9月1日 美学
チームの立ち上げ。これほど、めんどくさいことはない。ただ、妻夫木や難波たちにやられっぱなしという訳にもいかない。俺は、明日にも鴻野に声をかけることにした。
ー8月30日ー
妻夫木が帰り、店内は、俺と緒方の二人だけになっていた。
緒方「大丈夫ですかぁ?」
俺 「大丈夫ですよ」
少し苛立ちを隠さないでいた。
緒方「銀何の2年ですか?」
不機嫌そうに頷いた。
緒方「一緒ですね」
俺 「えっ?」
緒方「俺も、最初は、いたんですよ」
俺 「名前なんて言いましたっけ?」
緒方「緒方です」
あの時、鴻野が言っていた名前と同じだ。
緒方「喧嘩してるんですか?」
俺 「はい。この前は、派手にしてました」
確か、あの日も、もともとチームで動こうとは思っていなかった。
緒方「チームじゃなくて、一人でいるなんて面白いですね」
俺 「まぁ、、」
言葉につまった。
緒方「さっきの人は、妻夫木っていってチーム『琉角』のリーダーです」
俺 「なんで、あの時やってこなかったんですか?」
緒方「そりゃあ、一人だからですよ」
緒方が何を言っているか理解できない。
緒方「喧嘩ってさ、タイマンが美学みたいなのあるけどさ。銀何では、チームでやってるからさそういうのねぇんだよ」
アイツらが言いたかったのは、そういうことか。なんとなく腑に落ちた。
俺 「チーム作ったらやってくれるの?」
緒方「あぁ。相手してくれると思うぜ」
いつしか、俺たちは、タメ語で話すようになっていた。
俺 「だったら、お前、俺んとこ入れ」
緒方「はぁ?なんでよ」
キョトンとした様子で俺を見つめていた。
俺 「俺は、お前に興味はねぇが、お前と出会ったのも何かの縁だろ?」
緒方「どうだろうな?」
緒方は、何を思っているのか?本心はわからない。
俺 「何人いりゃあ、やれるんだ?」
緒方「さっきのチームは、妻夫木意外にも、鵜飼や西条がいるから、最低でも3人だな」
俺 「だったら、後一人かぁ」
俺は、ある人物の顔が浮かんだ。
緒方「誰かいるのか?」
俺 「あぁ。鴻野って奴だ」
緒方は、驚いた様子。
緒方「あんな奴と知り合いなのか?」
俺 「俺がチーム作るなら、声かけろって言ってたからな」
俺は、皿に入っていたカレーを全て平らげた。