閑話─腹が立って仕方ない
小話です
レティは腹が立って仕方なかった。
今の自分は15歳なのに、医療行為が出来てしまう事に腹が立った。
禁忌の医療行為をしてしまった自分にも腹が立って仕方なかった。
殿下の権力の行使でお咎めが無かったのにも腹が立った。
そして、それでホッとしてる自分に腹が立った。
天才と言われる事も
皇太子妃の主治医になれと言われた事も
皇太子妃と言う言葉が出てくる度に、殿下がニヤニヤしてるのにも腹が立っていた。
殿下が偉そうに椅子にふんぞり返って座っているのに、白いマフラーを巻いていて、そのマフラーに豚の刺繍があるのにも腹が立っていた。
帰りに、殿下から皇太子専用馬車で送るよと言われた事にも腹が立った。
「 学園長の馬車で帰ります、まだ学園長とお話したい事がありますので 」
「 レティ……… 」
殿下が悲しそうな顔をしたのにも腹が立った。
腹が立ったら何にでも腹が立った。
思い出すと……
薬師のお姉さんや、虎の穴の受付や案内の大人なお姉さん達が、まだ学生の殿下に色目を使うのにも腹が立った。
そう、学園の女学生達の可愛い憧れの目じゃないのだ。
それに、自分が殿下の横にいるのに、ガンガンラブ光線を送ってくるのにも腹が立っていた。
そして、それを知ってるのか知らないのか、普通に受け流している殿下に腹が立っていた。
そう、レティの心は20歳。
同年代の女には手厳しかった。




