アルベルトの後悔
まさか………
あそこに彼女がいようとは…………
アルベルトはレティに言い訳をしたかった。
誤解をするなと言いたかった…………
だけど恋人同士でも無い彼女に
言い訳なんかするのは可笑しいだろうに………
恋人同士なら
直ぐに飛んで行って、抱き締めながら、
あれは皇后の仕組んだ事だから、仕方なかったんだと言って許しを乞える。
レティに会って誤解を解きたかった。
レティに会いに行きたいのに………行けない…………
誤解?
誤解って何だ?
そもそも彼女は何とも思ってないかも知れない。
何とも思っていない彼女に何を言いに行くのか?
でも………
あの時みたレティは
悲しい顔をしながら顔を反らした……
彼女に悲しい顔をさせてしまった………
胸が痛い…………
そんな眠れぬ夜を過ごしてるうちに
皇太子殿下に意中の人が出来たようだ。
そんな噂が学園中に広まった。
一緒にオペラを見に行き、遠くの街の夏祭りの夜に、手を繋いでデートをしていたらしい。
この令嬢が、皇太子妃候補の本命なのでは?
もう、為す術も無かった。
アルベルトは頭を抱えた。
皇后主催の夕食会に招待した令嬢達の中に
アルベルトの意中の人がいると思った皇后は、あの夕食会に招待された9名の令嬢全員を対象に、アルベルトと2人でデートをさせると言う、無茶な計画を立てていたのだった。
1度目は仕方なく従ったが………
アルベルトは優しい息子だった。
何時もなら、母親である皇后のする事には、渋々ながらも従ってきた。
しかし、その夜、怒りは収まらなかった。
たった1度でも、望まぬ令嬢となんかと会うべきでは無かった。
皇后にも、自分自身にも腹が立って仕方なかった。
「 母上、私は母上の玩具でも人形でもありません 」
皇后の返事も待たずに
クラウドに命じ、残りの令嬢達と会う事を中止にした。
しかし、それが裏目に出たのだ。
こうなると
1人の令嬢とだけデートした事が既成事実となり、その令嬢が本命だと言うことになったのだった。
そして、よりにもよって
あの夏祭りの夜、レティと手を繋ぎ歩いた事も
あの令嬢とのデートだと言うことになってしまってるのだった。
当然彼女の耳にも入っている事だろう………
「 良い気はしないよな 」




