自信もつきます!
そうしてカベさんはみんなと仲良くなれる!」
真守「アイシャさん・・・」
アイシャ「怖がることなんてないです!
カベさんがこの国の他の人たちともうまくよい関係を築けるように!
カベさんがこの国を好きになって、世界への怯えも無くせるように!
見ず知らずの国に来て不安でも
誰かを想いやることができるカベさんは強い人のはずです!
カベさんは私に優しくしてくれた。この国で最初に出会った私に・・・
ですから、この国でまず最初に始めるべき読み書きは、最初に出会ったわたくしが教えたいのです!!
どうか わたくしに任せていただけないでしょうか?」
真守「・・・・ありがとう・・・でも・・・ボクは英語、いや
学校で他の国の言葉を学ぶ授業でも・・・成績悪かったし
アイシャさんの母国語の勉強について行けるかどうか・・」
アイシャ「大丈夫です!学校の先生みたいに堅苦しいつもりはありません。
丁寧に少しずつ、わかるまで何度でも、優しく教えてさしあげます!
カベさんが楽しく読み書きを覚えられるようにわたし・・・どうか」
真守「!・・・・・わかったよ・・・その・・・お願いします。」
アイシャ(・・・(´。• ω •。`)ふふ・・・(⌒▽⌒))
アイシャ「はい!しっかり務めさせていただきます!」
申し出を受け取ってもらえた喜びを切り替えてアイシャはここに来た目的を
振り返る。
アイシャ「そうと決まればです!すみやか最初の目的を果たしましょう!
やっとおじさまのお薬が買えます!!」
二人は薬屋に入った。会計机に女性店員と上司らしき薬師の髭の老人が話している。アイシャはポケットから紙を取り出して二人に差し出して見せる。
アイシャ「これが村のお医者様の書いた診断書です。このお薬をください」
女性店員「はい。ええと・・・はい!確かに承りました。おじさまの胸の病に効く薬ですね!」
薬師の老人「発病から日がまだ浅い、今から届ければ治るだろう だが
辺境で盗賊が馬車を襲ったと知らせが広まっている。一時、各種の乗り物は出発を見合わせているようだ。盗賊などこの国には何十年と現れたことがなかったというのに妙なことだな。」
アイシャ「わたし、盗賊たちを見ました。」
女性店員「ええ!?」
薬師の老人「よく無事であられた・・・ここまでの足はどうしたのかね?村の馬でも乗ってきたかね?」
アイシャ「・・・あー、いいえ!私はお馬さんを操ることはできませんし
小さい頃大人の人たちの後ろに乗せてもらったくらいで><」
薬師の老人「では?その足で来られたのか!?なんとたくましい!」
女性店員「それは大変!おじさまのためにそこまで・・・こわかったでしょうに・・・」
アイシャ「いえいえ!盗賊たちに見つからずには済みましたが 大雨に降られてしまって、でもこのお方に助けていただきまして!無事に街まで迅速にたどり着けました!とっても不思議で便利な魔法の壁をつk」
真守「おっと!アイシャさん!」
アイシャ「!!はわわわぁむふぉむう!・・・・カベさん!?」
真守は咄嗟にアイシャの口を右手で封鎖した。
薬師の老人「君がこのノームのお嬢さんを守ったのかね?
見たところは華奢で肉体は心もとなさそうだが眼鏡で知恵は効きそうだ
いずれにせよ盗賊の集団相手にどのような手があったのかね?」
女性店員「便利な魔法・・・魔法使いなのですか!?どんな魔法で物騒になった道を問題なく?離れた場所を移動する魔法でしょうか?」
薬師の老人「転移魔法・・・ですかな?」
真守「え!?・・・ああ!・・・・そうですそうですう!街まで速く行きたいし道も泥だらけでアイシャさんの靴が汚れちゃうからその、
転移魔法で一気に街まで距離をショートカットしました・・・へへw・・・」
薬師の老人「なんと!そのような術が使えるとはさぞ高度な魔法使いと存じられる!これは失礼を・・・」 ペコリ
女性店員「まあ!それは確かに便利な魔法ですわ!他の人と一緒に転移できるなら物も運べて流通も捗ったり」
薬師の老人「どうだろうか?昨今の治安の悪化もあり、時間や距離によらぬ移動ならそれを気にすることもない。この店の薬と材料を運ぶ仕事をしていただくなどはどうだろうか?・・・」
アイシャ「え!・・・それは、仕事が見つかるのはいいことですけどカベさんは・・・」
真守「あー・・・せっかくだけどそれはできませんね。」
女性店員「どうしてですか?」
真守「ボクの魔法?はですね・・・つい最近身に着けたばかりでして、
多分不安定で商売とかには向かなそうだし、この力はひどいめにあって本当に
困ってる人を見つけた時に、その人を守るためだけに出せる制約がある・・・
ぽいんですよね(かっこつけちゃったかな・・・汗)
それに、すごい魔法をいきなり業務に使ったら、それまで体や頭を使って地道に頑張ってきた人たちの仕事がなくなるかもしれませんし、
ボクはそういうことは望みません。
そしてボクはこれからこの人を村まで無事に送り届けなければなりません。
ですから、仕事をもらえるのはありがたいけれど、今回は遠慮させていただきたいです。」
アイシャ(!)(*'ω'*)
薬師の老人「そうか・・・浅はかでしたな。お若いのに力におごることなく
周りの人々のことを案じておられる器、壮年になる頃にはさらに偉大な魔導士として大成することでしょうや」
女性店員「まあ!魔法使いで紳士なお方なのですね!
あなたはとっても幸運ですよ!こんな素敵なお方の傍らにいて守っていただけるなんて!いいなあ!私も貴方様のような殿方の恋人が欲しいです!」
真守「はぁ!?いえ!アイシャさんはそういうのじゃ
アイシャ「え!?はわわわ!え~とカベさんはですね!その//////
行きましょう!失礼しましたあ!」
アイシャは恥ずかしさのあまり真守の袖を引っ張って薬局を飛び出した。
アイシャ「ふう、とにかく、お薬は買えました!あとはノーム村に戻るだけです!」
真守「そうだね 行こうか この街には来たばかりだけど、
見てるだけで楽しかったよ。暮らしてる人たちもいい人が多そうだし」
アイシャ「それはよかったです!おじさまの病が治ったらまた来ましょう!
次はもっといろいろな楽しいものをゆっくり見ましょうね!」
真守「うん!」
(ぐうううううう)
真守「・・あー・・・」
アイシャ「あ・・・」
街に入る前の道中で食べた果実だけではすぐにお腹が空いてしまったようだ。
真守「・・・また道に果物あったら食べるよ なくても草だっていい」
アイシャ「いいえ!!」
トンッ
強く地面を蹴って真守の前に躍り出るアイシャ
アイシャ「ダメです!ダメですよーカベさん☆ きちんと食べていきましょう!あと読み書きを覚えるための本も必要ですね☆」
真守「アイシャさん?」
アイシャ「それくらいすぐに済みます☆発つ前にご飯もしっかり食べて書店によりましょう!難しくてカベさんがめげないようにまずは簡単な子供用の本から始めましょう!挿絵があってどの文字が何を意味するのかすぐに分かって楽しいですよ!」
真守「子供よう・・・(まあ今は・・・ボクはこの国では情報アドバンテージのない小さい子供も同然だし・・贅沢は言ってられないかも・・)」
アイシャ「子供の本で慣れたら、少しずつ上の位の本で勉強していきましょう!」
真守「うん・・・でも・・・ボクはお金ないし・・何か仕事が見つかってから
働いてもらったお金で自分で食べ物も本も
アイシャ「何をおっしゃいますかあ!?そのくらいの持ち合わせがあるから
言っているのです☆ここまで助けていただいたほんの少しのお礼なんです!
さあご遠慮なく!」
真守「でも・・・」
アイシャ「・・・・・・こうやっておしゃべりしてる間にもおじさまの命の灯は・・カベさんは引け目を感じて申し出を受けてくださらず・・・・
カベさんが了解しなければ私は動けずノーム村には帰れず・・・一体私はどうなされば・・・およよ・・・」
アイシャはわざとらしく八方ふさがりを演じて塞ぎこみだした。
真守「動けないって・・・アイシャさん・・・大袈裟な・・・」
(ぐうううううう)
アイシャ(・ωノ| チラ、チラ
真守「わかった!また何か食べて本屋さんに行こ・・」
アイシャ「そうですよねー☆!では!!」
アイシャは偽装を解いて 真守の手を握って引いた。
真守は心臓が痛んだ。唐突な驚きと少しずつ沸いてくる喜びに面を食らった。異性と手をつなぐのはお互いに無邪気だった園児や小学生低学年の時
それ以降は体育やレクリエーションのダンスでの女子の嫌々ながらのもの以来
今のアイシャの手はそのどれとも違う気がする。アイシャの友愛?アイシャも無自覚な気がする。
アイシャ「えへへw・・・ごめんなさい☆
押してもダメならその壁を引いてみる作戦成功です!あのパン屋さんにしましょう!芳ばしくて美味しそうです!!」
二人はホットドックの屋台に似た露店でパンを選んだ。
アイシャ「私はこれで!カベさんは?」
真守「ボクは・・・これで!」
店主「はいよ!野菜多めの魚肉挟みとそっちのあんちゃんはペガサスの肉のやつね!」
真守「ええ!まさか!」
アイシャ「はわわ!・・・・ペガサスマンティスみたいですね・・・」
真守「まいったな・・・・・・ふ・・・ふw・・あははははw」
アイシャ「・・・・ふふふふw」
真守「あははははw」
店主「あん?」
奇妙な巡りあわせに二人笑い合うことで、恐怖の思い出がだいぶ和らいだ。
次に二人は街の書店に来た。アイシャは本棚を見上げて子供の語学の学習本を吟味する。
アイシャ「これです!これがいいです!」
アイシャがその本をめくると、開いたページには子供が親しみやすい
かわいらしげな等身の少ない絵で描かれた、中世の冒険ファンタジーに登場するような剣を携えた勇者の少年と魔法使いの少女のキャラクターが写っていた。その二人が村を発ち、森や川、洞窟、やがて城へ 手を取り合いながら
道中にある石、草木、花、動物たち、そしてドラゴンの絵に
それぞれを意味する単語が指し示されている。
冒険というシュチュエーションで世界に存在する物事の名前の文字を知っていく。子供が楽しく言葉を覚えられるよう工夫された形式になっている。
真守「わあ、これは面白そうだなあ これをボクの歳で読むのは・・・・
ちょっと恥ずかしいかもだけど//////仕方ない」
アイシャ「この本は私が小さいときやノーム村の小さい子たちも読んでいる人気の本なんですよ!国が教育のために各地に配っていただいているのです☆」
真守「そうなんだ!じゃあこれで!」
街の噴水の広場に二人は来た。アイシャの言葉通り時間は20分もたたないうちに街を出るまでの真守への用事は済んだのだった。
真守「今日はありがとうアイシャさん。仕事が見つかったらお金は返すから」
アイシャ「ですから!返さなくてよろしいです!これは感謝の気持ちなんですから☆」
真守「本当にいいの?」
アイシャ「はい!カベさんにはここまででもたくさん感謝しています!
村に無事着いたら、改めてお礼をさせてください。ちいさな宴くらいなら用意させていただきますから!!」
真守「宴・・・か・・・騒がしいのは苦手だったけど
アイシャさんの親しい人たちとなら話もしてみたいと思うよ」
アイシャ「いい人たちばかりですよ!きっと皆さん興味津々で話を聞きたがると思います!」
真守(皆さんか・・・大人数に質問攻めされて体がもつかな・・)
「じゃあ、ノーム村に出発するよ アイシャさ・・
アイシャ「カベさん」
真守さん「ん?」
アイシャ「アイシャ・・・でいいですよ。ちょっと長すぎて、えへへ☆
それにカベさんとは親しくなりたいですから!私にとってはもうカベさんは友達です!」
真守「いや・・・そんな馴れ馴れしく、アイシャさんに失礼だと思うし」
アイシャ「馴れてはいけませんか?」
真守「え・・・」
アイシャ「カベさんは私と慣れ親しむのは嫌でしょうか?・・・」
真守「・・・いいや・・・嫌じゃないよ・・・仲良くしたいと思う」
アイシャ「そう言ってくださるなら☆、お願いします」
真守「・・・じゃあ、アイシャ?行こうか・・・」
アイシャ「はい☆!」
ゴオオオオオオン!!
そのとき突然激しい轟音が鳴り響いた!
通行人「今のはなんだッ!?」
商人「なんだなんだ!何が起きたんだ!?」
通行人「城壁のほうから聞こえたぞ?何かの爆発か?」
アイシャ「きゃあ!」><
真守「!」
中心街を囲む城壁で事は発生していた。
真守たちから東の方向の城壁 そこに大量の煙と土埃が近くにいた人々を包み込んで立ち昇る。それらが落ち着いて薄くなり煙の向こうに隠されていた状況が徐々に表れてくる。周囲の地面には大小さまざまな岩や石が飛び出て転がっている。その石は城壁を形作っていたものだった。何者かが城壁を突き破って来たのだ。何らかの手段で 常人ではない強いパワーで
影 歩いてくる一人の人物の影が薄くなる煙に浮かび上がり、
その影と煙を突き抜けて鬼のような2本角が生えた男が一人現れた。その場に居合わせた人々に加えて
街の奥から群衆たちが、起こされた事案を確認しようと集まってくる。
その群衆たちの中に茶色のローブを纏って顔を隠している者たちが
1人だったり2人だったり、3人だったり、そうやって分かれて各自まとまったグループが散り散りに、複数点在して紛れて立ち、砕けた城壁の穴より歩み出て侵入してきた男を全員が見ている。
「ふーーーーーーーーん・・・」
男は手首を優雅に柔軟体操のように振り、首を左、右に傾けて骨を鳴らす。
「今日も俺様の拳はキレているっ・・・ふっw」
群衆たちが息をひそめて向けるまなざしを見渡して吟味すると不敵で余裕の、下卑たニヤケた口を開く。
「ご機嫌麗しゅう民衆の皆様方!俺様は盗賊団頭目ギルガ
穏やかな一日をお騒がせすることを心から謝罪申し上げる!!
が!この国の財宝は頂いてまいります!w
どうかそのままおとなしく御静止なさっていただきたいwさすれば可能な限り
皆様は無事でいられる!
しかし仮に!、無いとは思うが仮にい!?
俺様がたの頼みごとを聞き入れて下さらぬ場合いい!
俺様の部下がもれなく喉笛を掻き切る施しを提供させていただくか
この壁のようにい?俺様の山をも砕き得る鉄砲水のごとく超剛拳にて
五体を石切り場の砕石のごとく地に敷かせていただく!
・・・・・・・・・・・・・・わかりましたかコラァ・・・?」
慇懃無礼な演説から、目を腫らした狂気の威圧の形相を街の人たちに向ける
ギルガ
タイミング示し合わせたように群衆の中のローブの各グループが全員 湾曲した刀や斧などの得物を取り出し、近くの一般市民の男性や女性、幼子までも掴みよせて首のあたりにかざし始めた。ローブも勢いよく脱ぎ捨て、盗賊団たちは正体を現す!
女性「きゃあああああ!」
男性「やめてくれえ!!放せ!!」
幼い子供「うわあ~んお母さん!怖いよ!!」
盗賊「ひゃははは!黙れえwお前たちは人質だあ!」
盗賊2「騒がなきゃ何も起きねえよ!これで兵士も手が出せねえw!」
真守とアイシャはその修羅場のもとに走りついた。
アイシャ「ああ!私が見たのは、あの盗賊たちです!なんてひどいことを・・・」
真守「・・・・・」
防衛兵「貴様らあ!何をしている!!」
防衛兵2「馬鹿なことをしてくれたな!武器を静粛に投稿せよ!
さもなければ実力で排除にうつる!」
国の防衛兵団が戦場に続々と集合してきた。
盗賊「馬鹿かあwwこいつらが見えないのかよお?ww」
盗賊3「おまえらこそ武器を捨てろやあ!こいつらをぶった切るぜえ?
それに名高いこの国の兵士のお前らでもオレらのお頭には及ばねえ!
無駄なんだよ!財宝の倉を教えろ!ww」
防衛兵「何い!?」
防衛兵2「卑劣なことを!!・・・」
???「そうそう・・・・・すべて無駄だあ☆お前らにできることはそれしかない!」
盗賊3「姉御おw」
盗賊「へへへww!!」
最後にローブを外してその両陣営の間に歩んで来たのは、
姉御と称される女盗賊だった。不敵な自信の笑顔でその場を仕切りだす。
ただ・・・
防衛兵「なんだとお!?おい小娘え!」
防衛兵2「子供が出すぎたイタズラを!盗賊ども!その子は貴様らが攫って懐かせた他所の国の子供だな!?なんと非道なことを!お嬢さん!
悪いことは言わない!こっちへ来るんだ!この国が保護して親元に必ず返してやるからな!!」
???「はあ?何を言ってる?馬鹿かオマエラは・・・・
アタシはガキじゃない!恐れ多くもギルガの兄貴のただ一本の右腕であり
泣く子も黙る天下の豪裂なる女傑う!メルナ様だ!!
オマエラ!この私を前にしてもそこまで低く見積もるとは聞いたとおりにこの国の兵士の水準は高い!見上げたものだが、すぐに踏みつぶして見上げさせてやろう!それでこそ略奪甲斐があるというものだw!!」
防衛兵「いや・・・どう見てもガキだろ?・・なあ?」(隣の兵士に同意を求める)
防衛兵2「ああ・・子供でなければレーアとかの大人か?
低く見積もるとか、見上げるとかいうが・・・
そのままではないか・・・」
防衛兵3「チビだし・・・」
メルナ「・・・・・んなァ////・・・にィィィィィィ!!!」
メルナは身長にして140㎝程度 歳は10代後半ではあろうが 身長と顔立ちと声で子女と確信されても仕方のない風貌なのであった。
顔が悔しさで紅潮し始めるメルナ だが
メルナ「貴様らあああ・・・なーめーるーなあああああああああああ!!!」
メルナは兵士たちに向かって駆け足も見えない程の高速で接近し
逆手に構えた長ナイフで切りかかった!
防衛兵3「おお!!?」 キン!キン!キン!ズズーー・・・・
防衛兵は連撃を伴う突衝を受けて後退させられてしまった。
が、三連撃とも剣で受け止めて見せた!
防衛兵3「お前こそ舐めるな!!」
メルナ「ふっ!」 ガキーーーーーーン!!!
防衛兵は後退させられた距離を突進し返し、斜めに構えた剣をメルナに押し付けるが、メルナは長ナイフで受けた後、急速の後方宙返りで下方から
防衛兵を蹴り上げた!!
防衛兵3「ぬおああ!!」
背中を後方の地面に打ち付けて倒れる防衛兵
メルナ「アタシの連撃を受け返すとはマジに骨があるなw!!だーが!」
メルナは部下の盗賊たちが抱えている人質たちに長ナイフを向ける。
メルナ「忘れるなよお!?刃向かえばわかっているなァw!!!」
防衛兵「くう!・・・おのれ!」
メルナ「くっはっはっはっはっはあ!!そうだ悔しめ悔しめえい!」
盗賊「しゃあ!姉御!やっちまいます!」
メルナ「待てい」 ぴゅううううううういいいいいいい!!!
メルナが部下を静止して右手の親指と人差し指で口笛を鳴らすと
防衛兵4「なんだあ!!」防衛兵5「うわああああああ!!」防衛兵6「ぎゃあああああ!!!」防衛兵7「ぬわあああああああ!!!」防衛兵8「いやああああ!!」防衛兵9「なんだこいつはあああああああ!!!」
遠くで盗賊団に対峙していた兵団たちが空中に突き上げられている!!
兵団たちの中に大きな生き物、それが乱入してその巨体で兵士たちを次から次へと蹴散らし荒ぶって暴れまわっているのだった!
メルナ「わーはーはーはー!我が盗賊団で従えし、ビッグボアだ!!
どうだこの威力はあ!!]
体高3m体長7mほどの巨大なイノシシ、ビッグボア 辺境の山に生息する大型の猛獣が盗賊団の戦力としてこの襲撃に投入され、荒くれものたちの間でも
高い軍事水準と知れているこの国の防衛兵たちがビッグボアの大質量を凄まじい馬力でぶつけらて圧倒され、たじろいでいる。隊の統制や士気が大いにひっかきまわされて乱されている。
メルナ「そこのお前!お前はアタシをいたいけなチビ扱いしたな!お前は直々にビッグボアに踏みつぶさせてやろう!こいいいい!」
ビッグボアは集団の防衛兵たちをあらかた散らかし終えて、メルナの呼びに応じてメルナの評価を軽いものにした兵士の一人の前に、
四本足の重々しい力強い足踏みで蹄を打ち鳴らしながらはせ参じた。
ビッグボア「ブヒイイイイイイイイイイイイイ!!!」
メルナ「よーしよしいい子だ。では処刑といきますかwwきゃは☆」
一方盗賊団頭目のギルガは街中をニヤニヤして見まわしながら道の真ん中を独占して我が物顔で踏みしめて歩いている。
見回すうちに、気になるものにふと足を止めて、遠くにある大きな城に目線を向けた。
ギルガ「あれが中枢議会を内部に含むというこの国の実質的な城かあ・・・・
帝国制はだいぶ前に止めて、今は共和国の体を取っているが建物はいかにもな
王と姫のいそうな城のままだあ 兵士のいで立ちからしても
帝国だった見栄を引きづってやがるんじゃねえかw?
真っ直ぐは行けなさそうだな・・・曲がり角ばかりだ めんどくせえ」
ギルガは一軒の家屋の前に立つと、膝を曲げて腰を少し低く落とすと
右こぶしを握り甲を下に脇に添え、左の掌を家に照準のように向ける。
そして靴裏から周囲の地面に、内周になにか文字が記された赤く光る円が半径2mにわたり広がった。魔法陣のような
ギルガ「通行の邪魔だ!w散れえ!」
ギルガが右の拳の上下を変えながら右腕を目の前の家屋に向けて素早く突き伸ばす。武術の止まった構えから繰り出されるパンチ、正拳突きのようだ
ズオオオオオオオオオオオオオオン!!!
正拳が家屋に当たった点から亀裂が走りだした。そして亀裂の線から眩い閃光が放射されて建材が分かれ、突発的な暴風によって引きちぎれれてあらゆる方向に飛び散り、砕き割られてしまった。厚さにして20mはある中心街の城壁を穿ち割った先ほどの爆発音がまた響き渡る!
ギルガ「綺麗に整地していってやるよおw!!」
ギルガの魔力を帯びたような豪拳が家屋を丸ごと地面から根こそぎ消し去り
僅かな残骸が散らばるのみの平面だけがその場に残った。
防衛兵たちが巣穴をほじくり破壊した子供や動物に憤怒する蟻のように
ギルガの周りに何十人と駆けてきてきてなだれ込み取り囲んでいく。
防衛兵「きさまあああ!国民の財産をなんだと思っている!!」
防衛兵「許さん!切り伏せる!!」
ギルガ「ぷw・・・・・・・・・・ハッハッハッハwww
皆サマ!人質の首掛かってるってつったろうがよwお分かりでない?
号令かけてやっちまおうか?なあ?w」
防衛兵「ぬう・・・」
ギルガ「殺してもそこらの奴らをまた捕まえて補充すればいい!w
ここは人質の宝庫なんだからなあw一人一人の命や権利を守るのがこの国の方針だとか聞いたぜ!?至極立派なお題目だと思うぜえ?しっかり殉じて見せてくれよお?俺たちを好きにさせてくれるだけでいいんだぜ?w
なんならここに金銀財宝を運んでくれればすぐに出てってやるよw」
防衛兵「な!どこまでもふざけおってえ!!」
ギルガ「あとよお、もう一つわかってるぜ?」
ギルガの意味する言葉 人質を取っている盗賊団員たちだが
その彼らを家屋の影や建物の二階の窓の高いところから防衛兵の弓兵部隊が
隠れて目をつけて矢を引いた状態で、人質を抱え込んでいる盗賊団員の頭を狙って待機している。弓兵たちだけではなかった。中には長めの銃、真守がいた元の世界でいうライフルに近い狙撃用の銃の照準器を覗いて盗賊団の兜を見据えている兵も少数だが含まれている。
ギルガ「お前らは馬鹿じゃねえ・・・要所に侵入された用意は当然だわな
城壁の硬さに胡坐をかいて呑気に中を気ままに税金泥棒にほっつき歩き、いざこうなったらてんやわんやーじゃ話にもならねえよなあ 子分どもをコソコソ狙ってるのが見えたぜw 最近は同盟国から、火の爆発力でなまり玉を飛ばす新兵器も取り寄せたそうだな だがなあ 俺様たちにそれは通じねえ・・・
その程度で崩れるようなら全員処刑もんになるような気狂いはやらねえよ
俺様たちのつけてきた鎧と兜は紋章付きの鋼だ 硬さとチカラを上げる補助魔法を纏わりつかせてある!半端な飛び道具なんざ効かねえんだよ
お前らの使う強化魔法と似るが、お前らのはそれぞれの練度で強弱がバラバラだ。俺様たちのは全員に一律で同じ強化を得るのさ!
次に騎士団長たちのこともある。奴らは一人でもお前ら雑兵とは比べ物にならねえほどつええが、なんでも~国同士の間の公域にある資源の取り分で揉めて、交渉に出た重役どもの護衛に多くが駆り出されてるんだってなあw」
防衛兵「な・・・・どこでそれを!」
ギルガ「ちょいと伝手があってなあw
強化された俺様たちからは人質を取り返せねえわ、人質は殺しても即調達できるわ、何よりこの俺様がいる!騎士団長が数人で組めばオレでもちとやべえが
人質に躊躇させればこっちは思いきりイケるし、人質を構わず見捨てれば
お前らの国民からの信頼は地に堕ちるw
何もしないのが一番いいんだよ!wとっとと脇にどくか財宝の場所まで案内するか!!さっさと選びなァ!!」
ギルガの突き付けた卑劣な苦境に防衛兵団たちは窮地に立たされる。
真守とアイシャは引き起こされた街の惨状を見渡している。
人々を楽しませていた街並みが無惨に破壊されて残骸になり始めていき
男たちの狼狽え、女性たちの悲鳴、恐怖におびえる子供たちの泣き声が絶え間なく聞こえてくる。心が痛みだしてくる。
アイシャ「今日に限ってこんなことになるなんて・・・この国は何十年と平和でいたのに、姿や民族が違ってもお互いに手を取り合って、たくさんの軋轢を乗り越えて、病に苦しむ人も貧しい人も奴隷であった人も救い上げて今を築きあげてきたのに・・・思えば少し前から、他の国との小さなもめ事があったり、穏やかだった自然が荒れて災害が起きたり、怖い魔物が人里に現れはじめたり、少しずつほころびが重なり続けて・・・・・
とうとうこうして目に見える形で破綻が訪れたのかも・・・一つの国だけがいくらがんばっても・・・束の間なのかも・・・」
真守は思い出す。トラックが2階の部屋ごと自分にぶつかったこと
それ以前に学校や街での日常生活で、見て聴いてきた心無い人々のすれ違い
恐ろしくて悲しくて、目を背けたくなる世界の暗さを
真守(今この国の人たちも、あの時のボクと同じ怖さ、痛みを感じてる)
そしてあのペガサス喰いの大カマキリに襲われた時、この世界に下ろされ、初めて遭遇した脅威を
真守(あの時は自分をとりあえず壁で守るのでいっぱいだったかも・・・・
そして、この子に励まされてできるだけのことをしたいと思った。
踏み出さなければボクに起こったことの真実にたどり着けない。
でもこの子に会ったことで少しだけ動けた、いや・・・かなり大幅な一歩かも
チュートリアルだったのかも
最初は自分、次にアイシャさん一人に安心を与えて
そして次はこの街の人たちを、まだ知らない人々を
悪意のない動物や自然の厳しさを対処して
悪意を持つ相手の暴力から、たくさんのいい人たちを守るための
防衛戦・・・ここからは、本格的な戦いなんだ・・・ボクにできるか?)
街の子供「お母さん・・・お父さん・・・どこなの・・・うっうっ・・・」
アイシャ「あ!」
アイシャは混乱で両親からはぐれた子供に駆け寄って抱き寄せて頭を撫でた。
アイシャ「泣かないで・・・きっと会えるから・・・」
その姿は、真守の決意を固めるに至らせた。
真守(いや・・・やるんだ!・・盗賊たちはこの国の兵隊さんより強いからこうなっているんだろうけど・・・ボクの壁だって・・・どう考えても普通じゃない!!試してやる!)
真守「アイシャさ・・アイシャ、その子と一緒に隠れてて」
アイシャ「カベさん?」
真守「ボクが行く、ボクが盗賊たちを止める」
アイシャ「そんな・・・・危ないですよ!見たでしょう!?
あの城壁さえも壊されてしまったのですよ?いくらカベさんの魔法の壁でも!まだ希望はあります!騎士団長のもっと強い方たちがすぐに来てくるはずです!それまで待てば・・・」
真守「考えがあるんだ・・・ボクに行かせてくれない?・・・
大丈夫!あの大カマキリの攻撃も防いだんだし、少なくとも量産型の手下みたいな人たちの攻撃は効かないと思うんだ。城壁を砕いたあのボスの人は今は一人で動き回ってる。だからまず大勢の手下を抑えて街の人たちへの脅威を一つに減らすんだ。ボクがどうにもならなくてもそれまでにその強い人たちがちょうど来てくれるんじゃないかな」
アイシャ「カベさん・・・」
真守「だから・・・その子と無事でいてくれない?・・・ボクが行ってこの
災いを少しでも早く終わりに近づけたいんだ・・だから・・・ね?」
アイシャ「・・・・・・・・・わかりました・・・どうかカベさんも・・・無事に帰って来てください!カベさんを信じます!」
真守「うん・・ありがとう」
その時 盗賊団の頭目ギルガの右腕と称する副長の女盗賊メルナは
自分を迂闊に子供扱いした防衛兵たちに巨大イノシシ、ビッグボアを
差し向け、処刑を開始するところであった!
メルナ「あーははははハアーwwwww愚か者の無様な最期だああ!!
轢きつぶせええい!ビッグボアああああ!!」
ビッグボア「ブッヒッヒw・・・ブヒイイイイイイイイイイイイ!!!」
防衛兵3「なっ・・・・くそお・・・」
メルナ「動くなよ?そのままでいろおw人質の命が惜しければなあ!!ww」
ビッグボア「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
ビッグボアは巨体で防衛兵を突き飛ばし、長く突き出た牙で咬み裂いて
その蹄で踏みつぶさんと強く大地を蹴りだし、突進した!!
その時だった
ガンッ!!!
ビッグボア「ブヒ?」
ビッグボアの突進は防衛兵を打ちのめす、はずだった。だがしかし
その無慈悲な肉弾凶器は防衛兵には届かなかった・・・
ビッグボアがぶつかったのは濃い灰色と赤茶色のレンガを積み上げたような
2mほどの壁!
その壁がビッグボアの頭と防衛兵の間に突然現れて攻撃をブロックした。そしてビッグボアが激しくぶち当たったのにも関わらず、動いたのは相応の激しい反動を受けたビッグボアだけ
その壁はヒビも傷はおろか後退もせず、1㎝ 否
1ミリ足りとも位置の変化さえ起きなかった。
ビックボア「ブヒいいいい!!」 ドーン!ドーン!ドーン!!
ビッグボアは突然の妨害に怒り、壁にまた体当たりを打ち込んだ。だが
何度突っ込んでも同じ 反動が突いた当豚のみに返され、後ろに飛び戻される。
ビッグボア「ブヒいいいいい!!ブヒッ!・・・・・・ぶう・・・」
ビッグボアの鼻や眉間が無益な頭突きを繰り返したことで赤く腫れていく
痛々しく皮が破けて血が垂れだしており、ビッグボアはとうとう疲れて
地面に4本足の膝をつけてしゃがみ、悲し気にうなだれて動きを止めてしまった。
メルナ「な!?・・・・なんだこれは!この壁はなんなのだ!?
どこから湧いて出てきたのだ!?」
盗賊「姉御!おまかせくだせえ!!ちぇアアアア!!」 ガキーン!!
盗賊団員が湾刀を壁に渾身に切り付ける!だが、
壁は火花を弾かせて刀のみが跳ね返った。その火花は壁の材料の欠片ではない。刀の刃のみが削り取られて散ったものだ。
盗賊「ちい!(# ゜Д゜)さっさと壊れろ!!」 バキッ ヒュルルル・・・
壊れた。ただし盗賊が怒りに任せてまた振り下ろした湾刀のほうが
半分から上が壁に叩きつけられた反動で折れて空に放り出された。
盗賊「なあああ!なんだよこの壁は!?」
盗賊2「なんという硬さ・・・俺たちの剣はそれなりに業物だぞ・・・・?
どうなっていやがる・・・」
メルナ「・・・ちいっ・・・・おい兵士!この壁はお前らの用意か!?
今すぐこれを消せ!お前らだけこの壁に守られても街の者たちは斬れるのだぞ!?」
防衛兵3「?いや・・・我々の国にそのような装備は存在しない!
魔法でそれほどの壁を出すなど・・・できるなら初めから出している!」
防衛兵「こっちが聞きたいわ!!」
メルナ「なら誰だというのだ!?出てこい!姿を現さないなら
市民を片っ端から子分全員で斬るぞ!!」
盗賊「やっちまえ!!」盗賊2「おらあああ!・・・ シャン!!
街に広がって人々を切り付けだそうとした盗賊たちの一人一人。場所によっては近くにまとまる二人ごとを、ビッグボアの巨体をせき止めたのと同じ壁が今度は次々と何枚も瞬間的に現れて、彼らの前後左右を狭く取り囲み、最後に囲まれた盗賊たちの頭上を横に浮遊する壁が、天井に蓋をして閉じ込めてしまった!!
盗賊「うわ!こりゃなんだあ!!」
盗賊2「おい!?みんなどこにいる!?」
盗賊3「いきなり閉じ込められたぞ!?ちくしょう出せ!誰がやりやがった!」
メルナ「なああ!?お前らあああ!落ち着けえ地面を掘って抜けるんだ!!」
盗賊「そうだ!地面なら!」
メルナの冷静な指示に盗賊たちは我を取り戻し、壁が現れていない地面を掘ることに活路を見出した・・・・かに見えた
盗賊「へっへっへ、よーし!」 小刀やシャベル型の鉄器で地面を掘っている
カン!!
盗賊「ちょっ!・・・おい!まさか!」盗賊3「そっちもかよ!?」
盗賊2「ダメだあ!土の中にも壁があああああ!!!(´;ω;`)」
足元の土を払って出たのはまたしても横に敷かれた壁だった。全員もれなく
盗賊「ちっくしょお!出せこの野郎!!」 キン!キン!
盗賊2「ダメだあ!!やっぱりビクともしねえ!!!」
盗賊3「姉御おおお!!ギルガのカシラああああ!!出してくれえええ!!」
メルナ「そんな・・・お…落ち着けえ!おまえら!!」
真守「危ない危ない…そういえば地面に壁を敷くのは考えてなかったな・・・
あの女の子が言ってくれたから思いつけた・・・・あ、でも抜けられてもすぐ壁を出して囲みなおせるか・・・・・・・・・あんな子が盗賊なんて
多分、昔誘拐されて無理やりやらされているうちに馴染んでしまったのかな
この国の児童保護施設みたいなところがあればな・・・・あの子は暗いとこに閉じ込めるのは可哀想かな」
もちろん一連の壁を駆使して盗賊団員たちの動きを鎖したのは真守だ。
その場の兵士たちをビッグボアの蹂躙から防衛して慌てふためくメルナの
周りに点在する壁の立方体群を残し、他にも盗賊団員が市民を襲って防衛兵団と対峙する中心街のエリアに、壁の召喚者と悟られぬように隠れて移動していく。
盗賊5「ひゃはあ!!食い物ももらうぜ!小腹がすいたわあ!!」
盗賊6「防衛兵団どもwなにもするんじゃねえぞ?ww」
サンドイッチ屋の店主「てめえらあ!!俺のパンに手をつけるんじゃねえ!
好き放題やりやがって!もう許さねえええ!!」
盗賊6「なんだあ?w」
盗賊5「まだ誰も殺してねえがてめえからやっちまうか?ww」
サンドイッチ屋の店主「やかましい!!やれるもんならやってみろやあ!!」
盗賊5「おうおうwなら遠慮なく!!」盗賊6「いきますよおおwww」
サンドイッチ屋の店主「かたってんじゃねええ!!三下アア!!!」
盗賊5「おりゃあ!!w」 サンドイッチ屋の店主「でりゃあああああ!!」
盗賊は店主に斬りかかるも店主も火かき棒で殴りかかり武器同士のぶつかり合いに金属音が高鳴る。鍔迫り合いに移行も、店主の力が若干押し勝っている。
盗賊5「うぬお!?やるなァw」店主「うらああああ!!」
店主は火かき棒を押し当てて盗賊をさらに後ろに下がらせていく。
盗賊6「横から失礼するぜえ!!ww」 ドン!!
もう一人が店主の右脇を横から不意に蹴りぬく。店主は左側に大きくのけぞるも倒れはせず、蹴ったもう一人のほうに飛び込んで右の裏拳で殴り払った。
店主「ぬお!?だああああ!どりゃああ!!小ズレェチンピラがア!!」
盗賊6「ぶほぉ!ッ・・」
盗賊5「街の奴も軟弱ばかりじゃねえなw手加減は終わりだあ!!」
盗賊6「ちい!いてえなあ!強化ァ!!」
盗賊2人の皮手袋の甲の紋章が赤く輝き、赤いオーラが盗賊たちの体を包みこみ、握った剣のつかに強まった握力で少しずつヒビが入った!
盗賊5 盗賊6「うおおおおおおおおwww!!!」
だがその時 盗賊2人の前に赤茶色と濃い灰色のレンガの壁が2枚現れた。
盗賊5「あん?なんだこりゃ?」盗賊6「壁ェ?どこから来やがった?」
盗賊5「オヤジ!おめえの魔法か!?」
店主「ああん?ちげえよ!!てめえらこそ・・・強化ァ!っつうのは殴られよけの守りのことかよ?拍子が抜けるぜ!!」
盗賊5「じゃあなんだこりゃあ!」盗賊6「ええい!どけやあ!」 ドンッ
壁を蹴るも、さらに2人の左右と後ろを計6枚の壁が瞬時に取り囲み、
頭上に横むきの2枚の壁が天井となって蓋をされ、2人は1人ずつ2つの箱に封じられてしまった!
盗賊5「な!・・おい!オヤジてめえ出せコラあ!!」
店主「俺じゃねえっつってんだろうが!俺は魔法なんか習っちゃいねえ!!ていうか誰が出すか!」
盗賊6「この!!」 カーン! カーン! キーン!
「おい!ビクともしねえ!そこらの石壁じゃねえぞ!?」
盗賊5「硬すぎんぞ!?どうなってるう!!」 キーン! キーン!キーン!!
真守(サンドイッチ屋さんも無事になった。次に行こう)
近くの物陰から盗賊たちを壁で確保し、店主の安全を確認すると
真守はまた盗賊団員たちが野放しのエリアに移動する。
店主「・・・ぷw・・・だああっはっはっはあ!!ざまあみろてめえらw!!」
盗賊5「てめえええええ!!笑ってんじゃねえ!!」
盗賊6「出たらぶっころしてやる!!」
盗賊団員が幼い女の子を捕まえて人質として連れ歩いている。
幼女「わあああああんママあああああ!!」
母親「お願いです!!娘を返してください!!!」
盗賊「わめくな!w頼まなくともこの国の財宝取ったら放してやるよ!!金と食い物以外手を付けるなと姉御に言われてるしな 奥さん美人だからもったいねえぜww」
防衛兵「貴様あ!その子を放せ!!」
盗賊「だったら黙って金庫まで案内しろっつってんだろうがw何言わせんだw
放さなかったらどうすんだ?wかかってきたらガキは刻んじまうし、
強化されてるからお前らじゃはがせねえぜ!!どっちもダメなら
タコ踊りでもしてろ!!ww」
真守はフードを被り、女の子を人質にする盗賊団員を見据える。
真守(しっかりつかまれている 閉じ込めても2人ごとになって無意味だ
盗賊と人質の間に壁は作れるかな・・・いきなりこれまでの大きさの壁を
出せばあの子が怪我をする可能性もある・・小さい壁からすぐ大きな壁に
拡大するとか・・・そうだ!やってみよう!)
女の子「えええええん‼放して~!!」
盗賊団員の胸部と右の前腕で強く抱えられている女の子の背中との隙間に、
かすかに数粒の青い光の粒子が沸きだしつつ
青い5㎝四方の正方形がフェードインして現れる。
盗賊「お?なんだこりゃ?」
正方形は植物の芽の成長を早送りで再生した科学番組の映像ほどのスピードで相似形に大きくなっていく。盗賊団員は女の子を気をそらさずに抱えていた。
だが
盗賊「ぬお!なんだ?でかくなってきやがった!!」女の子「わ!なに~?」
盗賊「おっと離さねえ!・・・ってうお!!?」
増大していく壁の面積と体積が、盗賊団員の女の子を掴みながら抑えようととする腕力の抵抗にわずかな停滞もせずに女の子の背中を前に押しのけていく
盗賊団員の指が耐え切れずに女の子の腹部、服の端と掴む部位を消極的に変えていき、とうとう女の子は拘束から解放された!!
女の子「きゃあ!!」 スルッ トテンッ‼
盗賊「な!!?・・・逃がさ・・ 」 ギャン‼
女の子を再び捕まえようと拡大しきった壁を回り込み手を伸ばし一歩踏み出そうとした盗賊団員だが、さらに出現した4枚の左、右、後方、真上の2mの壁に一瞬に閉じ込められ、女の子の身から完全に隔絶されてしまった。
盗賊「どわああああ!」
女の子「ママああああ!!」 母親「ああ!よかった!!」
防衛兵「この壁は一体なんだ!?どこから?・・・」
真守(ふう・・・よかったね・・・次・・)
抱き合う母子二人に安堵して真守はさらに盗賊団の部下たちを見つけては
前後左右天井、そして土の中の「床」の底面も忘れずに、6枚の壁で次々
に監禁して街の人々や防衛兵団員たちを脅威から遠ざけていった。
盗賊「ひゃはははははww!暴れまわっ・・・」シュン(壁の箱が被さる)
盗賊「でやあ!邪魔だあ!そこをどけ・・」 キャン‼(四方を壁に囲まれる)
盗賊「わ!急に真っ暗闇だ!!」盗賊「もう夜になったか?昼夜逆転魔法‼?」
市民の男性「あの壁は一体なんだ?一瞬にして盗賊たちを閉じ込めたぞ!」
花売りの女性「逃げてきた他の区域でも見たわ!誰が出しているのかしら?」
犬獣人の男の子「わあ!!すっげえwおもしろーい!きゃははは!」
盗賊「ジジイ‼おとなしくしてりゃあ寿命は延びるぜ!!」
白髭の老人「ぬう・・・ちと疲れた・・・座らせてくれんかの?」
盗賊「我慢し・・・」(盗賊と老人の間に壁が現れて厚くなって老人をゆっくり突き放させる)
白髭の老人「む?はて?こんなとこに石壁なんぞ建てられてたかのう?」
街の若い青年「あの壁は!?国の新しい防衛魔法ですか!?」
青年の友人「やはりこの国の兵の力はすごいな!!いつの間にあんなすごい 魔法を開発していたのですか!?」
防衛兵「いいや違う、あのような奇妙な・・・わが国の新戦術として聞いたこともない!国の外でも見たことはない!何者の仕業なんだ?・・・」
盗賊「壁が向かってくるぞ!?避けても付いて来やがる!」
盗賊「他の仲間はどうした!?斬りつけても蹴ってもビクともしねえ!!
逃げても追ってきて、目でもついてんのか!?」
盗賊「なんかよ!?・・・みんな捕まっちまったんじゃねえか!?さっきから
声が聞こえねえ!!」
盗賊「ちっくしょう‼さっきまで人質捕まえて、兵士どもを蹴散らして高らかに笑ってたじゃねえかあああああああ!?うわあ!!来るなあ!!」
今まで盗賊たちの至近に瞬間的に出現していた壁が、今度は遠くに現れてから地面を滑って移動してくるのだ。盗賊たちが横に方向を変えても追い続けるうえに、彼らの前を先回りして進路を誘導し、4枚の壁が捕捉しながら4人を一か所にむけて追い立てていく。
やがて4人の盗賊団員は道の一点に互いに密着を強いられ、塊に集められた。
背中合わせに、各々が湾刀を壁たちにむけて突き立て、迫りくる動きを刺して止めようとするも虚しく、
盗賊「ぬおおおおお!!!」 盗賊「おらあああああああ!!」
盗賊「止まれコラァアアア‼‼」 盗賊「刃先がおれたああ!!」
4人を照らす日の光が薄暗くなり、真っ暗闇に変わるのに気づいて
全員が頭上を見上げると、水平の壁が降下して封をされた。
真守(試しに複数の壁を見ながら操ってみたけど、動かすなら交互に2枚ずつまでかな・・・3枚めからは意思が途切れる・・手も目も2つだからなのか?)
ギルガ「うらあ!!」
防衛兵たちはギルガの周囲には盾にされる市民はおらず、ボスを抑えてむしろそっちを人質にしてしまえば盗賊たちの士気も止まることに賭け
各自この国正規の強化魔法をかけて人海の連携で勝負に出るも
ギルガの卓越した武術と元の屈強な肉体自体からさらに魔法で強化された膂力の凄まじさに圧倒され蹴散らされる。
防衛兵「なんという男だ!これほどの力をつけるまで身を潜めていたとは!」
ギルガ「子分どもに人質を持ってこさせて突き付ければ休めるがよ
体を動かすのは楽しいからなあw付き合ってやるぜ!
まあ人質以前に騎士団長たちがまだ来ねえし、もう国民からの信頼はやばくなり始めてるかもなア!w今この国の人事は即座に万全の防衛ができる配置に
強いコマを置いてねえからなw」
防衛兵「なんだと!?そんなはず・・・・は・・・・」
防衛兵「賊の分際でいい加減な!・・・・」
ギルガ「無理すんなよww 薄々気づいてはいるようだなww」
防衛兵「・・・だとして!何故貴様がそれを知る!?」
ギルガ「さあて?wwどうしてでしょうねえ?wwww」
兵士たちの頭に共通にめぐること この国の今の厄介な内情を、
外部の盗賊たちに通じて漏らした内通者、裏切り者の存在の可能性
ギルガ「ではそういうことなのでw、そちら方の切実な事情を遺憾に想い・・・
遠慮なくこのまま宝物庫まで足を進めやがります!wwww・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
速やかに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どけやコラおい?・・・・」
快活な満面の笑み その表情を固定して間を置いたのちに強烈な威圧を放つ
それがギルガの恒例なのだ。
そして歩き回ること総勢35人 メルナと頭目ギルガを除き、街で暴れて
人質を取りながら略奪をしていたすべての現場の盗賊団員の部下たちは
真守の壁に捕らえ尽くされたのだった。
真守「街の人たちの叫びも止まって、追いかける盗賊も見なくなった
手下はあらかた大人しくさせたかな
あとはアイシャの言ってた騎士団長の人たちが来て、あの盗賊のボスに勝てればいいのだけど そのくらいの時間は稼いだと思うのに
変だな?・・・偉くて強い人たちがどうして率先して来ないんだろう?」
ドシ・・・ドシ・・・ドシ・・・
ギルガ「おい・・・てめえ・・・・」
真守「?・・・!!」
それまではうまく行っていたはずだった 話に聞いた騎士団長なる
優秀な人員たちが引き継いでくれれば完遂だった。だが最後に順当とは真逆にの状況になった。一番避けるべきと留意していた要所に当たってしまった!
最悪だ
俯瞰から防衛兵と盗賊団員の戦いを窺う伏兵の盗賊団員が壁の建設ラッシュ
を目にとめて報告、案内されて出向いた頭目のギルガがそこにやって来たのだ
ギルガ「さっきからふざけた壁を建てまくって俺の部下どもを閉じ込めたっつうのは・・・てめえか・・・おもしれえ魔法だが随分舐めたマネしてくれるなあ・・・・おい?」
真守(やっば・・・なんでバレたんだ?そうか、遠くからその場の全員を
確認したつもりだったけど、見逃した手下がいて壁のことを見てこの人に伝えたのかな。甘かった><)
ギルガ「まあ戦術としてはわかるぜえ 先に街で暴れる部下どもをコソコソ隠れて封じたあと、最後に残った俺様を防衛兵どもと組んで袋叩きにしようってこった。
だが、俺様を先に閉じ込めて人質にする手もあるだろう?
それをしねえってのはよ・・・俺様を捕まえる自信がねえ・・・・・
てめえの壁には俺様の力を封じるほどの頑丈さはねえってことだなw」
真守(試してないからわからないだけ・・・でもだいたい当たってる)
この騒ぎの第一声となった、中心街の分厚い堅牢な城壁に大穴を開けた
目の前に立つ185㎝程の剣呑な赤鬼男の、凄まじいあの一撃の光景が脳裏に思い起こされる
真守(そりゃあ、あんなパワーを見せられたら自信ないし・・・
なんでも防げるなんて高を括って粉々にされるなんて御免だから・・・)
ギルガ「それじゃあ部下たちのお礼に・・・・俺様の拳技をたっぷりと
てめえのほせえ体に施して差し上げましょうや?w
精一杯のおもてなしをさせていただきましょうwww
後悔しろよな?」
真守(!!!) ゾク・・・・
真守はただ恐怖で立ちすくむしかなかった。
かつて怯えさせられた、ペガサスマンティスから向けられた食欲でさえも
全く比較にならないギルガの極寒の殺気をぶつけられ 絶体絶命だ。
ギルガが右こぶしを腰の位置まで前に持ち上げて、脱力して静止した。
フッ・・・
次の瞬間!ギルガの顔が真守の1mほどの至近距離に現れた。
直前まで2人は20mは離れていたがギルガが目にとまらぬ2歩の踏み込みで
急速に徒手空拳の間合いへやってきたのである。
ギルガ「喰らえ青瓢箪・・・」
そして右の正拳が真守の顔面にまっすぐ打たれた。
真守は気の遠くなる攻めの速さに表情の変化も遅れ、瞼を閉じることもなく
ただ立ち続けるのみだ。
ドシッ!!!
真守「うわああっ!!」 ><
反応がコンマどころか気が付けば2秒遅れの恐怖で表情筋に指令をだし
目をやっと閉じた真守。
殴り抜けられた 綺麗で迅速な軌道に押された顔面につられて首が
胴体が地面から足が浮いて 数mは飛ばされて背中が土に衝撃とともに着き
気を失うどころか即死
ギルガ「あん!?」
真守「・・・・・・・・・・・・え?・・・・あ・・・・・・・・・・・・」
しなかった。真守は確かに「これは死んだ」と感じて観念した。
だがまたしても あの赤茶色と濃い灰色の煉瓦を積んだような壁が
ギルガの瞬足よりもさらに素早く、建設の手順を切り取ったように
すでにその場に青い光をフレームにまとわせて拳と顔の間に現れていたのだ。
ギルガの右正拳を真正面に微動だにせず受けて立ち
ギルガ「・・・・おめえ・・・反応は、はええじゃねえかよ
壁なんか出す前に素早く殴れば終いだと思ったがよ」
真守(違う 反応なんてできなかった 早すぎてとても無理・・・
出ろと思って出たんじゃない 考えてから出したんじゃとっくにやられてる
この人のパンチは間違いないなくとんでもない
ボクは何も念じてないのに壁が勝手に出た。カマキリのときと同じだ。
どういうこと?)
ギルガ「じゃあ次・・・・w」真守「!?」ギルガ「おらあッ!!」
真守の右脇へギルガの左足の中断まわし蹴りが豪速のスイングのバットの
ごとく振るわれた。
ビュオンッ・・バンッ!!!!
真守「・・・・う?うわあ!」
また置き去りにされた反応が遅れて数秒のたったカタツムリのようなリアクションで、またしても出現した壁に止められるギルガの左足に怯えて左へ後退りする真守
ギルガ「うわあ・・・じゃねえよおめえ?まぐれじゃなく俺様の攻撃がきちんと見えてる、いや気配だけで見もせず察して防いでるな・・・
相当な手練れだな。試食は止めだ、遠慮せずに行くぜえ!!
チェアあああああああああああああああああああああああ!!」
まずギルガは真守のがら空きの左側に瞬間に回り込んで真守の顎を狙い
ステップインから即座に右のとび膝蹴りを撃った!
ギルガ「当たっw・・・」 ガーン! しかし左の隙間も3枚目の壁が防ぐ
小数点以下の時間内に気を切り替え、次は真守の後方に着地して
左中段突きを真守の腎臓に撃ち放つギルガ ガーンッ!
4枚目の壁が真守の後方もカバーした。
ギルガ「とわあ!!」
飛び上がって後方の2mの壁を越え、見えた真守の頭頂部を
渾身の脚力を込めて両足の底で踏み砕く! ドオオオオン!!
だが足を下に突きのばし始めた瞬間には真守の真上に、天井となる5枚目の壁がギルガには両足を乗せてくれる床となって蓋をされる。
真守に封印されてきた盗賊団員たちと同じように壁の箱に真守が収納された。
ギルガ「押しつぶす!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ギルガ「うおラアアアアアアアアアア!!!」
壁に囲まれた真守を壁ごと踏み続けて天井から力をかけて地面に沈めて圧死
させようと激しくカカトを掘削機のごとく叩きつけていくギルガ
真守「は!っ・・・いつの間にか囲まれるほど壁が そんなに攻撃されたのか
この一瞬の間で?・・・やばい・・マジですごいぞこの人!
それに・・・・すごい音・・・・怖い・・・踏みぬかれるんじゃないかと不安になってきた・・・・
そういえば音は通っちゃうんだ・・じゃなきゃアイシャさんと会話
できなかったし、工事現場のすぐ傍を通りかかるよりもうるさくて、
このままじゃ鼓膜が破けるかストレスで死ぬかも・・・・
初めて有効打を出されてるな・・・・・防音はできないのか?・・・・」
ピカッ・・・
真守「え?・・・そうか!望むなら音もカットできるのか!」
真守が脳内で模索すると真守の眼が青く光って一度点滅し「可能である」という啓二が壁の使用法に再確認されるように閃かれた。
真守が気づくと同時に天井のけたたましい暴音がミュートされるように消えた。
ギルガ「でらあああああああああああああああああああああああああ!!」
ただの壁が地面に突き立っているだけならば、水面に木片を刺すように
時間をかけず地上部をすべて埋めつくして視界から無にできると
ギルガにはその実力に裏付けされた確かな自信があった。だが
ギルガ(半分は・・・いや・・・爪の先ぐれえも沈んでねえ・・・・
下に何倍も深く刺さってやがるのか?あの一瞬でか?ありえねえ・・・
ちがう・・・足ごたえでわかる、壁そのものが涼しい顔して受けきってやがる
子分どもがやられたのもうなずけて来て・・・ちい!何言ってんだクソッタレ
認めねえぞこんなヒョロガキごときに!!)
トンッ ギルガは真守の正面を担当する壁の前に降りて元の位置に立つ。
ギルガ「うらああ!」 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
左右の正拳の豪速の連続突き
常人には腕が10~20本に増えて複数人が一つの対象を殴りつける濃度の高い残像に見えている。
ギルガ「ちい!・・・・はああああああああああ!」
連続突きの終わりに体を急回転し、
右足の後ろ回し蹴りで大砲のごとく足裏で壁を撃ちぬく!!!
とうとう押され飛んだ ギルガが彼の後方に5mほど
壁の位置に変化はまるで無い マイクロメートル単位ほども
ギルガの技の衝撃はそっくり受け取りを拒否されむしろ反作用の贈り物を
誠実に贈呈された。ギルガ自身の拳足のみが感じている
その痛みを着払い料金として
一呼吸を置くギルガ そして
ギルガ「でやあ!っ
っとわあ!!
っどりゃああ!!!
っふん!!!!
っせいいい!!!!!
右ストレート 左フック 右膝蹴り 左中段前蹴り 右裏拳 左裏拳
右裏肘 左回し蹴り 右回し蹴り 左膝蹴り 右とび膝蹴り
左肘振り下ろし 飛び上がって右肘振り下ろし
飛び上がって前方宙返りのカカト落とし 着地→後方サマーソルト左キック
着地→回転連続裏拳&回し蹴り×8 ラッシュの右パンチ左パンチ右ロー左ロー
ありとあらゆる技で真守の前後左右を覆う壁を規則性を読み取れないほどに乱れ打ち、息つく間も与えぬ雪崩れるような連撃を繰り出し始めた!!
そして約5分が経過し
ギルガ「はあ・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・」
真守「そー・・・っと・・・・」 (防護壁をおそるおそる全消しした)
長きに渡る渾身の連撃集を試し切って、ついにギルガは疲れ果て汗を垂らし前かがみに両手を膝に乗せて真守を睨んでいた。
しかしその如何なる攻めも真守の壁にはヒビもへこみも付けられずに
ギルガの拳の指と足の甲の皮だけが痛々しく腫れて血が滲み出していた。
ギルガ「なんだ?・・・壁を消して正々堂々仕切り直しかよw・・・
ハア・・・ハア・・・こもったまま俺の自滅を待たずに男らしいじゃねえかwそれとも余裕綽綽か?・・あいにく俺様も余裕だぜ・・・へへへww・・・
(嘘だ・・・・・・・なんなんだコイツ?・・・マジでやべえ・・・!!
ナリはモロそうな優男の眼鏡の癖しやがって・・・これまで幾多のカスどもを
屠って来た俺様の拳法が通らねえだと!?・・・・正直・・・
今回ばかりはマジでやべえええ!!!><・・・クソがああああああ(汗))
真守「大丈夫?」
ギルガ「!?・・・アアア!?(怒)」
真守「う・・・いや、痛そうだなって思って・・・ちゃんと洗って包帯とか巻かないと、ばい菌が入って大変だよ?もうやめた方がいい、こんなことは
街の人たちを傷つけるのは止めにしてみんなを連れて帰った方がいい!
だから・・・」
ギルガ「!!てめええ!余裕かまして上から情けなんざほざきやがってええ!!てめえは絶対殴りとばしてやらああ!」
真守「わあ!>< でも君の攻撃はこの壁には通らないみたいだし・・・
それしかないんじゃ・・・」
気づけば対峙する両者の周囲にはほぼ危機を脱して安堵した市民の人々
と盗賊団員たちの無力化を確認し終えた防衛兵たちが聴衆となって集まっていた。国の一大危機は収束して、家屋や財産の被害はあったものの一時のボヤ騒ぎ程度のショックに矮小化しつつあり、ギルガ達盗賊団の襲撃者としての貫禄や尊厳を大きく損ないかけていた。
「あの眼鏡の若者、盗賊の首領の猛攻をすべて防いでるぞ!」
「あんな頑丈な壁を素早く呪文も唱えずいくつも出せるなんて!
あんなすごい魔法があるのか!!」
「見ない顔だ きっと今日たまたま通りかかった高度な術をもつ
魔法使いに違いない!!」
防衛兵「あの魔法を我々に教えていただき、この国の戦力をさらに上げることができるかもしれん!」
メルナ「どけーい!邪魔だあ!!このお!・・・・あ!兄貴・・・・・」
群衆を押しのけて最前列にメルナがその場に辿り着いた。
盗賊「姉御!仲間を壁で閉じ込めたのはアイツです!カシラがてこずらされています!!」
メルナ「なにい!?あの眼鏡の貧弱そうな優男がか!?あんなのに兄貴が!?
あに・・・ああ!!・・・・」
荒ぶるメルナの表情が驚愕と不安に変わる。ギルガの手や足からにじみ出ている血を見て ギルガを案じる気持ちに溢れていく
メルナ「そん・・な・・・ウソ・・だ。ギルガの兄貴いいいいいいいい!!」
ギルガ「・・・メルナ?・・・」
メルナ「兄貴!なにやってんだよ!!そんなのにてこずる兄貴じゃないだろ!
兄貴はずっと勝ってきた!
他の盗賊との縄張り争いも!、スかした金持ちたちの用心棒も!
小山くらいでかいボストロールも!荒れ地の大ムカデも!沼地の魔毒竜も!
宝石しこたま抱え込んだ名のある黒魔術師も!そいつが呼び出した魔界の中悪魔も!
本来は兄貴の上位種のオーガだって!!
やべえ奴らをたくさんぶちのめしてきたじゃないかあ!!今さら止まったりしない!!
兄貴は最強の大盗賊!赫拳のギルガだろおおお!!?
そのヒョロガリメガネなんかブチ砕いちゃええええ!!!」
真守(さっきからボロカスにけなされてるなあ・・・(´;ω;`)・・・)
ギルガ「・・・・メルナ・・・・・・へっ・・・・」
ギルガはメルナの声援にはっと我に返り 余裕を取り返すように微笑んだ。
ギルガ「なーにうろたえてやがるw・・・早とちるなw
こいつがちょっとおもしれえ術を使うもんで試して遊んでやりたくなったのよ
まだ奥義だってこいつは俺様に出させちゃいねえ
もっと楽しみたいがかったりいのはこれくらいにして
速く財宝を拝まねえとなあ!!
まあ待てやメルナ・・・すぐ片付けるからよ」
メルナ「兄貴・・・ふふ・・・それでこそだ!!」
ギルガはメルナから自身と真守を見物している市民と防衛兵たちを一瞥し
睨み返して口を開く。
ギルガ「てめえら・・・なに落ち着いてる?何も変わっちゃいねえぞ?w
観客の皆様方はお忘れになられているようだがあの城壁を砕いたのはこの俺様だぜ?wその虎の子の技でてめえら様がたの希望になりつつあるこの壁男を骨の欠片も残さず消し飛ばして見せましょうやwwこの国始まって以来最大の
地獄のショーの開幕だwww」
ギルガは視線を真守に戻し、今までよりさらに強烈な眼力で真守を睨みつけた。
真守 (ビクッ!)
ギルガは奥義の発射体制に入る。重心を落とした武術の構え
右拳を脇に添え 掲げた左掌の人差し指と親指の間に真守を収めて照準とした。
そして靴裏から周囲の地面に、内周に呪文を記す赤い円の魔法陣が半径2m
いや道端の家屋を破壊した時より半径が伸びてさらに魔法陣が拡大していく!
半径3m、6m、12m、24m、48m
魔法陣は周囲の市民たちの足元にまで到達してさらに広まる。
市民たちは見物を止めてその赤い不吉な円の光に恐れおののき逃げ散らばる
ギルガ「ハアアアアアアアア!!!!
次にギルガの身体を赤いオーラが溢れて包み、勢いよく燃える炎のように猛って揺れ、ギルガの瞳も赤く光りを放つ。完全に本気を込めるようだ。
奥義はこれまでも撃ってきたが奥義の全容そのものではない。
威力は一概でなく魔法陣の大きさで調整されていたのだ。
真守(な!!・・・・さっきまでと全然ちがうじゃないか!!
でもこんなになる前も結構必死だったと思うけど・・・・・・・・)
ギルガ「・・・・・まさかタダヒト族一人にこの奥義を使うことになるとはなあ!やはり実力ってのは見た目じゃねえと思いだした!!
てめえはよくやったぜ!w
奥義を物以外の生きた獲物に撃つのは何か月ぶりだかわからねえ!!ww
最後に名を聞いてやる!!てめえの名はあ!?」
真守(えっと・・・いつボクが名前を教えたがったのかな?
強引だなあ・・・でも凄まじいエネルギー
思わず教えたくなっちゃう気迫だ・・・
そして・・・・この国のあの分厚い壁を壊した奥義・・・
それが来ちゃう?・・・大丈夫なのか?・・・・
いや・・・ヤバいよ!城壁は10m以上厚かったし・・・
それをあんなにする技なんて!!・・・・・・・・・・・・・・・・・
いや!・・・もうここまで来たら信じるしかない!
ボクの壁を・・・・・この技を受けきったら
この人はあきらめてくれる・・・あきらめてもらえなくても
全てを防いだならこの人を手下と同じく壁に捕まえるのも可能だ
それでこの街の人が傷つくのは終わる
賭けてやる!
でもアイシャさん・・・壁が破られてボクが吹き飛ばされたりしたら
その時はゴメン!!><)
ギルガ「いくぞおおおおおおおおお!!!」
メルナ「きャハア☆!!やっちまええええええ兄貴いいいい!!」
ギルガの左太ももの筋肉が
厚い革製品を軋ませるような音を鳴らしてしなり、血管が浮き出す
左足の屈筋で身体を前に運び出し、直後に右足の伸筋で身体を蹴りだし
爆発的な加速のステップを刻んでギルガが飛び出した!!
それは赤い光の豹の輪郭を思わせる獣が疾風のごとく大地を駆けるようだ!!
真守「・・・もう!どうにでもな・・・じゃなくて・・・えっと・・・」
ギルガは俊敏に迫りつつ「えっと・・・」の時点で真守の50㎝前に到達し
脇の右正拳の甲を上にひねって真守の胸に撃ちだした!!
真守「・・・いや・・・来い!!」
ギルガ「オオオりゃあああああ!!!」
ギルガの赫拳が飛び込み、
真守の壁が瞬時に生まれでて迎えうつ!!
ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
「うわああ!!!」
「きゃああ!!!」
「うおお!?」
両者の激突で発生した轟音と猛風が中心街の市民たちと防衛兵たちを巻き込んで叫びを上げさせた。
メルナ「やったぜえええ!!キャッホーイ☆!!」
盗賊「え・・・あの、姉御?まだわからな・・・
メルナ「ああ!?(# ゜Д゜)馬鹿言うなオマエエ!!わかるわ!!ギルガの兄貴があの壁男をぶっ飛ばしたに決まってるだろうが!!当たり前だあ!!」
壁と正拳の衝突の余波の粉塵が掻き消えて晴れていった。
メルナ「あ!☆あに・・
言いかけたメルナの右脇を子供が二人最前列に駆け抜けてきた。
男の子「ああ!カベだあ!壁が立ってる!」
兎耳の幼女「わあ!なんか倒れてる!!」
メルナ「何い!?」 盗賊「姉御!あれを!!」 メルナ「!!」
風も止まり粉塵も晴れてすべてが静粛に落ち着き、ギルガと真守の全容が明らかになる。
ギルガ「・・・・・・・・おお・・・・お・・・・うご・・・がが・・」
真守と真守の壁が立っていた。そして壁の前の地面に、
何やら地に伏せて小刻みに痙攣して苦し気にうごめくものがあった。
ギルガだ。ギルガの出し惜しみなき全ての力を込めた本気の正拳の奥義は
真守が呼吸をするように当たり前に敷いた1枚の壁にそれまでの通常の突きや蹴りと同様
あっさり遮断されたのだった。
最善を尽くしたギルガの右拳は、その奮闘に報いる勝利の祝福とは程遠く
拳骨と親指以外のすべての第一関節が、交通事故でひしゃげた自転車のフレームのごとく内側に陥没して血みどろに塗装されてしまっており
ギルガは自らの奥義の衝撃の反射で損壊した右こぶしを腹に抱えて
極大の痛みに悶絶し身を震わせ、土埃と汗が混ざってできた泥にまみれて地面に横たえていた。
真守「・・・・あらら・・・・大丈夫?・・・・・・ですか・・・・?」
真守は壁の左から顔をのぞかせ前に出て ギルガの痛みを案じる。
ギルガ「・・・・・そんな・・・ありえねえ・・・・ふざけるな・・・・
俺様の・・・・奥義が・・・・ん?・・・・な…」
ギルガは横顔を土に寝かせつつ真守の壁を見上げるが壁を砕くどころか
壁の表面にはやはりなんの変化も起こせていないのだった。
せめて大きな亀裂が走っていて欲しい・・・その一部の期待さえ冷酷にも
叶えることはできなかった。
メルナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・兄貴・・そんな・・・
ギルガの兄貴いいいいい!!嘘だああああああああああああああああ!!!
うぐ・・・うごごがが・・・・・・・」
盗賊「姉御!口から泡があ!しっかり!」
ギルガ「・・・おいおい・・・・また無傷だってのか?・・
城壁を砕いた5倍のパワーの正真正銘本気の一撃だぞ?・・・
マジでどうなってんだ?・・・ちくしょう・・・ちくしょう(´;ω;`)」
真守(今の5分の1だったんだアレ・・・ボクに当たったら塵になってたのかな
マジでどうなってるんだろうこの壁・・・自分でも怖い・・・・
どんな作りでこんな硬さが・・・どんな・・・・・・あ・・・違う!・・・・
硬いんじゃない!・・・ただ硬いなら防げる力の幅が不自然に多すぎる・・・どう見ても煉瓦の壁にしか見えないし、鉄だって硬いものを強くぶつけたら傷や凹みがつくのに・・・この壁はちょっとの色のくすみもない・・・攻撃を受けた前と後で全く同じにしか見えない
写真みたいに動きがない・・・存在はあるのに変化がない・・・・壊れない!
そうだ・・・・そもそも当たり判定が存在しないんだ!!)
真守は再び思い出した。自主制作ゲームで攻撃を敵に与えた破壊や
回復後の修復 対象に与える変化の表現
いわゆる「当たり判定」
それを反映させるにはオブジェクトごとに一つずつアクションに応じた変化をプログラムしなければならない。キャラクターやアイテムや地形は作ったままでは作用や時間による変化はまだ起こせない。起こらないのだ。時が停まったかのような固形物として存在するのみ
面倒ではあるがよりゲームを味付けるためには破壊や修復などの変化をつける作業が必須
そしてどんなゲームもプレイ中に見つけ出せる上位武器やクリア後の特典で
手に入る最強装備があれば嬉しい物 真守も製作中ではあったが製作者の楽しみとして特典アイテムを作りたくなった。
高威力の攻撃武器は数値を高めに盛るほかに対象物の派手な破壊を表現するものだがそれを最初につくるのは面倒なうえ、
なにより真守は学校や街で感じていた人の攻撃性、痛みへの無関心、
害を与えて何かが傷つくというものに強い負の側面を感じて辟易していた。
だから最初に作りたかったのは防御のアイテムだった。
あらゆる攻撃や状態異常から大切なものを守り切る高防御力
まず盾が思い浮かばれるがそれは真守にとって少し違う。
盾は剣と同じく持って構えるもので、相手の剣裁きや体術で持っている盾を叩き落とされたり、持ち手ごと切り落とされたり防御自体をはがされる隙がある
盾自体が優れてもそれを持つ手の力は限られる。
ならば壁だ。街のステージや地下ダンジョンを作るときに飽きるほど見る壁
手に持つのではなく「出される」壁なら防御は外れない。
しかも攻撃にプレイヤーが防御態勢の意志を唱えるのではなく
攻撃や状態異常の魔法が発動されたと同時に自動で出現する壁
時間をかけず0秒のように
その方が隙のなさも含まれた防御性能を表現できるうえコードが比較的簡単
攻撃武器は対象物の当たり判定や破壊の表現を作りこむ作業があるが
防御力はただ数値を足すだけで「耐える表現」などを作る手間があまりない
なによりもゲーム特典に相応しい高防御力には数値や複雑なプログラムなど
必要ない。
簡単なことだ。そもそも防御力自体をいじらない。当たり判定など付けなければいいのだ。そうすればいかなる攻撃も毒や呪いの状態異常も受け付けない。変化を与えられないのだから 生まれたまま他の状態に変わることがない
時間を持たぬようにただ完成された姿であり続けることができるのだ。
それこそ何者の干渉にも変えさせることのできない無敵の絶対防御
ただの手抜きといえるトンチだが真守はすがすがしかった。
真守(あの特典の防護壁を思いついた時は我ながらクスっと来た。
で、トラックが二階に乗り上げた時も
ボクに本当に無敵の壁がすぐに出せたらって強烈に思った。)
死に際の耐えがたいショックと引き換えにもっとも欲しいと願った能力が
真守自身に搭載されたというのだろうか?真守は死後の謎の声の主と話した
あの美しい空間も合わせて謎が強まっていった。
メルナ「貴様ああああああ!このクソメガネがあああああああああああ!!
よくも!うぐ・・・よくも兄貴をををを!!!
覚悟はできているだろうな!?」(剣を真守に抜いて向ける)
真守「く・・・クソメガネえ?・・・・(´;ω;`)・・・・」
ギルガ「・・・う・・・チィ・・・・騒ぐな・・・メルナぁ・・・・」
メルナ「兄貴!立てるのかあ!!(*゜▽゜*)/」
ギルガ「たりめえよ・・・まだ右が・・一旦おしゃかになっただけだあ・・」
メルナ「本当にだいじょぶか!?まだ手はあるのかあ!!」
ギルガ「おうよ・・・次は・・・蹴りだあ・・・手より足の方がパワーあるだろうオイ?・・・今度こそいくぞおおおお!!」 ズシーン!
ギルガは地面を激しく踏んで重心を落とし、再び大きく魔法陣を展開し、
全身に赤いオーラを纏わせる。
ギルガ「脚力は手の3倍は上だあ!3倍になった全力奥義のさらに奥の足い!!今度こそはそのカチコチの壁も割れるぜええw!!」
真守「いやダメだよ!!この壁は当たり判定がないんだ!!」
ギルガ「わけのわからんことを抜かせえええ!!!くらええええええ!!!
さらに両足で2倍!!6倍だああああああ!!!隙ありいいいい‼」
ギルガは助走をつけて奥義を蹴りに変更 ダメ押しにドロップキックとして
真守めがけて打ち込んだ。が、やはり真守に当たる前に壁が瞬出してはばかる
ドンッ!
ミシッ・・・・
2つの湿った音が和音に共鳴り、ギルガが垂直に地に落ち、取り戻した勢いは即むなしく鎮火する。両脚が歪に曲がって折れた骨が少し皮膚を盛り上げているのだった。
ギルガ「イイイイイイイイイイヤアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
真守「ああ!ほらあ!だから言ったじゃないか!!!」
メルナ「兄貴いいいいいいいいいい!!!うわあああああああああ!!!」
ギルガはさらなる四転八倒の猛烈の痛みに、調理台の鯉のように暴れのたうち回るのであった。
メルナ「兄貴いいいいい!!!うわあああん!!!」
メルナが苦しむギルガに駆け寄ってアヒル座りにしゃがみギルガの体に
覆いかぶさって痛みを少しでも和らげるように必死に寄り添う。
顔は紅潮して街の襲撃を意気揚々に指揮していたのが嘘のように大粒の涙を流している。
メルナ「兄貴いいい‼大丈夫ううう!!こんなの絶対治るからああああ><」
真守「その・・・ごめん・・・・・」
メルナ「くう!!・・・・貴様さえ・・・貴様さえいなければあ!!よくもこんなにしてくれたなあ!!!(´;ω;`)」
ギルガ「・・・・・・・メル・・・」メルナ「兄貴!?」
ギルガがのたうつのを止め、ぬうっと上半身を持ち上げた。
ギルガ「まだ・・だ・・・・・まだ左が残っているゥゥゥ!!」
メルナ「兄貴い?・・・もうやめてくれえ!・・・退却だあ!!」
ギルガは寝たまま力の魔法陣を展開し、左に赤いエネルギーを込める
ギルガ「喰らえ眼鏡えええええ!左の・・・・
防衛兵「いい加減にしろお!そこまでだ!!」
(ババッ!!)
防衛兵がギルガたちの上から革ひもで編み込まれた捕縛ネットを投げた。
ギルガ「なにいい‼メルナ!逃げろおおおおお!!!」
メルナ「え・・ぐすん・・兄貴?・・・」 ドーンッ!!
ギルガは奥義で力を込め、拳にするはずだった左手の指を開き
穏やかにメルナの胸に触れた後、急激に力を込めて押し飛ばした!
メルナ「ギルガの兄貴いいいいいィィィィィィィィィィ」
メルナの叫びが距離につれて小さくなる。
街の端の城壁の方向に向かってメルナが地面から少しずつ斜めに高度を上げながら遠くへ飛んで行った。ギルガは捕縛ネットが二人ごととらえる前にメルナを逃したのだ。直後ギルガにネットが被さって完全に捕縛された。
ギルガ「うがああ!くそおおおお!てめえらああ!いいとこになったら搔っ攫いやがってえええええ!!!」
真守「あの子を逃がした?あの子は無理に盗賊にされた子じゃないのか?」
防衛兵「おとなしくしろ!もうお前の負けだ!!このまま牢にぶち込んでくれる!」
防衛兵2「そこのお方!!貴公のおかげで助かった!我々一同、礼を申し上げたい!!」
真守「え・・・いいえ・・その・・」
そこへ自体解決に喜び歓声を上げる市民の群れにアイシャに手をつながれて真守が出陣を決める前に保護した子供が来た。子供は人々の中に両親を見つけて駆け寄り、3人抱き合って再会を喜び合った。
子供「パパ!ママ!」母「貴方!あの子が!」父「お前!無事だったか!」
アイシャ「よかった!皆さん無事で!」
子供「お姉ちゃん!ありがとう!あ!あのお兄ちゃん盗賊たちをやっつけたんだ!!」
アイシャ「!カベさん!?カベさーん!!」
アイシャは群衆の真ん中で防衛兵団数人に囲われて感謝を受ける真守をみつけ駆け寄って真守の袖に触れる。
アイシャ「カベさん!大丈夫でしたか!この様子だと盗賊の人たちはみんな捕まえられたようですね。カベさんならできると信じて待ってました!
でもどうしても心配で・・・・ご無事でよかったです!」
真守「アイシャ・・・も何もなかったみたいでやっとほっとしたよ!
盗賊たちを捕まえてもアイシャに何かあったらすごくがっかりするし」
アイシャ「・・・カベさん・・・(〃▽〃)」
ギルガ「うおわあああ!!痛ええええ!!放せえ!!
もっと静かにつかめねえのかあ!!てめえらああ!!(´;ω;`)」
アイシャ「!!」
真守「あ・・・」
防衛兵3「ええい!暴れるなオマエ!!おーい!もっと人をよこせ!!
飛ばされた一人がいたろ!そいつも探し出して捕らえるぞ!!」
アイシャ「カベさん・・・この人は?酷い怪我です・・・・」
真守「盗賊のリーダーだよ 無理やり壁に何度も突っ込んできて
壁が硬すぎて逆にこうなっちゃった」
防衛兵4「わめくな!こうなったのは自業自得だ!悪党め!」
防衛兵3「罰としてもっと味わえ!!この!さらにお前には司法のきつい裁きが待っているぞ!それまで前座として苦しんでおけ!!」
真守「・・・その人を牢屋に連れていく前に
怪我を治療してくれませんか?・・かなり大怪我を負わせちゃったし・・・
」
防衛兵3「それには及ばない 牢屋に入れたのちしっかり治療される。
裁判の前に死なれては困るからな 別に死ぬような痛みでもないだろう
そのところはきちんと行うつもりだ」
防衛兵4「そもそも網を被せては治療ができんし 牢屋まで苦しんでくれるのも
また一興だ!」
真守「そうですか・・・・」
アイシャ「カベさん?・・・・わかりました・・・私が」
真守「アイシャ?」
アイシャは捕縛ネットにくるまれたギルガに歩み寄る。ギルガの骨折した両ひざに網越しに手を少しだけ触れる程度に近づけかざした。
アイシャ「未熟ゆえ、すべては治せませんけど、少しだけ傷を塞いで痛みを軽くするなら・・・」
アイシャの右掌に黄色く、ほのかに温かみのある光が。ギルガの
痛々しく皮を押し上げている骨折箇所にかすかに光の粒子が降って触れると
外側にずれていた骨が、折れる前の真っ直ぐな位置に少しだけ内側へ修正されたのが目に見えてわかった。全快の6分の1は治されただろう。
ギルガ「イダ!ダダダダダダダダダ!・・だ?・・・・なんだこりゃ?・・・
突然あまり痛くなくなったぞ?ズキズキはまだあるが・・・
娘・・・回復魔法か・・・」
アイシャはコクりと頷く。激痛を大幅に緩和されたギルガは神妙に落ち着きだした。
真守(回復魔法・・アイシャさんもそういう不思議な力があるんだ・・・)
防衛兵3「・・・これでよろしいですかな?壁の魔法使い様」
真守「ん?・・ええ 待っていただいてありがとうございます。」
防衛兵3「では!・・・連行しろ!」
困惑の表情のギルガを防衛兵たちは4人で持ち上げ、罪人として連行する。
真守は遠ざかっていくギルガに呼びかけたくなって少し歩き出た。
真守「もう悪いことはしないでください!キミは自分の行いで酷い痛みがわかったはずだ!街の人たちもそうなるところだった!キミ以外の人たちもそうなっちゃいけないんだ!何かを奪うんじゃくて与え合えあったほうがいい!
だから盗賊なんてやめてください!!」
ギルガ「なんだとお!?・・・クソメガネテメエエエエエエ!!
これで勝ったと思ってんじゃねえぞ!!知ったような口をききやがってえ!
次は絶対にぶったおし・・イテテテテテ!!!うごあああ!(´;ω;`)」
防衛兵3「黙れえええ!!」 ボコッ!!(ギルガの頭を殴りつけて)
防衛兵4「貴様がわめく資格などあると思っているのか!!死者と重症者はないが街を散々破壊しおって!重罪は免れぬと思え!!」
怨嗟の勢いで一時的にぶり返した痛みに呻きながらギルガは運搬されて遠くに消えていった。
真守「うう・・・またクソメガネって・・・」
アイシャ「なんですか!あの人!カベさんに対してお下品な!(°`ω´ °)」
許せません!!きつい刑罰を望みます!!( ー̀ н ー́ )」
真守「ごめんねアイシャ 助けなければよかったと思った?ボクはああいう相手でも傷ついて苦しむ人を見るのが怖くて・・・つい我儘を言っちゃった。
ほんとゴメン!」
アイシャ「?いいえ、傷つく人を癒して後悔なんてしたくありません。
カベさんの気持ちに応えられたるなら猶更です それに
私も苦しみ続ける人を見るのは気分が悪いです・・・
私もできるのであればあの人に改心してほしいし
むしろカベさんの良さがますます垣間みれてワクワクしていますよ!^^」
真守「ボクの良さ?」
アイシャ「は!(〃▽〃)・・・ええと・・・そういえばもう街もカベさんが
平和にしてくれたことだし、今度こそ私の村に出発しましょう!」
真守「あ!そうだった!いろいろ修羅場で頭がいっぱいだったけど
もう出発しようか!!」
アイシャ「はい!!^^」
そこへ中心街の市民たち、城壁の外の外郭の地区の国民までがうわさを聞いて集まって来て、窮地を防いだ謎の「壁の魔法使い」を一目見て話しかけようと真守とアイシャに纏わりついてきた。
「あなたが壁の魔法使い様ですか!盗賊たちを丈夫な壁で封じ込めたあの!」
「国の危機をあっという間に救っていただいた!ありがとうございます!!」
「オレ見てたぜw!攻撃の隙も無いくらいビュビュン!って壁を召喚してよ
盗賊の奴らなんにもできなくて泡吹いてやがった!いい気分だぜ!w」
一般魔法使い「いったいどこでそのような魔法を?よければきかせていただけませぬか!?師はおられますかな?」
「貴方様のおかげで妻も子供たちも無事でした!本当に感謝いたします!」
真守「ええ・・・と・・ごめんなさい、ボクたちもう行かないと」
アイシャ「はわわあ!真守さんが見えなくなっちゃいますう!!><」
そのころ中心街へ向けて馬を急いで走らせる一団が それは真守とアイシャが壁に乗って飛行して中心街へ入る際にすれ違った防衛兵団の偵察隊だ。
偵察へ出発したものの、中心街の盗賊団襲撃の報を受けて鎮圧するべく
急遽引き返してきたのだった。
女騎士団長「ぬかってしまったな!間に合ってくれ!それにしてもどうなっているのだ・・・残った3人の騎士団長が即動かんとは何をやっている!」
騎士「まったくでございます!任せられたなら引き返さずに済むものを
待機の団長格が動かず、街の防衛兵たちは劣勢だと伝えられなら
やむおえません!なぜこのような要領の悪いことに!!」
女騎士団長「はは・・全くだな・・・こんな調子では我々騎士団は笑いものだ・・・・・・・ゲートに着くぞ!落ち着いて構えていけ・・・・・」
防衛兵たち「はい!!」
女性の騎士団長は隊にかけた言葉通りに、険しい表情から凛とした落ち着いた顔に変わる。現場でこそ冷静に任務を遂行すべきという意気込みだ。
国民が慌てふためいているであろうときに守護者たちが取り乱すのはならない
偵察隊はゲートを通って中心街へ剣を構えて静かに流れ込む。
女騎士団長「・・・うん?・・・変だな・・・襲撃のわりには市民がやけに
落ち着いている・・・いつも通りじゃないか?」
中年女性「ああ!隊長様!偵察から戻ってこられたので?随分と速い・・・」
女騎士団長「奥様!ご無事でしたか!いいえ・・・盗賊団が城壁を突き破り侵入してきたと報がありまして・・・急いで引き返したのだが?」
中年女性「ああそれですか!それならもう大丈夫ですよ もう終わりましたので!」
女騎士団長「終わった?・・・・城に残る団長たちがなかなか出動しないということも聞いたのですが?」
中年女性「ああそれもそうですねえ、どうしたんでしょうか?でもですね!もう大丈夫なんですよ!壁を出す不思議な魔法使いの方が現れまして!
盗賊のやつらも何やら力を上げる魔法まで使って中の防衛兵たちも押されていまして、一時はどうなるかとおもいきや、そのお方がとても頑丈でビクともしない壁を召喚しては次々と盗賊たちを閉じ込めましてねえ!!
それを率いていた首領の男までそのお方には手も足も出ず、無傷で返り討ちにして
今頃その男も牢の中に・・・いやあ!ありがたいこと!」
女騎士団長「なんですと?そのような強力な魔法使いがこの国にいたとは・・・(壁を出す魔法使い・・・まさかだいぶ前にすれ違った・・・)」
中年女性「あんな方がいらしてくれたなら、この国は安泰で防衛兵の皆様も仕事が楽になるでしょうね!・・・あ!・・・もちろん皆さまが頼りないとかではないのですよ!?今までずっと私たちを守ってくださって日頃から感謝をしていますから!ワイバーンが出た時も追い払ってくださいましたし、
防衛兵団の方々も十分お強いと思っていますので!・・・はい・・・」
女騎士団長「・・・いいえ・・心遣いは嬉しいのですが・・・
今回は我々の失態です・・・たまたま救い主が現れてよかったものの
不甲斐なく大変申し訳ない・・・(_ _|||)・・・ハハ・・・」
中年女性「そんなあ!顔をあげてください!こんな日もありますよお!
死人も大怪我した人も出なかったし!本当に幸いでしたよ」
騎士「隊長!あれは!」女騎士団長「うん?」
ビッグボア「(´;ω;`)ぶひいいいいいいいいいいいいい!!!(´;ω;`)」
「うわああ!!ビッグボアだああ!」「きゃああああああ!!」
「逃げろおお!!」「外へ追い払ええええ!!」「きゃあああああああ!!」
ゲート付近の市民たちが騒いでいる。真守が見逃したビッグボアだ。
巨大イノシシビッグボアが市民たちをモーゼの十戒で海を分かつように
市民たちを恐れ退かせてゲートへ向かってくる。
飼い主たちが手負いの獣のように捕らえ尽くされてしまい、
戦意を喪失して涙目のうえに、口回りから涎を垂らして混乱して逃げ道を探して城壁のゲートから逃れようと猪突猛進している。
騎士「こっちに向かってきますぞ!」中年女性「ひいい!まだあんなのが」
女騎士団長「・・・・・・・・・なんだあの豚は?・・・」
ビッグボア「ぶひいいいいいいいい!!!」
女騎士団長「まさか城壁を砕いたというのは・・・アレではないだろうな?」
スタ…スタ…
女騎士団長はビッグボアにむかって静かに歩いていく。とらえるなら大勢が網などを被せて側面から剣や槍を打ち込まなければならない。
真守の世界のイノシシでさえそうしなければ危ない
ましてや相手は体高3m体長7m近い巨猪 女性一人で落ち着いて捕らえはしない
普通ならば
騎士「隊長!お気をつけて!」女騎士団長「はあ?何を今さら」
ビッグボア「ぶひ!?(# ゜Д゜)ブヒイイイイイイイイイイイイイイイ」
己の前に不敵にも臆しもしない、全身全霊の脱出に立ちふさがる最後の相手に「邪魔だ!」とばかりに怒り狂って牙をふるって突き飛ばしにかかる
女騎士団長「フフ・・・・」
ビッグボア「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイいい!!」
ビッグボアが脱出の勢いのまま女騎士団長に追突してしまった!!
ドッスーーーーーーーーン!!!!!
だが
女騎士団長「・・・・・・いや・・・違うかあ・・・・・」
ビッグボア「・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶひ・・・?」
その障害を跳ね飛ばすのは叶わなかった。
女騎士団長の左手がビッグボアの豚鼻に空いた2つの鼻孔に指を突っ込み
その間の肉柱をがっしりつまみ、僅かに後退して砂を鳴らす程度に受けきって
ビッグボアの豪速大重量の突進を完全に止めてしまったのである。
女騎士団長「盗賊どもは・・・こんなものをお遊びに持ち込んだか・・」
ビッグボア「ブヒィ・・・・・・」ガクガク・・・・・(||゜Д゜)
握りつぶすような力に再び恐怖に震える哀れな猪
女騎士団長「フン!!!」 ドシイイイイイイイイイイン!!
ビッグボア「ぶひいいいいいいいいいいいいいいいいん(´;ω;`)」
左手が斜め上に急旋回し、その怪力で左上に持ち上がり、垂直に地に叩きつけた!!
中心街に来てから実はダメージらしいダメージを一度も受けていなかったビッグボアだが最期にこの女騎士団長の尋常でない膂力の一撃で意識を刈り取られ、大量の泡を口からあふれ出し気絶させられてしまったのであった。
騎士「隊長!お怪我は?激しくぶつけられたようで」(布を手渡す)
女騎士団長「ああ別に・・・うわあキッタネ!・・・うううう」
女騎士団長の左指はビッグボアの鼻の粘液にまみれ、布でグローブを
拭きとる。
騎士「仕留めましたね」
女騎士団長「寝かしつけただけだ 八つ当たりで無垢な獣を殺すほど
気は短くない・・・食べればうまそうだがなw
憂さは晴らした はあ・・・スッキリ☆」
真守とアイシャは纏わりつく群衆からの質問攻めを捌きながら中心街を抜けるゲートに早歩きする。
子供「あの壁どうやって出すの!?ボクにも教えて!!」
兎耳幼女「見たーい!お兄ちゃん!壁もう一回出してえ!!」
真守「困ったなあ・・・・見世物にはしたくないんだよねえ」
アイシャ「ごめんねー>< また今度にしましょうねー」
菓子屋の女性「あのう!これよかったらお礼に!」(マフィンのような菓子)
アイシャ「はわわ!ありがとうございますう!(´,,•﹃ •,,`)」
真守「アイシャ!簡単に受け取らないの!次から次へとなんか渡されちゃう!!」
女騎士団長は盗賊団の数人を閉じ込めている壁の箱の前に立って
右→左へと首をかしげて壁の両側面を見まわし、不思議に考える。
女騎士団長「ふーむ 見てくれはただの石造りの壁にしか見えん!」
騎士「しかし盗賊たちが魔法で力を上げていくら剣で斬りつけようとも
壁そのものは傷一つ入らず、押し倒そうにもその場に頑固に陣取るように
動かないとか」
女騎士団長「地に刺さっているだけでは斜めに倒せばいい だが見ろ
壁は地についてすらいないぞ? 少し浮いている。
空に固定されているような どれどれ」
女騎士団長は引き戸を枠から外すように壁の脇の僅かな隙間に指を入れて
揺らして外せないか試す
盗賊「オイ!ここから出してくれよ!おっかなくてしょうがねえ(´;ω;`)」
女騎士団長「今やってる・・・出しても即地下牢獄だがなwまあ待て」
騎士「どうでしょうか・・・隊長の力ならばあるいは・・・・」
女騎士団長「・いいや・・・ダメだなこれは 時でも止まったように硬い」
盗賊「そんなあ!なんとかしてくれよ!あんた騎士団長さんだろお!」
盗賊「頼むう!そろそろ出そうなんだよおお ケツが限界だあ!!」
盗賊「おめえ!!ここでするんじゃねえよ!殺して時間止めるぞオイ!!」
騎士「隊長・・・」女騎士団長「不味いな・・・よし!」
女騎士団長は壁に腕を伸ばして拳が着く距離にまっすぐ立つ。凛とした涼しい真剣な表情で右こぶしをトンっと壁に軽くぶつけ、右腕を脇に戻す。
すると足元から全方位に水色に輝く光の円が展開した。
コオオオオオオオオオオオオ
水色の流水のような光のうねりが円から立ち昇り、体を包んでいく。
身体に特殊なエネルギーを充填しているようだ。ギルガの奥義と同じかそれと
近い方法のようだ。
女騎士団長「蹴破る・・・・・ハアアッ!!」 ドスン!!!
水色のオーラを纏わせ、壁を右足で前に蹴りつけた!!
だが壁は微動だにせず女騎士団長の右足だけが蹴った反作用で震えるだけだ。
女騎士団長「うん!ダメだな!☆あきらめてくれお前たち^^」
盗賊「そんなああ!!」
盗賊「頼むう!どんな方法でも構わねえ!騎士団長サマあああああ!!」
盗賊「このままじゃこいつが漏らしちまう!中で匂いがああああああ!!」
女騎士団長「無理なものは無理だ☆聖女の私としては力不足で心苦しいが
お前たちを「大」の充満する地獄の部屋から解放してやりたかった
が、蹴りにかけた希望は潰えた!無駄足だったらしい☆
この壁の持ち主に消してもらえ では私は行く☆
この壁は中のお前たちが息してる以上、匂いは漏れ出てくるだろう
瘴気に当てられては清らかなる聖女の私は穢れてしまうのでな」
盗賊「そんな無慈悲なあああああ(´;ω;`)」盗賊「お願いしますよおおお」
盗賊「どうかお助けくださいいいいいいあ・・・出てきた・・・・」
盗賊「ぎゃああああああ!!」盗賊「てめえ!!殺してやる!!」
盗賊「いやしょうがねえだろ!う・・・うおあああ・・・・・」
女騎士団長「瘴気発生前に離脱完了!いくぞー☆」騎士「隊長・・・・」
纏わりつく市民もピークがすぎたがまだ真守は人々の好感度に包まれて
振りほどけずにいた。人々の純粋な感謝の気持ちに悪い気はしなくなっていたが
アイシャ「こんなにもらっちゃいました!☆」
真守「アイシャー・・・ふふ、ボクが持つよ マントしててよかった
包めるし」
アイシャ「あ!ありがとうございます!」
女騎士団長「お!・・・君たちは・・・」
真守「?・・・あなたはこの街に入る前にすれ違った・・・どうも」
アイシャ「はわわ!騎士団長様!戻ってきてくださったのですか?」
女騎士団長「ああ 強力な盗賊が中心街の城壁を破って強襲してきたと
監視部の兵から知らせがあってね 急いで戻ったのだが
ハハwそうか!君が例の「壁の魔法使い」か!
盗賊たちを捕まえてあっさり事態を終結させてくれたのは!」
真守「えへへ、魔法かどうか自分でもよくわからなくて・・・まだやりようが
あったと課題が残る…感じですかね?」
女騎士団長「魔法かどうかわからない?・・・」
アイシャ「わたくしもこの人の不思議な力は、多くの魔法使いの方の
とは似ていないと感じました。呪文を唱えることもなくあっという間に
壁が出せてしまうのです」
女騎士団長「ふむ ある日突然に天からの啓示のごとく不思議な能力を授かる人々がいると聞く何の変哲もない村の娘が後に起こる出来事を的確に予言したり、神がかった剣技の才が芽生えたりな それで国の大事を救う英雄になった者たちがいる。
もしかして!?そこの少年!・・・・そなたはそういった類の者かな!!」
真守「!いやいやいや!ボクはそんな!派手で誇らしいものとは無縁です!・・・ほんとは盗賊団のボスまで全員物陰から隠れて捕まえたかったんですけど・・・爪が甘くてボスに見つかっちゃったので派手に技をぶつけられて人目についちゃって・・・こんなふうに人だかりができちゃって・・」
女騎士団長「ほらあ!やっぱりい!有能なものはみんなそんな風に謙遜して
反省点を抱えてひと仕事を終えるものだ。みだりに誇らしげにしたり
自らを崇めろーとかなかなか言わないではないか!ますます英雄的な素質だ!
まあ私はいつまでも新人、しかもあまりデキナイ子のつもりだから
自分はいつかデキル!と鼓舞するために手柄は派手に喜ばせてもらってるがなw形から入る性分なのでww」
騎士「隊長・・・それはそれで困るの・・ですが・・・(´;ω;`)」
女騎士団長「あんなすごいとしか言いようのない壁を出して、民衆を救うために使ったのだし、別に威張っても罰は当たらないモノを 初々しいなあw
若いし可愛げもあるw私はキミに興味がある☆・・・」
真守「え・・・〃〃〃〃〃」
アイシャ「!ちょっとカベさん!?騎士団長様!この人をからかわないでください!ヽ(`Д´)ノ」
女騎士団長「おや?・・・そうか・・・すまないお嬢さん・・・
(エッフン)・・・冗談はこれくらいで
隊を代表して私からまず感謝の言葉を贈らせていただく 自己紹介もかねて
私は、ラクシアソル共和国防衛兵団・第8騎士団隊長、ミオーレ・オルティス
この国を突然の危機からお救いくださり、心よりのお礼を申し上げたい
貴殿の迅速かつ的確な賊の捕縛作戦が功を奏してか、
幸いに死者も重症者もでることはなかった。その勇敢さを讃えるべく
議会に褒賞を提言しよう!こたびの働きは公式に認められるべきだ」
真守「あ・・・えっと・・・感謝の気持ちは嬉しいんですが
目立つのは苦手なので・・・何かお礼してもらえるなら後日郵送していただけると助かるんですけど・・・・大勢の前で表彰とかは勘弁で・・・><」
ミオーレ「へ?あーら・・・ホントに恥ずかしがり屋さんだったかあ・・・
でもそういうところが可愛い!うっふっふうwww」
アイシャ「!カベさん!!もう行きますよ!おじさんが村で今も帰りをまってるんですからあ!道草はこれにて終わりでーす!!
隊長様!褒賞を郵送・・ゆうそ?していただけるならば!
ノーム村に送っていただければ間違いはありません!!
それでは失礼します!!
カベさん!門を出たら即、空飛ぶ壁を出してください!!」
ミオーレ「あらら!いやあ・・・ホントにごめんなさいお嬢さん
少年はお嬢さんの大切な人でry
アイシャ「はう?はわわ!えっとその!カベさんはなんというか!!」
真守「ボクとアイシャさんはこの街に来る前に出会ったばかりです。
アイシャさんは辺境で気を失って倒れていたボクを
世界が怖くて自分を壁で囲んで閉じこもっていたボクを励ましてくれて、
この世界で歩き出す勇気をくれました。アイシャさんも病気のおじさんの薬を街で買うために勇気を出して一人で村を出たけど、盗賊たちの眼を潜り抜けて怖い想いもした。
だからボクはこの壁でアイシャさんを村まで無事に送るために一緒にいるんです。アイシャさんは大切な友達です。アイシャさんだけじゃなく行く先で暴力に苦しめられる人がいれば同じようにその暴力を壁で遮えぎります。」
ミオーレ「・・・・」
アイシャ(友達・・・ぷうゥ・・・)
真守「それに、ボクはこの国のしきたりも文字もわからないのでー・・・・
アイシャさんに教えてもらえることになってます。アイシャさんはボクの先生でもあります。では!」
ミオーレ「あ、ごめん もうちょっとだけ☆」
アイシャ「もう!なんですか!まだからかうつもりなのですか!ヽ(`Д´)ノ」
ミオーレ「すぐ終わる、引き止めて悪かった。今回のことは我々の不祥事でもある。お礼に加えお詫びもかねて・・・発つ前にこの祝法を」
アイシャ「え・・・」
ミオーレは胸の甲冑に下げている、宗教の象徴な金属の首飾りのペンダント
に右手を添えた。
ピカッ・・・・
するとペンダントは底部から水色の光が上部まで、岸辺の砂の上を泡を作りながら滑りゆく波のようにペンダントを静かに昇る。
ペンダントに添えた右手を真守とアイシャ、それぞれの額の前にかざして
祝福の言葉を唱えるのだった。
「無垢なる勇敢なる者 その堅牢なる壁の権能に、さらなる光が照らし、温かみを帯びることを祈る」
「無垢なる者に歩む力を与えし心優しき者
その身のゆく道筋 その一族と親しき者たちの住まう地に
あらゆる災忌を清める護りの光が照り 幸福の陽だまりの降ることを祈る」
アイシャ「あ・・・ふふ・・・あのう・・・ありがとうございます!!」
真守「アイシャ?ミオーレさん、これは・・・なんの儀式ですか?」
ミオーレ「これはな・・・ふふん!それはそのお嬢さんに、
村への帰り道でよく教えてもらえばいい。
この国のことは彼女が教えてくれるのだろう?☆
それは彼女の務めだ 私もこれからやることがあるのでな
道中気を付けてくれ!光祖神は君たちを見てくれている」
真守「こう・・そ・・しん?」
アイシャ「はい!騎士団長様!光祖神様の祝福を授けてくださったこと 光栄です!」
ミオーレ「許していただけたようで何よりだ☆さあ市民の皆様!
壁の魔法使い様は友人と出発だ!見送りはここまで
道を開けてやって欲しい!!」
ミオーレが呼びかけると中心街の市民たちは速やかに応じて二人の周りから
離れた。ゲートから城壁の外に出ると真守は横向きの壁を地面に出した。
真守「さあ乗って!」アイシャ「はい!カベさん!」
真守「アイシャの村まで、迷わず向かうよ!」
二人が乗ると横向きの壁は真守の意思に応じて宙を浮いて離陸する。
そして風のように真守の見つめる方向へ、二人を運び飛んでいった。
市民たちは真守たちを見送ると、城壁の出口付近から中心街の中へと
それぞれの日常へ戻っていく。仕事、休日の遊びの続き、家族との団らん
恋人との触れ合い、就寝
真守の壁が脅威から遮断した人々の、大切な生でやるべきことに
ミオーレ「やはりあの少年には英雄の気質がある。彼の壁はその度を超した
強度もさることながら、相手の避ける隙も武器を構える隙さえ許さず
文字通り瞬間的に建てられたという。そのような壁なら防御のみならず攻撃にも容易く転じる脅威となりえる。それなら危険な外部の間者の可能性を疑い
取り調べも行わなければならん
だが彼は違う 盗賊相手でも傷つけず、爪が甘かったというのも打算なく市民を助けようと動いたからだろう。なんの淀みもなく軽々しく人々を守ると眩しい顔で口にしたんだ。(可愛かったなあw)多くの防衛兵団の皆の初心もそうであるようにな 彼が邪悪なものと通じているのはまずないだろう。
彼がこのまま真っ直ぐあれば きっと名を遺す素晴らしき壁の魔法使いとなるはずだ
じゃあ・・・私たちもいくぞ・・・私たちのやるべきことにな」
騎士「は!中心街防衛に待機していたはずの騎士団長たち
その出動遅延の故を問いに向かうのですね!」
ミオーレ「ああ、今回はたまたま愉快な心ある能力者が迷い込んでだけだ
防衛兵団始まって以来の深刻な大失態に違いない
待っていろよ?第4隊長、第10隊長・・・・奴らはいまいち気に食わなかった
それは的中しやがった・・・必ず詰めて意図を吐かせてやる!」
ラクシアソル共和国の防衛兵団兵舎 そこに二人の騎士団長が広間にいた。
1人は部屋の内壁に背をよりかけほくそ笑む嫌な表情で もう一人は大きな机に両手の指を結んで顔をのせて椅子に腰かけ、何かを考えるように無表情
この二人は強力な盗賊団が城壁を破壊して中心街に侵入したという例を見ない
一大事に、呑気に沈黙を貫いていた。何かの意図をもってか
第8騎士団隊長・ミオーレ・オルティスはその二人を問い詰めるべく
怒りをにじませた睨みを維持しやや重い足音で道を打ち鳴らし、
兵舎が目に入り始めた距離まで迫っていた。