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今後の課題

「魔王倒すどー!」


 と元気よく拳を振り上げるエリザベート、その勢いままに魔王を討伐するメンバーを集める。


 まずは討伐隊の要である主要人物を集める。


 彼らはすでに学院長から魔王復活の兆候を聞かされているらしい。ただ、寝耳に水であったらしく、困惑していた。特に荒事が苦手そうなカレンは困惑している。


「あわわ、まさかこんなに早く復活するだなんて」


 怯えるカレン。


 ただ男子陣である四騎士たちはさすがに勇壮であった。


「ついに復活か。俺の代で復活してくれて助かるぜ。偉大な叙事詩(サーガ)に俺の名が刻まれる」


 炎の騎士レウスは熱血気味に言う。


「まあ、これは想定内だ。そもそもこの学院は魔王を討伐するものを育成する機関なのだから」 氷の騎士レナードは冷静沈着に分析をしていた。


「魔王復活、楽しみではないか。おれが討伐をすれば次期国王に推挙されるかもしれない」


 土の騎士にしてこの国の第三王子は野心を駆り立てる。


「復活するものはしょうがないっしょー、僕たちでぱぱーっとやっつけちゃおう」


 風の騎士はのほほんと言うが、問題は山積していた。


 ひとつ目の問題は彼らのレベルが低すぎるという点であった。皆レベル10前後しかなく、カレンに至ってはレベル3であった。


 学院長最大の懸念であるが、ルナも同様の懸念をする。


『本来ならば入学時にもうちょっとレベルが高いはずなんだ。しかし、この世界線での彼らのレベルは低すぎる』


「どうしてでしょうか」


 一緒に『うーん』と悩むが、ルナは即座に突っ込み。


『君がこの世界線を大きく変えちゃったんだよ。ダンジョンに籠もってレベル99にしたことにより、この世界が均衡を保とうと他の主要キャラのレベルを下げちゃったんじゃないかな』


「なんと、わたしのせいでしたか」


『そういうこと。まあ、これは過ぎたことだから気にしないで。代わりに彼らのレベルアップに付き合おう』


「ですです」


『ちなみにふたつ目の問題は彼らの親を説得すること』


「親御さんの説得ですか?」


『そうだよ』


「王立学院に入った時点で魔王討伐の覚悟はできているんじゃ」


『それがそんな殊勝な連中じゃないんだよ。カレンはともかく、四騎士の親は王立学院をはく付け程度にしか考えていない』


「あらまあ、副学院長さんみたい」


『王立学院を卒業すれば将来は約束されるからね。魔王の復活だって自分たちの代じゃないと信じてここに送り出したんだ』


「でも、本人たちはやる気ですよ」


『でも、実家の援助は必要だよ。土の騎士ルクスはこの国の王家、炎の騎士レウスの父親はこの国の騎士団長。氷の騎士レナードの父親は財務大臣、風の騎士セシルの父親は大商人だ』


「VIPばかりです」


『その通り。彼らの有形無形の援助がなければ魔王は討伐できない』


「逆にいえば彼らの説得をすればいいんですよね」


『だね』


「頑張ってみます。なにごともやってみないと分かりません」


 エリザベートはそのように言うと、彼らの親をひとりひとり説得する旨を誓う。


 まずは……、


 と一同を見回すと、明るい髪をした少年を見つめる。


「風の騎士セシルさん!」


「おわ、急にどうしたの? リズ」


 リズとはエリザベートの略であり、愛称である。コミュ力高めの彼は距離感がとても近い。


「魔王を討伐するにあたって、あなたのお父様のお力を借りたいのです」


「僕のパパの力?」


「大商人さんなんですよね」


「うん、そだよ。セルビア王国でも有数の大商人の息子が僕さ。そうは見えないでしょ」


「はい」


「あはは、正直だね」


 風のようにひょいっとしていてつかみ所のない少年。いつも笑顔を浮かべており、気やすく気軽に話しかけられる。四騎士様の中でもマスコットキャラとして皆に愛され、女子たちにも可愛がられているその様は大商人の子息感ゼロである。


「商人の才能もゼロだからね。将来は別の兄弟がパパの跡を継ぐんじゃないかな」


「でも、お父様には好かれているんですよね」


「溺愛されているね」


「ならば〝演習〟のお金を出してくれるかも」


「演習?」


「はい、皆さんと魔王討伐に向かう兵士さんや傭兵さんたちと魔物を討伐する合宿をしたいんです」


「なるほど、軍事演習か」


 土の騎士ルクスは「ううむ」と唸る。


「たしかに金が唸るほど必要だな。魔王討伐の兵士を動かすとなると一個大隊の食料が必要になる」


「国から金はでねーのか?」


 レウスは財務大臣と国王の子息を見つめるが、彼らは吐息を漏らす。


「昨今の干ばつで我が国の経済状態はよろしくない。それに俺の父親は魔王討伐に反対している」


「王様だろう、責任感はねーのか」


「学院長の話を法螺だと思ってるのさ。学院長は自分の政治的発言力を上げるために魔王復活を喧伝していると信じている」


「かぁー、救いようのない親父だな」


「……すまない」


 とルクスは頭を下げる。


「おめーのせいじゃねーよ。おめーの親父のせいだ。……つっても、うちの親父も似たようなもんだしな」


 騎士団長様も魔王復活を信じておられないようで。


「まずは皆さんの親御さんに危機感を持って貰うのが大事なようですね」


「はい。皆さんの親御さんの中でも一番、話が分かりそうなのがセシルさんのお父様なのでまずは彼を口説き落として演習費を出して頂こうかと」


「目の付け所は悪くないね」


 セシルも納得してくれている。


「人間生きているだけでお金を消費するからね。まずは兵站からなんとかしようってのは頭がいい」


「ありがとうございます」


「でも、うちのパパもそれなりに気難しいよ。紹介はするけど」


「会えばあとは自分でなんとかいたします」


「OK」


 セシルはあっさり言うと父親との面会のアポイントメントを取ってくれた。


 さて、こうしてエリザベートはこの国一番の大商人からお金を引き出す、という難題をこなさなければならなくなった。

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