閑話─皇子様のベンチ
もう1つ小話です
少し前の話
料理クラブは庶民棟の1階にある調理室を使っている。
この調理室には小さな裏口の様なドアが並木道に面してあって、貴族棟から通っているレティはこのドアから出入りをしていた。
並木道は、庶民棟の奥から貴族棟の奥まで続いてる広く長い道で、大勢の生徒達が利用し、季節を楽しんでいる。
木々の間にはベンチが置かれ、座って本を読んだり、
友達とお喋りしたり、恋人たちがイチャイチャしていたり………
でも………
アルベルトが座ってレティを待っているベンチは
何時も誰も座ってはいなかった。
この時間
皇太子殿下が公爵令嬢をベンチで座って待ち、
その後、2人で楽しげに並んで歩いて帰って行く。
これはもう、この学園の周知の事実。
『皇子様と令嬢の恋』
2人の恋物語の行く末を妄想し、そして夢見る生徒達なのであった。
─今日も、皇太子殿下がベンチに座ってリティエラ様を待っている─
他の令嬢との噂がたった時
心配していた生徒達は、それが間違いだったとほっとし
遠くから甘酸っぱい目で、並んで歩く2人を見守るのであった。




