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11人

 



 皇宮騎士団騎乗弓兵部隊が発足された。


 レティの3度目の人生では、レティが騎士団に入団した時に発足した部隊だから、今から2年後になる筈だった。


 そしてそれはグレイが立ち上げたものであった。

 レティの為に……



 騎士養成所に入所してる時から、グレイは度々レティの前に現れた。


 騎士団に入団しても女性騎士はレティ1人。

 グレイから、女性でも扱える弓矢をやってはどうかと言われて、試しにやってみると……


 レティは天才的な輝きを見せた。

「 楽しい…… 」


 レティが馬に乗る事にも長けていた事もあり、グレイが団長である父に頼んだのか……

 宰相ルーカスが、レティの身の安全の為に裏で動いたのかは、もはや誰も知る由も無い事だが。


 騎乗弓兵部隊はレティの入団に合わせて発足した。



 そして……

 今回は皇太子殿下が動いたのは間違いない。


 しかし、あのドラゴンの襲来で、弓兵隊の必要性を皆が感じたのは事実。



 あの日ドラゴンは海を飛んでやって来た。

 ディオール侯爵家の領地に滞在する皇貴族騎士団第3部隊には、弓兵隊がいなかった。

 だから弓矢さえ常備していなかった。


 まあ、弓兵がいなければ、誰も弓矢を扱え無いのだから常備する必要が無いのは当たり前だが。


 空飛ぶ魔獣には弓矢が効果的なのである。



 あの日あの時、アルベルトとレティがポンコツ旅に同行していなければ……

 ディオール領地が壊滅状態になるだけで無く、他の地域の町にもどれ程の被害が出ていた事か……


 ドラゴンに襲われたサハルーン帝国は、壊滅状態になり死傷者行方不明者は、何千、何万人にもなったのだと言う。


 彼等があの場所にいた事が奇跡。

 考えれば考える程に恐ろしい出来事であった。


 それ故に……

 弓兵を増員する事には反対する者いなかった。

 寧ろ増員は必須的な事で。



 そして……

 弓兵は大幅に増員され、それに伴って新たに皇宮騎士団騎乗弓兵部隊が発足した。


 隊長はグレイ・ラ・ドゥルグ。


 レティの3度の人生では……

 弓騎兵は認められた部隊では無かった為に組織的には小さく、グレイは班長だったが、今回は隊長に任命された。



 騎乗弓兵部隊には……

 第1部隊のサンデー、ジャクソン、ロン、ケチャップが入り、第3部隊である国境警備隊に弓兵として所属していた、トリス、ワシャル、マージ、カマロが加わった。


 彼等は3度目の人生でレティの仲間だった弓騎兵の8人。



 新しく騎乗弓兵部隊が発足されたが、グレイ達は第1部隊第1班に所属したままである。


 要は……

 訓練時間が増えただけと言う。

 魔獣が襲撃して来た時の、備えの為の特別部隊が騎乗弓兵部隊である。


 それでも彼等は、もう弓矢が好きになっていた。

 特に馬に乗る事に秀でた彼等は、弓騎兵となって馬の上から矢を射る事が楽しくなって来ていたのだった。



 元々、弓兵になっても弓矢の練習ばかりしているのでは無く、ちゃんと剣の訓練もする。

 レティがグレイから教わった剣技を身に付けているのも、毎日の様に手合わせをしていたからであって。




 発足式は皇太子殿下と騎士団団長で行われた。



「 グレイ・ラ・ドゥルグ。そなたを皇宮騎士団騎乗弓兵部隊の隊長に任命する 」

「 はっ! 」


 騎士団団長の言葉にグレイが答える。

 親子である。


 グレイには1歳上に兄がいる。

 兄は騎士団を経て、今は叔父である国防相のデニスの秘書をしている。

 剣を極めるよりは、文官の道に行きたいと騎士団を除隊して、文官養成所に入所したという。

 結婚も既にしていて家族でドゥルグ家で暮らしている。


 グレイはお気楽な次男坊だ。

 嫡男では無い為、結婚したら独立をして屋敷を別に持つ事になる。

 だからルーカスは、彼とレティを結婚させたかったのだが。



 グレイは25歳。

 史上最年少の隊長の誕生だ。



 カッコ良いな~

 今は全員で9人だけど……

 私の子分の……

 いや、仲間の騎士クラブの31人が2年後に入団するわ。



 トリス、ワシャル、マージ、サンデー、ジャクソン、ロン、ケチャップ、カマロ、………達の名前が次々に呼ばれる。


 トリス、ワシャル、マージ、カマロ達は弓矢が好きで、第3部隊のドゥルグ領地にある国境警備隊の弓兵隊に、志願をして行っていたのであった。


 今回、皇都の騎士団で騎乗弓兵隊が発足する事になり、グレイが彼等を呼び寄せて、こちらに移動して来たのである。


 トリス、ワシャル、マージはグレイと同期で、学園の騎士クラブ、騎士養成所にいた頃からの友達。


 カマロはマージの弟でサンデイ、ジャクソンと同期。

 彼等も学園の騎士クラブ、騎士養成所で友達だった。



「 以上10名を皇宮騎士団騎乗弓兵部隊とする 」



 あれ?10名?

 グレイ班長を入れて10人?


 もう1人は誰?

 確か私を入れて10人だったわ。


 もう、1人の名はゴージュ。

 トリス達と同じ第3部隊の国境警備隊に所属していたらしい。



 発足式が終わると……

 ゴージュはレティの前にやって来て、片膝を付いて跪いた。


「 私はあの時……貴女に命を助けられたゴージュ・ラ・トワソンと申します。何時かお礼をと思っておりましたが、直ぐに国境警備隊の任務に付き、今になった事をお許し下さい 」

「 えっ!? 」


 1年半程前に騎士団での訓練中に騎士が突然倒れた事があった。

 その時に……

 皇宮病院にいたレティが心肺蘇生をして助けた騎士が彼だったのだと言う。


 彼は弓矢が好きで、第3部隊国境警備隊の弓兵部隊に志願していて、回復すると直ぐに国境まで行き、その任務に付いた。


 あの時レティは……

 彼はもう、騎士団で訓練をするのは無理なのかも知れないと思ったが……

 助けた命が、頑張っている事が素直に嬉しかった。



 彼はあの時……

 私が心肺蘇生をしなかったら死んでいただろう。


 もしかして……

 彼は死んでたから……

 3度目の人生で、グレイ班長が立ち上げた騎乗弓兵部隊にはいなかったの?



 3度目の人生では10名だった騎乗弓兵部隊は……

 本当は11名いたのね。



 レティは感動で胸が震えた。


 私が……

 4度目の人生を生きている証がここにあった。



 2度目の人生で医師にならなかったら……

 彼を助けることも、火事で負傷した人達を助ける事も出来なかった。


 3度目の人生で騎士にならなかったら……

 弓矢で魔石を射り、爆発を阻止して沢山の人々を救う事は出来なかった。


 1度目の人生の、ただの公爵令嬢ではどうする事も出来なかった事である。




 今……

 グレイ班長を中心にして、10人で話をしているかつての仲間達が目の前にいる。



 襲い来るガーゴイルの大群の中……

 グレイ班長の合図と共に、弓を構えながら一斉に駆け出した仲間達。

 彼等は……

 部隊の最前線で矢を射続けた弓騎兵達だ。



 あの時は……

 私がいたよ。


 私も仲間だったよと……

 レティはそっと涙を拭った。




 そして……

 そんなレティを……

 アルベルトは優しく見つめていたのだった。








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