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4度めの人生は 皇太子殿下をお慕いするのを止めようと思います  作者: 桜井 更紗
第1章

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僕はここにいるよ



シルフィード帝国の医学への道は、皇立ジラルド学園を卒業し、年に1回ある難しい試験に合格すると、医者になれるのである。


医科大学みたいな学校は無く、その全てが実戦有りきで、先輩医師やベテラン医師に張り付いて、見様見真似でその技術や知識を習得する事が必要だ。


先輩医師達は後輩を育て、一人前の医師にする為には惜しみ無く技術や知識を提供し、新米医師は医者としての実績と腕を磨き上げていくのである。


医者への道は、ジラルド学園の庶民棟の生徒達も、試験に合格すればなる事が出来た。


病院は、皇宮にある皇族や貴族専用の病院と、街にある庶民達の病院があった。






ジラルド学園の卒業と共に、試験に一発合格した私が、医療の道を歩みだしたのは2度目の人生であった。



女医は珍しいので、私は皇宮病院で働いていた。

将来は女医として、皇后陛下や皇太子妃殿下の主治医としても期待されていたのである。



皇族や貴族達の風邪による薬草での治療、騎士達の怪我や骨折の手当てに、簡単な腫瘍などにはメスで切除などもした。


しかし、レベルアップの為には、皇族や貴族達の治療だけでは圧倒的に実績が足らなかった。



私は、大反対されたが、庶民病院に移った。


そこには………

皇太子妃殿下の主治医なんかやりたくない……と言う切ない乙女心があったのは否めない。




庶民病院では毎日が戦場だった。

次から次へと依頼がかかり、寝る暇も無いくらいに忙しかった。

だけど、医者としてのスキルがどんどん上がって行く事に、喜びを感じ出していた。




そんな頃

他国で、流行り病が流行ってると噂が流れ出した。

そして………

我が国でも、あっと言うまに感染が広まり、病院は病人が殺到した。



皇宮は感染予防の為に閉められ、皇宮病院も閉められた。



季節は夏なのに、これだけ感染者が増えるのは異例だった。


特効薬が無い中で、隔離して、熱冷ましの薬草と吐き気止めや下痢止めの薬草、水分を取る事位しか治療方法が無かった。

そうするうちに薬草が足らなくなっていった。



そんな中で、私が流行り病に感染をした………


治療をしている子供の嘔吐を被ってしまったのだ。

直ぐに、水で洗い流し、消毒をしたが駄目だった。

数日で症状が出て、私は独り隔離された。



高熱に、繰り返す嘔吐に下痢、病は私を瞬く間に蝕んで行った。


「 このまま死ぬのね 」

自分の死を悟った私は、薬草を飲むのを断った。

足らなくなっていたので、必要な人にあげて欲しいと、動けなくなった身体で同僚の医者に懇願した。



彼は「 医者が死んだら誰が病人を助けるのか? 」

………と、泣きながら薬草を飲む事を勧めたが………



私は、医者。

この様な状態になった患者が助からない事は知っていた。


「 どうか………治る人に使って………下さい 」

そう言って深く目を閉じた。



孤独な死を迎える時間が過ぎていく…………

寒くて寒くて震えながら

意識は暗い暗い黄泉の世界に………


最後に想うのはアルベルト殿下の事………




「で……んか………」





「 僕はここにいるよ 」




愛しい愛しい声が聞こえた………




私は目を開けた…………



ぼんやりとする目の前に

愛しい愛しい人がいる…………



これは……

神様が最後にくれた

頑張った私へのご褒美なのかもね………



私は愛しい人に手を伸ばし

その、愛しい頬に手をやった………





「 でんか……ずっとずっとお慕い申しておりました……」





2度目の人生の

私の恋が成就した………





私は、また意識を手放した。








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