レティ、レティ、レティ
 
「 うそだろ? 」
アルベルトは目を見張った。
レティがいる………
レティが宮殿にいる…………
しかし、彼女はメイドの服を着て、メイドの様な髪型をしていた。
様子をみていると、人と人の間をコソコソと歩き回っている。
何かをメモしている様だ………
何で公爵家のメイド服を着てるんだろう?
あっ、ラウルが近寄っていく………
クックックッ………可愛い………慌てて逃げてるぞ………
内緒なのか?
内緒でここに来ているのか………
何故?
何故でも良い、早く彼女の所へ行きたい………
王女達とダンスを踊る事は決められていた。
アルベルトはとっととダンスを終え、レティの元へ行きたかった。
 
ファーストダンスは皇帝と皇后が踊る………
そんなもん構うもんか!
 
「 王女、ダンスを 」
他の王女よりも一番国力のある王女がイニエスタ国の王女だ。
アルベルトは
王女の手を取りダンスを申し込んだ。
「 あら、名前で呼んで頂けませんの? 」
「 では、アリアドネ王女、私と1曲踊って頂きませんか? 」
「 よろしくてよ 」
 
曲がかかると、直ぐ様王女の手を取りホールの真ん中へ………
  
周りがざわめいている。
 
曲が始まった。
王女の手を取り、腰を引き寄せる。
 
「 まあ、アルベルト皇子、ダンスがお上手ですのね 」
「 アリアドネ王女もお上手ですよ 」
「 アルベルト皇子、明日は狩に連れていって頂けません事? 」
「 ああ、構わないですよ、皆で行きましょう 」
来賓を持て成すのは公務だ。
「 あら、ワタクシとアルベルト皇子の2人っきりがよろしかったのに………そう出来ませんの? 」
「 残念ですが、そうは行きません、皆、明後日には帰国されますから…………」
早く終われ! 曲!!
 
「 では、明日、狩が終わったら…*××※ アルベルト皇子? 聞いておられます? 」
ああ………レティが帰ってしまうかも知れない。
駄目だ、駄目だ、帰らしたく無い…………
「 楽しい時間を有り難う 」
「 素敵な一時でしたわ 」
ようやく曲が終わり、皇帝と皇后に王女を手渡し、
「 お二人より先に踊った事をお許し下さい、急用がありまして………では、失礼します 」
ホールの隅の方を見渡す………
「 っつ?! 」
レティが居ない、何処だ?
皇帝と皇后のダンスが始まり、皆が2人に注目して立っている間を縫うように走った。
居た…………
軽食ルームでポツンと立っていた。
良かった、まだ居てくれた………
 
 
こいつめ、僕を振り回しやがって…………
「 我が家に不法侵入してる可愛いメイドさんは、牢屋に放り込もうか? それとも僕の部屋に放り込もうか? 」
彼女との会話が楽しい。
何時も、突拍子も無い答えが返って来るのが楽しくて仕方無い。
彼女が自分と自然体で話してくれるのが何より嬉しかった。
怒ったり、泣いたり………笑ったり…………
 
そして、忍び込んだ理由がクリスマスパーティーでのドレスのリサーチだと可愛い事を言う………(←本当は商売目的)
 
そうか、クリスマスパーティーでは彼女のドレス姿が見れるんだ。
彼女の誕生日に見たドレス姿が浮かぶ。
 
しかし、驚いた。
彼女は自分のお腹が満たされるだけじゃなく、使用人の分の食事を要求した。
自分のせいで2人共食べてないと言う理由だが
公爵令嬢として持ち帰りを要求するなんて………
恥ずかしかっただろうに………
 
彼女のそんな真っ直ぐな所が堪らなく好きだった。
誰隔てなく接する事が出来る優しさを持つ彼女に、惹き付けられずにはいられない。
知れば知る程に、会えば会う程に好きになって行くのを止められない想いだった。
 
心が満たされる……
戻ってから
アルベルトは上機嫌で
他の王女や令嬢達とダンスを踊ると言う公務を遂行したのだった。
 
 
 
 
 




