強くなりたい
「 それで? 何があったの? 」
「 彼女達の悲鳴が聞こえて、走って行ったら彼女達が襲われそうになっていて……… 」
「 えっ?!彼女達を守る為だけに? 」
「 危なかったの、もう少し私が遅かったら……… 」
「 レティ! 」
「 君が危険でも良いの? 」
「 あいつらが凶器を持っていたら? 」
「 もう、二度と自分からは行かないでくれ」
「 じゃあ、見捨てれば良かったの?」
「 君もただの女の子なんだよ 」
「 だから何?女の子は何もしないで震えていろって?」
「 違う!君が危険な目にあって欲しくないんだ 」
「 だけど、私が行ったから彼女達は助かったわ 」
睨み合いが続く………
ああ、違う、彼女達を助けたのは殿下だわ…………
私じゃ無い…………
あの時、殿下が来なかったら私は危なかった。
「ご免なさい………」
私が弱いからいけないのよ………
「 殿下、助けてくれて有り難うございます 」
「 あの………凄く格好良かったです 」
僕は格好良かったんだ………
グレイより格好良い?
もしかして………僕を好きになってくれた?
アルベルトは
牧場でのレティの様子が気になり、グレイにそれとなく聞いていた。
「 宰相の令嬢を知ってる? 会ったことある?」
グレイは考えてる様子の後
「 いえ………存じ上げませんが……… 」
「 そう、だったら良いんだ、何でもない 」
じゃあ、レティの片想いなのか………
アルベルトは、そう、結論付けていたのだった。
「 強くなりたい 」
………でないと、殿下をお守り出来ない。
「 殿下よりも強くなりたい 」
へっ?!
強くなりたい?
俺よりも強くなりたいとな?
レティの格好良いはそっち?
そして
強くなりたい者がもう1人…………
暴漢にタックルをした男子生徒だ。
僕はリティエラ様が好きだ。
あんなに高貴なお方なのに平民達と自然に話してくれる人。
平民を庇い、貴族様をやり込めた人。
僕は料理クラブのある時は何時も彼女を見に来ている。
皇太子殿下が彼女を待っているのを見ると胸が痛む。
2人で楽しそうに帰って行くのを見ると切なくなる。
僕には決して手の届かない高貴な女性。
だけどこんな僕でも彼女を守る事が出来た。
そして、皇太子殿下が平民である僕に、膝を付き、お礼を述べてくれたのだ。
本当に大切な人なんだなと思った。
そして、
皇太子殿下は強かった………
僕も強くなりたい。
もっともっと強くなってリティエラ様をお守りしたい。
いや、お二人をお守りしたい。
彼の名はノア・ハルビン。
赤毛に金色の瞳でレティと同じ1年生。
彼もまた、強くなりたいと思う1人なのであった。




