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皇子様の頭ポンポン




ジラルド学園の大食堂は全校生徒が利用出来る。

勿論、各自お弁当を持ってきて教室や中庭で食べるのも自由だ。


因みに、庶民生徒が麗しの皇子様を見られるのも大食堂である。



レティは、食堂でのお昼休憩でマリアンヌ達とお喋りしていた。

ふと見ると、少女達がどこぞのお貴族様に囲まれていた。



タイの色を見ると緑色だからラウル達と同じ3年生。

3年生が1年生の女生徒に因縁をつけてるのだ。


それだけでもどうかと思うのに、このお貴族様に男子生徒が2人程いて、3人の女生徒の後ろで腕組みをしていた。



貴族生徒と庶民生徒の違いは一目瞭然で、濃紺のブレザーとスカートに白のラインが入っているのがお貴族様生徒で、庶民生徒の制服には赤のラインが入っている。


襟もとから下がる棒タイの色で各学年が分かる。

赤が1年生、黄色が2年生、緑色が3年生で紫色が4年生である。





「 こちらのエリアはあなた達が気軽に来て良い所では無くってよ 」

「 分をわきまえなさい 」

「 道を譲りなさい 」

彼女達が脇に行こうとすると、男子生徒がニヤニヤしながら

おっ~ととっと言って通せんぼをしていた。



絡まれているのは料理クラブで一緒の、ベルとミリアとスーザンだった。

私を探してこちらの席まで来たんだろう……

手には1枚の書類を持っている。



ああ……不味いわね。



ザワザワザワザワ

皆の注目の中、あらぬ差別用語を浴びせられて泣きそうになっている3人。



「 ちっ…… 」

マリアンヌ達にちょっと待っててと言い残し、輪の中の中心に勢い良く現れ彼女達の前に庇う様に立った。



さあ!ここからはワタクシが相手ですわ!!!



「 彼女達が何かしましたか? 」



お貴族生徒達はいきなり現れた鼻息の荒い令嬢に一瞬怯んだ。


「 庶民がこちらの貴族席に用もないのに来られては困りますわよ 」


「 彼女達はワタクシに用があったのよ…… 料理クラブのお手紙よね? わざわざお持ちくださり有り難う 」



「 あら?もしかしたら貴女ね?庶民棟をうろうろしてる女って…… 」

「 あらあら、何故かしら?お家の程度が知れましてよ 」

「 庶民は我々の下にあるものでしょ? 」

「 口を聞くのも汚らしいですわ 」



お貴族様生徒が口々に宣う。




カッチーン



「 貴女方! 何か勘違いしているのでここでお勉強しましょうか? 」


「 我々貴族は平民が納める税金で暮らしていけるのであって、 それを甘んじて受ける貴族は、そんな庶民の生活を守る為に存在してるものに過ぎないのですわ! 」


「 何の罪も犯して無いのに、平民だからと言うだけで馬鹿にするのは愚か者のする事です 」


「 ましてやここは学校よ! 親の脛齧りでしかないワタクシ達が、何を偉そうにしているのかしらね? 恥を知りなさい!!! 」


勢いよく捲し立てたレティの静かな透き通る声に庶民生徒達から歓声があがった。



「 な………っ 」

「 酷い……」

「 …………っ……… 」

「 1年の分際で!! 」

「 覚えてろよ 」


お貴族様達は捨て台詞を吐きながら逃げ去っていった。

庶民棟からはさっきより大きな歓声が上がった。

テーブルをバンバンと叩き、ピーピーと指笛まで吹いている。




おっと!やり過ぎたか?



精神的年齢が20歳の私は、たかが17歳のガキんちょなんて少しも怖くない。

そして3度目の人生は女騎士だったのだ。




「 ごめんね………嫌な思いをさせて… 」

彼女達から書類を受け取ると、少し赤い顔をした彼女達は涙目でお礼を言って庶民の席に戻って行った。




「 レティ!!! 」




声のする方をみると

兄達大貴族様がこっちに駆けよって来た。

あら、皇族様もいるわね………ちっ


大貴族様と皇族様………

私こそが大貴族様の令嬢だったが、まだイライラがおさまら無い。

フン!!!



「 何があったんだ? 」

「 大丈夫か? 」


「 何でも無いわ、ちょっとお馬鹿なお貴族様にお勉強を教えてあげてただけよ 」


「 それで勝ったのか? 」

「 当たり前ですわ!ワタクシを誰だとお思い? 」

「 よしよし、それでこそ我がウォリウォール家の一員だ 」


兄は妹の頭をクシャクシャになで回しながら、フッフッフッと兄妹で悪い顔をした。

悪い顔はよく似ていた。



「 あっ!俺もレティをクシャクシャしたい 」

「 俺も~ 」

エドガーとレオナルドも 良い子!良い子! とレティの頭をクシャクシャとなで回した。


「 きゃあ! そう言えばエドもレオも久しぶりよね? お帰りなさい 」


キャイキャイしていると



「 ………僕も撫でて良いかな? 」

「 駄目よ! 」


即答

「 ……… 」

子犬の様にシュンとしたアルベルト皇子。



あら?!ちょっと可哀想だったかしら?………

そうよね、除け者は頂けないわね。



「 殿下!良いわ……… 」

さあ撫でろ! 直ぐ撫でろ! 今すぐ撫でろ! と頭を付き出した。


殿下が嬉しそうに尻尾を振りながら

そろりと私の頭に手を置いて…………………

……………ポンポンとした。



なっ…!!!

頭ポンポンですってー



皇子様が頭ポンポン

皇子様が頭ポンポン



キャーっと食堂から黄色い悲鳴がまきあがる。

そう、皇子様の頭ポンポンは萌え死にするに等しい。



それも、サラサラパッキンの青い瞳の切れ長のアイスブルーが破顔しながら私の頭をポンポンしたのだ。




ボッと身体から火が出たのかと思うほどに真っ赤になった。

つられて皇子様も真っ赤になった。



真っ赤になった2人は俯いてしまった。



「 な………何だよ、お前ら?! 」

「 こっちが恥ずかしくなるわ!!! 」

「 何だ?!この甘酸っぱい雰囲気は?! 」



皇子様の頭ポンポンの破壊力は凄まじい。








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