昔話2(魔王との戦い)
人間と魔族が協力して一緒に戦うのは難しい。お互いに犠牲者も出たし、うらみに思うものもいる。親しいものが失われたこともある。感情がずっとおさまらないものもいる。お互いにやり合った結果と受け止めることが出来るものもいて、色々な人、魔族、亜種族がいる。
それぞれ思うところはあるだろうし、ぶつかり合いもあったが、どんな旅も道筋も一つの終わりをむかえる。
冒険者という形は、オトコにあってたのかも知れない。好きなもの同士でパーティーを組み、魔王に挑む。気の合ったものが集まり、自分たちだけのプライベートギルドを作る。魔王を倒すという思いで繋がった。
長い長い戦いの果て、協力して魔王を倒す瞬間が来ていた。魔王にはもはや、部下も仲間もなく、最後までパーティーを圧倒していた。
高い回復力、強固な防護壁、魔法と物理の同時攻撃、攻略は難しかったが、回復特化したそうりょ。攻撃・防御共に高い勇者・莫大な魔法力で攻め立てる魔女・槍も剣も万能に使いこなす騎士。
そして、魔王と似たような特性を持つ男が全体をサポートした。防護壁額ズレたら、再構築。魔女の魔法に上乗せして一緒に魔法をはなつ。時には、回復も担当。
勇者が先行して、魔王と戦い、後ろにひかえた僧侶が回復をしては離脱。横から、タイミング良く、切り込んだり、強力な爆炎や雷を打ち込んだ。
勇者が、突然オトコにさけんだ。
「こい!一気ににたたくぞ」
遠慮なく言ってくれるから嬉しくなる。勇者は、魔族でも関係なく、親友として扱ってくれる。
アツくなった気持ちと共に、一気に前線に出て、勇者の剣戟に合わせて、教わって通りに剣に力をのせて、あらん限りの力で一気に斬りつける。
衝撃で大地がゆれ、大量の煙があたりを覆っていく。
弱った魔王が倒れる際、勇者は魔王の言葉を確かに聞いた。
「どうしてですか」
「何故あなたは見捨てるのですか」
「魔王など、なりたくはなかった」
悲しそうにうち崩れる魔王にオトコは静かに近づき、そっと頭に手をあてると、静かに言った。
「つらい役目すまなかった」
「開放する。楽になれ」
そう言って手をかざすと、魔王の姿がうすれ、
「いつか必ず⋯⋯⋯」
とかすかに聞こえたと同時に消えた。
煙が切れる前、勇者は少しオトコを睨んだあと、
「終わったな」と肩を組んだ。
「いいのか?」諦めたような顔から不思議そうに勇者をオトコは見る。
「何のことだ?まー、何か因縁か、何かあるだろうが、魔王を倒したのはお前だ」
それを聞いて考え込むオトコに続けて、
「お前のことは、信頼してる。何年の付き合いだと思ってるんだ」
肩をバンバンたたきながら、
「まー、ないだろうが。お前がおかしくなってるなら、俺が止める。そんなことさせんなよ」
少しの涙を浮かべ、それを隠すようにオトコは
「分かった。そのときは遠慮なく切ってくれ。お前なら、いい。
まー、おかしくはならんとは思うけど、その時は⋯⋯」
そう言って、少し頭を下げる。
「気にすんな。周りがうるさくても、嫌になったら来い。いくらでも付き合う」
屈託なく笑う勇者に
「そうだな。魔王の話もいつかするよ」と、
顔を上げるオトコに
勇者が手でシーと静かにするよう、合図する。
OKサインとともにオトコを連れて、パーティーに戻り一緒に喜ぶ。