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王女降臨




アルベルトに右手を差し出す王女。

「あら……キスをして下さいませんの?」



「これは失礼」

そう言ってアルベルトは王女の右手の甲にキスをした。



謁見の時からこの王女は高慢だった。




今回、来国したのは

他国王女3名、その内の2人は姉妹で、他国公爵令嬢が3名、侯爵令嬢が2名の各々の国の王族や高位貴族だった。




舞踏会が始まると他国王女や貴族令嬢たちが

アルベルトを独占した。



特にあの高慢な王女はアルベルトの腕を取り、目を見つめ、話しかけ、他の令嬢達をも寄せ付けなかった。




遠巻きから悔しそうに見つめていたのは、ジラルド学園の2年生の女子生徒達だった。


彼女達はこの日デビュタントで

主役の筈だった。



うちの国の皇子様なのに………



挑発的に勝ち誇った様に見下げてくる他国令嬢達に彼女達は思った。




リティエラ様がいらしてくれたなら…………




我が国最高位の公爵令嬢のリティエラ様がいらしてくださったなら………


彼女なら絶対に負けないのに………

あの美貌で、あの気性なら、

この高慢な王女にだって決して負けやしないのに…………



彼女達は悔しがった。






しかし

我が国最高位の公爵令嬢リティエラはここに居た。

この会場に居たのだ。




レティは舞踏会に忍び込んでいた。

他国王女や令嬢達のドレスのリサーチにこっそりと忍び込んでいたのだった。



何故か公爵家のメイド服を着用して、髪はメイド風におさげ髪にして、メモを取りながら会場の隅で動き回っていた。



あっ!お兄様がこっちに来るわ、隠れなきゃ………

あら、あの2年生、私のデザインのドレスを着てくれてる………

う~ん、ドレスの色が駄目ね、秋なんだからもう少し落ち着いた色にしないと………

次は、ドレスの色も指定した方が良いかもね………





その時

レティは凍り付いた。





王女だ。





イニエスタ国、第1王女アリアドネ・カステラ・デ・イニエスタ。



シルバーの長い髪に深いブルーの瞳

洗練された高貴な佇まい。

少し高慢ではあるが、王女故のハキハキとした物言い。




私が生きた3度の人生でアルベルト皇太子殿下が必ず選んだ、ただ1人の女性。



アルベルトはこのアリアドネ王女を皇太子妃に選んでいたのだった。







2人は手を取り合い

見つめ合い、微笑みながら楽しげにファーストダンスを踊りだした。



本来ならば

皇帝陛下と皇后陛下がファーストダンスを踊る筈なのに……




ああ、2人は周りが見えなくなる程に

恋に落ちたのね……










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