18通りの破滅エンド
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「め、目立ってしまいました」
エリザベートは家に帰るなり、顔面を蒼白にさせる。
黒猫のルナも深刻な顔をする。
『うーん、まさか君があそこで魔力値999オーバーのカンストを叩き出すとは思わなかったよ』
「わたしは幼少の頃より魔術書を読み、ダンジョンに潜ってきましたが、『手加減』と『自重』だけは覚えなかったのです」
厳しい鍛錬の日々を思い出す。
雪原狼の群れをなぎ倒した幼い日、
悪鬼の棍棒を真剣白刃取りした若き日、
火竜の尻尾を持ってぐるんぐるんと投げ飛ばしたあの日、
走馬灯のように鍛錬の日々を思い出しているとルナは、
『君はとんでもない幼少期を過ごしたんだね』
と呆れた。
「はい。神様には破滅エンドが待っていると脅されましたし、家族も構ってくれなかったので鍛錬に没頭していました。それに健康な身体を手に入れたことが嬉しくてつい」
『ついうっかり、レベルをカンストしてしまったんだね。ちなみに君は乙女ゲーム「聖女と四人の騎士たち」の世界でいうレベル99だ』
「99ですか、すごいです。100目前ですね」
『100の値はないよ。君のレベルはカウンターストップ、君はこの世界で誰もなしえない頂点に君臨してしまったんだ』
「それはすごいことですね」
『ほんと、前世が病弱だったなんて信じられないよ』
「わたしもです。この羽毛のように軽い身体に驚きです」
おいちにいさんし、とセルビア王国体操第二を始めるが、キレッキレである。
『まあ、君は魔王の娘でもあるからね』
「それなのですが、わたしは生まれてから一度も魔王様と会ったことがありません。本当に魔王の娘なのでしょうか?」
『君は間違いなく魔王の娘だよ』
ルナは断言をする。
『この世界では珍しい黒髪黒目』
「この髪と目のせいで子供の頃から不気味がられました」
『そしてなによりもその最強の身体』
「ドラゴンさんも一撃です」
『そしてその禍々しいオーラも魔王の娘である証拠さ』
「六大属性の中で闇魔法が一番得意です」
『それに神様が言っただろう、君は魔王の娘として転生させるって』
「はい。しかし、マクスウェル家の令嬢として育てられたのでいまいち実感がなくて」
『正史ルートでも魔王との接点は少ないよ。君は聖女カレンと一悶着起こして闇落ちするのだけど、そのときに実父である魔王と再会するっていう設定なんだ』
「なるほど、それではわたしが闇落ちして実のお父様がやってきたら破滅ルートに入ったということなのですね」
『そういうこと。だから闇落ちしないようにね』
ちなみにエリザベートが闇落ちする理由は何パターンかあるが、もっともありふれたものは、攻略対象である四騎士様の誰かに振られるパターンらしい。
名家のお嬢様として生まれ、異性からちやほやされてきたエリザベートが挫折を味わうことによってダークサイドに落ちるという流れらしい。
「ならば早々闇落ちはしないかと。この世界でのエリザベートは異性にちやほやされたことがありません」
幼き頃からレベル上げに勤しんできたエリザベートに異性と遊ぶ暇などない。さらに幸いなことにエリザベートは異性に興味がなかった。
『ほんと、君が世間一般の女子の感性を持っていなくてよかったよ。この調子で頑張って闇落ちも断罪エンドも回避しよう』
「はい。ちなみに攻略対象さんたちと仲良くするのは御法度なんですよね」
『そうだね。それどころか近づかない方がいいかも。君は歴史を改変し、入学当初からレベル99を実現させてしまっているけど、それでも聖女カレンと攻略対象たちは凶悪だからね』
「凶悪なのですか」
『うん、RPG風乙女ゲーム「聖女と四人の騎士たち」には24通りのエンディングがあるのだけど、そのうち18のエンディングで君は断罪され、処刑されるか討伐されるか修道院に送られる』
「処刑は絶対にいやです。せっかく、健康な身体を手に入れたのに」
『修道院も最悪だよ。監獄のような修道院に入れられて人格を破壊されて終わるんだ』
「それもできれば避けたいです。わたし、こちらの世界ではお友達をたくさん作りたいんです。前世ではお友達を作ることさえままならない身体でしたから」
『ならば明日からできるだけ目立たないように生活して、聖女カレンおよび、攻略対象たちに近づかないように』
「はい、分かりました! お任せください」
元気よく返答するエリザベートであったが、翌日、登校をすると早速、攻略対象のひとり、炎の騎士レウスに絡まれることになる。
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