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閑話─皇后VS皇太子時々皇帝

 



「 それから、ドロップキックをした後に、シュタって綺麗に片膝を付いて着地をしましたの 」

 凄く綺麗に決まりましたわと自慢気に語る。


 語っているのはレティで、語るお相手はなんと皇帝陛下。


 皇帝はアルベルトの武勇伝が大好物。

 アルベルトの学園時代は、護衛騎士の報告書で武勇伝をクラウドから聞いていた。


 昨年のドラゴン討伐は死ぬ程喜んだ。

 あれを本に出来ないものかと思っている程だ。



 レティのドロップキックの話を大臣達から聞いて、詳細を聞きたかった。

 もう、一刻も早く。


 何時もは護衛騎士達の報告書を見ればいいのだが、この卒業プロムの日は護衛騎士が付いていなかった為に、レティから直接話を聞いているのだった。



「 そうか、そうか着地が決まったか 」

 一生懸命に話すレティに皇帝はデレデレである。


 建国祭の前日は、弓矢を背中に背負って爆発しそうな魔石に矢を射って大広間の爆発を防ぎ、前の火事では荷車に飛び乗って現場に向かったとか……


 もう……ワクワクするしかない。

 皇帝陛下は武勇伝が好きなのだ。


 ルーカスは頭を抱えているが……

 こんなに面白い娘はいない。



「 皇太子殿下のお越しでございます 」

「 !? ちっ! もう帰って来たか……入れ! 」

 もっと話を聞きたかったのに。


「 父上! 私に公務を押し付けて、レティとお喋りしてるとはどう言う事ですか!? 」

「 まあ……ちょっとレティちゃんと話が……したくてな 」

 この手はもう使えないなと、睨むアルベルトに片手を上げた。


 皇帝陛下と皇太子殿下の公務は分けられている。

 学園から卒業してから約1年。

 アルベルトの公務は格段に増えていた。


 また、スルリと何でも出来てしまうので、若い皇太子の仕事が増えてしまうのは仕方の無い事。


 今日は皇帝の視察の予定だったが、代わりに皇太子が行く事にしたのであった。

 レティの武勇伝を聞きたくて。



「 レティは私のものです。私に無断で勝手に連れ出して貰っては困ります 」

 アルベルトはレティの肩を抱き連れて行こうとする。


「 レティちゃんまたね。楽しい武勇伝を有り難う 」

「 あの……失礼します」

 レティは皇帝に頭を下げてアルベルトに肩を抱かれたまま、足早に連れて行かれた。





 ***





「 皇后陛下のお越しでこざいます」

「 おや? 珍しいな……とおせ! 」


 扉が開けられると……

「 陛下! レティちゃんが来てるって聞いて……あら? レティちゃんは? 」

「 先程アルが拐って行ったよ 」


 また!

 あの子ったら!

 皇后は手をギュッと握りしめて地団駄を踏んだ。


「 陛下! アルベルトは酷いのよ。レティちゃんに刺繍を強要するなとか、2人だけの秘密とか言ってレティちゃんを困らせるなって言うのよ。わたくしがレティちゃんといると何時も拐って行くし……何であんなに小姑みたいに小煩いのかしら? 嫁と姑が仲良くして怒るなんておかしいじゃない? 」


 ……と、機関銃の様に愚痴った。



「 陛下! アルベルトに外出の公務を増やして頂戴! 」

 そう言うと皇后は踵を返し、フンスと怒って皇帝の執務室を後にした。



「 ハハハハ……」

 皇帝は笑い出した。


「 レティちゃんは私達家族の橋渡しだな 」



 アルベルトは成長にするに連れ、いつの間にか父母に対して、何も望まず、何も発せず、自分からは敢えて関係を持たない様になっていった。


 親子の関係よりも……

 皇帝陛下と皇后陛下と皇子の関係を築いていたと言える。

 小さい頃に開いた距離は元には戻らなかった。


 皇帝陛下と皇后陛下を親に持つ皇子の立場なら、仕方の無い事だと言えばそうなのだろう。


 特に……

 母である皇后の言う事にはただただ従い、反抗した事は無かった。

 それが嬉しいのか嫌なのかも分からない。

 だだイエスとしか言わないのだから。



「 皇后も嬉しそうだ 」



 皇帝陛下は……

 レティとチェスをする約束をしたので、どうやってアルベルトから拐うのかを模索中。

 その時には火事の時の武勇伝を聞きたいと思って。









次話から本編に入ります。


読んで頂き有り難うございます。

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