8月19日 10強
朝から、罵声が飛び交っていた。教壇の上では、梶原というクラスのリーダー的なヤツが話しをしていた。俺は、一番後ろの席で、いつものように寝ていると、誰かが歩いて俺の席に止まった様だった。男は、いきなり俺の胸ぐらをつかんだ。俺は、急に体が浮き上がった状態になってしまった。
「おい、なめてんのか?」。耳元で大きな声を出されるのでだんだん機嫌が悪くなっていく。寝ぼけていることもあり、何を言っているかわからない。相手の顔を見た次の瞬間、俺は一番後ろにある掃除箱まで蹴り飛ばされた。
"ガシャン"。掃除箱の扉が開く。俺の周りにいた何人かは、怖気付いてる様子だった。掃除箱の下で顎についた血をさすった。実に不愉快だ。俺のイライラも、最高潮に達していた。俺を殴った男は、前で話していた梶原だった。そいつは、再び教壇へと戻り、話し始めた。俺は、寝そべった状態で話に耳を傾けた。どうやら、2年の荻原という奴が、2年を仕切るかたちになったことに苛立ちを見せているらしい。俺たち2年は、6クラスある。しかし、銀何高校では、2年は、ほとんど相手にされていない。
「どうやってやるんだ?」。右端にいた山﨑が話しかけた。梶原は、放課後にいきなり、奇襲をしかけるらしい。こんなどうでもいい争いに巻き込まれてたまるか。俺は、顔の出血を手で擦りながら、立ち上がった。そして、次の瞬間に走り出していた。
教室の生徒は唖然としていた。最初は、止めに入った山﨑と正木も手がつけられない。俺は、イライラを全て発散させるくらい梶原を殴りかかった。山﨑たちは、俺の勢いに圧倒され、何ももできずにいた。梶原が抵抗できないのを見て、俺は手を止めた。
俺 「おい。二度と俺に逆らうな」
梶原「‥‥」
教室の静けさに耐えれなくなった俺は、教室から出て行くことにした。この学校では、喧嘩の強さでカーストが決まる。喧嘩の弱い者は、この学校では人の下につくしかなかった。今は、"10強"という者を中心に、派閥化されている。俺にとって、10強なんて、どうでもよかった。ケンカにも興味はないし、派閥なんてどうでもいい。ただ、俺の邪魔をする者は、片っ端から潰すだけだった。
〈10強〉
①難波智也 3年生
②藤間蓮海 3年生
③青西春 3年生
④妻夫木玲 3年生
⑤西条直虎 3年生
⑥塩谷准 3年生
⑦鵜飼善郎 3年生
⑧梯望 3年生
⑨与田健太 1年生
⑩馬場颯 1年生